人間ドックの血液検査項目にある血小板ですが、血小板数が基準値をはずれている場合、どういった病気の可能性があるのでしょうか?ここでは、血小板の機能について解説していきます。

目次

血小板の数で分かることは?

血小板は、血液の成分の一つです。けがなどで血管が破れて出血したとき、傷口に血小板が集まって血液を固め、出血を止めようと働きます。血小板は背骨にある骨髄造血幹細胞から毎日作られ、その寿命は10ほどです。古くなった血小板は脾臓で壊されます。

人間ドックでは、血小板数は血液検査で調べています。血小板数が少ない場合、血小板の生産が低下、もしくは何らかの病気で血小板が壊されていると考えられます。出血したときに血が止まりにくくなり、ぶつけてないのに内出血があちこちにできるといった場合も血小板数が少ない可能性があります。逆に血小板数が多い場合、血が固まりやすくなり、血の塊を作り、血管を詰まらせてしまう可能性があります。

検査値の異常、どんな病気が疑われる?

人間ドックで血小板数に異常があるといわれた場合、どのような病気の疑いがあるのでしょうか?

下記の表に基準値と、基準値を外れた場合に疑われる病気についてまとめました。

検査項目 基準値 基準値から外れた場合疑われる病気
血小板 13~37万/μl 【高値】

  • 本態性血小板血症
  • 慢性骨髄性白血病
  • 真性多血症

【低値】

出典:日本衛生検査所協会を参考にいしゃまち編集部作成

基準値は検査を行う組合・団体・病院によって異なる場合があります。また、血小板数の異常を認めてもすぐにその病気だということにはなりません。血管が細く採血に時間を要した場合などでは、血小板数が少なく報告されるケースもあります。また、ウイルス感染や投与した薬剤によって血小板数が減少する場合もあります。

しかし、人間ドックで「要精密検査」と指摘された場合は、血液疾患であれば命にかかわるリスクもあるため、自覚症状がないからと放置せずなるべく早めに血液内科を受診することが大切です。

病気が疑われるとき、他にどんな検査が必要?

医師-写真

「要精密検査」と指摘されて医療機関を受診すると、再び血液検査を行います。それでも血小板数が基準値を外れた場合には、病気の可能性を疑い、精密検査を行うことになります。

診断には問診も重要です。問診では体調や服用している薬剤などの聴きとりが行われます。血小板数の異常が指摘された人の中には、特に自覚症状がないと思っていても、いわれてみるとぶつけた覚えがないのに内出血ができやすい歯磨きですぐに歯茎から出血する、鼻血が出やすいといった出血のしやすさに気づくケースがあり、診断の足掛かりとなります。

ここでは、人間ドックで異常を指摘されて判明することがある疾患について、病気の概要、検査や治療について解説していきます。

1.特発性血小板減少性紫斑病(ITP)

ITPは免疫の異常によって血小板に対する抗体ができ、血小板が壊されやすくなり血小板数が減少する病気です。免疫異常が生じる原因は不明で、難病に指定されています。急性型慢性型があり、急性型は風邪などをきっかけに小児に発症し、その多くは半年程度で自然に回復します。慢性型は大人に多く、血小板数の減少が半年以上続きます。

症状は出血が止まりにくい内出血鼻血歯茎からの出血尿や便に血が混ざる、、生理の出血量が多い・止まらないなどですが、症状がなく人間ドックなどで血小板数の減少を指摘されて発覚するケースもあります。

診断は、血液検査及び必要があれば骨髄検査を行い、他の血小板減少をきたす病気との鑑別を行います。ITPでは赤血球や白血球など血小板以外の血液成分は減少しません。

治療は胃にヘリコバクター・ピロリ菌がいるケースでは抗菌剤を服用します。除菌に成功した患者の約半数で血小板増加が期待できます(ITPナビより)。ヘリコバクター・ピロリ菌がいない場合や除菌しても効果がなかった場合はステロイドを使用した治療を行います。治療効果が見られない場合は手術で脾臓を摘出するケースもあります。

2.本態性血小板血症(ET)

造血幹細胞に異常が起こり、必要ないのに血球が多く産み出される病気を骨髄増殖性腫瘍といい、なかでも血小板が増える病気がETです。50歳以上の人にみられ、女性に多いことが特徴です。

無症状で、人間ドックなどで偶然発見されるケースが多いです。放っておくと血の塊を作り、血管を詰まらせ、心筋梗塞脳梗塞を起こすリスクがあります。また、血小板数は増加しているものの、その機能は不十分なため、出血しやすく、血が止まりにくいといった症状を起こす場合もあります。

診断には血液検査のほか骨髄検査も必要です。治療は抗血小板薬(血小板の機能を低下させる薬)を投与して、血小板の働きを抑えます。

3.再生不良性貧血

再生不良性貧血は骨髄機能が低下し、血液中の白血球、赤血球、血小板すべてが減少します。先天性後天性のものがあり、後天性では薬剤ウイルス感染などが原因になることもあります。症状としては白血球減少で感染を起こしやすくなることによる発熱、赤血球減少で貧血、血小板減少で出血などが起こります。

診断には白血病などとの鑑別が必要となり、骨髄検査を行います。治療は貧血や血小板減少の程度が軽ければ何もせず経過観察を行いますが、進行した場合は輸血免疫抑制剤の投与が必要になります。重症例では骨髄移植を行うケースもあります。

4.肝硬変

肝硬変は肝臓が硬くなり、肝機能が低下し、本来の機能を果たせなくなる状態をいいます。肝硬変が進行すると血小板の生産が減少し、肝臓の血流が悪くなることで血小板が壊されやすくなります。肝硬変が重症であるほど血小板数は減少します。そのため血小板数は肝硬変の重症度を測る指標となります。診断には肝機能を血液検査で調べ、CTエコー検査などの画像検査も必要です。

肝臓はいったん硬くなり、機能が低下すると元に戻せません。血小板数の減少だけで肝硬変の兆候を発見できるわけではないですが、肝機能低下を以前から指摘されている人は数の変動をチェックしておく必要があります。

5.血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

全身の細い動脈や毛細血管に血小板血栓(血小板のかたまり)ができる病気です。血栓がつくられるために血小板が使われてしまうことで、血小板数が減少します。

血小板の減少による紫斑病(皮下出血により青あざができる)や歯茎や口内などの粘膜からの出血、つくられた血栓が血管を塞いでしまうことによる腎機能障害、溶血性貧血、動揺性精神神経症状(幻覚、妄想、脳神経麻痺、頭痛など)、発熱といった症状がみられます。

止血にかかわる酵素の働きが減少してしまうことが原因とされていますが、遺伝子異常による先天性の場合と、自己免疫疾患や造血幹細胞移植、妊娠、薬剤などによる後天性の場合があります。

6.偽性低血小板血症

血液内の細胞数を計測する自動血球計数器は、細胞の種類を大きさによって区別しています。そのため、血小板が凝集(固まろうとして集まる)していると、それは血小板ではなく白血球と誤認されてしまいます。これを偽性低血小板血症といいます。

多くは病気が原因となっているわけではなく、採血後の血液を抗凝固剤と十分にかき混ぜなかったことや、血液が組織液(毛細血管から染み出した血漿成分)と混じってしまったことなどによって生じます。また、自己免疫疾患などで治療を受けている人の場合、EDTAという抗凝固剤によって血小板凝集がみられるEDTA依存性偽性血小板減少が生じることもあります。

まとめ

血小板はけがなどで出血したときに働く、なくてはならない血液の成分です。自覚症状がなくても血小板数が異常をきたしているケースもあります。定期的に検査を受けることも大切です。