例年、梅雨時期から夏にかけては、天気予報などから熱中症に注意という情報が発信され、日ごとに熱中症のリスクを表示するサイトもあります。
熱中症というと、長時間の屋外での作業や運動により発症するというイメージが多いですが、高齢者・乳幼児では搬送例の約4割が住居で発生しているというデータがあります。ここでは、乳幼児の熱中症の特徴とその対策に関して解説します。
熱中症は自宅にいても発症!?
熱中症とは、暑さによって体が不快な状態になることで生じた健康障害の総称です。メカニズムとしては、水分・塩分補給が十分ではなく、発汗などの体温調節が低下することで起こります。
嘔気・めまいに始まり、重症化すると高体温・意識障害などの症状がみられます。こうした症状は主に炎天下での外出・運動・作業により発症するというイメージが大きいですが、救急搬送され熱中症と診断され治療を受けた中で、乳幼児(0~5歳)は45.5%、高齢者(65歳以上)は55.6%が、自宅で発症しています。乳幼児は室内にいても、環境状況によっては熱中症を発症します(東京消防庁・発生場所別の熱中症による救急搬送人員 [平成29年6月~9月])。
熱中症は、室温などの温度だけではなく、湿度・輻射熱・空気の流れなどの様々な要因が合わさって発症します。また、体調のコンディションも影響があります。特に、最低気温が夜間でも25度以上ある「熱帯夜」とよばれる状況では、夜間でも体温が高くなるため、朝起きてすぐに熱中症を発症する場合もあります。
乳幼児の熱中症の特徴
1.自分で水分・塩分をとらず、体調不良を訴えられない
乳幼児は、遊びに夢中になることがあります。すると水分や塩分を補給したり、暑さを自覚して両親に訴えたり、服を脱いだりという対策が自分では困難であることから、リスクが高まります。
水分や塩分の補給や室温管理は保護者が行うため、暑さへの対策が十分にできない可能性があります。
2.体温調節が未熟である
乳幼児は、汗をかくという機能が成人と比べて未熟であることから、体温調節機能が難しいです。この結果として、体に熱がこもり、体温上昇が簡単に起きやすいです。気温が高くなると、体表温度の上昇のリスクは上がります。
3.地面からの熱の照り返しの影響を受けやすい
乳幼児は成人と比べて身長が低いため、地面からの熱の照り返しの影響が強くなります。このため、外出先では成人よりも小児の方が熱の影響を受けます。成人と比べて高い温度の環境にあり、成人よりもはるかに強い暑さを感じます。
また、ベビーカーも同様に地面に近いために、高温の環境となる場合が多いです。
乳幼児の熱中症への対策~早期予防と普段からできる方法~
1.屋内での対策
屋内でも、室温・湿度や風通しの状況から熱中症となるリスクがあります。このため、部屋に温度計・湿度計を置いて、室温・湿度をこまめにみることが重要です。
また、室内での熱中症が増加傾向であるために、風通しを良くして、熱気をこもらせないことが重要です。窓を開けて換気を定期的に行う、エアコンは一か所に風をあてない、扇風機を併用して風通しを良くすることもポイントです。
2.屋外での対策
屋外では、熱の照り返しの予防策のため、ベビーカーは地面からより高い位置にあるものを選んでください。
また、服装は風通しがよく熱がこもりにくい、涼しい服でお出かけしてください。適宜、温度に合わせて脱ぎ着ができるようなものがおすすめです。加えて、積極的に水分・塩分を補給してください。経口補水液や水筒をお持ちください。
3.早期発見・早期予防
乳幼児は、言葉が話せないために「暑い」「不快」という感覚を伝える事が難しいです。また、暑くても我慢して遊びに熱中してしまうという特徴があります。
熱中症の初期症状として、顔が赤くなる・ひどく汗をかくという症状がありますので、こうした症状を早めに理解して、水分の補給を行い、涼しい場所での休憩、衣服の調整を行ってください。もし熱中症を疑う症状が見られたら、休息を取らせましょう。
さらに、日ごろから適度に運動させ、暑さに対しても対応ができるような体力作りも重要であります。本格的な暑さがみられる梅雨明け(7月中旬)より前からの準備が重要です。
エアコンが常に作動している部屋にいて汗をかかない状態が続くと、体温調節の機能が低下して、暑さに弱くなる傾向があります。
まとめ
乳幼児の熱中症は、体温調節が未熟であるために熱がこもりやすいこと、また自分自身で暑さや不快感を訴えられないために発症しやすい特徴があります。
熱中症の発症予防には屋内での温度調整のみならず、風通しなどの環境整備の他、適切な水分・塩分の補給、早期発見による対応が重要です。