骨盤内炎症性疾患は女性の下腹痛の原因の1つで、子宮頸管より上の生殖器への感染の進行によって炎症が拡がり、将来に不妊症や子宮外妊娠などの様々な合併症を引き起こします。できるだけ早期に治療を行い、原因を取り除くことが必要になってきます。ここでは、骨盤内炎症性疾患の治療方法についてお話ししたいと思います。

目次

治療方法は?

骨盤内炎症性疾患の治療方法には、保存的治療と外科的治療の2種類があります。症状や状態などによって治療方法は変わってきます。

保存的治療

骨盤内炎症性疾患の治療法としてまず行われるのが、抗菌剤の投与です。
抗生物質を内服する方法が一般的ですが、下腹部痛や圧痛が強く、骨盤腹膜炎まで重症化している場合には、注射による抗菌剤の投与が行われます。
注射による投与の場合は、入院治療が必要になりますが、入院が不可能な場合は、外来に1日1~2回通ってもらう通院治療が行われる場合もあります。

外科的治療

保存的治療が効かない場合には、外科的治療が行われます。
状況により、開腹手術や腹腔鏡手術などで精査します。

入院は必要?

下記の状態のいずれかに該当する骨盤内炎症性疾患の場合は、通常、入院管理が必要になります。

  • 診断が不確かで、外科的治療が必要な疾患の可能性がある
  • 妊娠
  • 重度の症状または高熱
  • 卵管卵巣膿瘍
  • 外来での治療に耐えられないまたは従えない(嘔吐がひどいなど)
  • 抗生剤の内服の効果が薄い

治療中の注意点

骨盤内炎症性疾患の治療中、下記の2点について注意する必要があります。

1.医師の指示通りに内服する

外来管理で抗生物質を内服中の場合、絶対に自己判断で内服を中断しないようにしましょう
規定の日数の間きちんと内服しなければ効果がでず、有効な治療を行うことができません。
骨盤内炎症性疾患に使われる薬剤にはいくつか選択肢があり、原因菌によっては効果が出ないものもあるため、医師から指示された日数を内服して効果が出なければ、他の抗生物質に変更することもあります。
医師が薬の効果を判定できるように、薬は指示された通りに飲みましょう。

2.パートナーも検査・治療を受ける

骨盤内炎症性疾患は、クラミジアや淋病などの性感染症が原因菌の場合には、パートナーも治療する必要があります
自分の治療が終わっても、パートナーが未治療の場合、また感染することになってしまい、今までの治療が無駄になってしまいます。
骨盤内炎症性疾患の発症前2か月に性交渉のあったパートナーにも検査・治療を受けてもらいましょう。また、治療中は再感染を防ぐために性交渉は控える必要があります。

まとめ

骨盤内炎症性疾患はその症状の出方や炎症の部位によって、治療方法が異なります。
重症化すれば、それだけ手術や入院の必要性が高くなってくるため、できるだけ早期に発見し、治療することが望ましいです。そのためにも、この病気について知っておくことが重要です。

なにか気になる症状がある場合には、婦人科を受診し、なにも症状がない場合でも水面下で感染が進行している可能性もありますので、年に1回は婦人科検診を受けるようにしましょう。
骨盤内炎症性疾患は、不妊や子宮外妊娠のリスクを高めるので、特に妊娠を希望されている方、将来的に妊娠の予定のある方は、こういう疾患があることを覚えておいて下さい。