7月になり、初夏とは思えないほどの猛暑日・真夏日が続いております。熱中症対策の一環として、こまめに水分補給を行っている方も多いと思われます。この水分補給をペットボトルに頼りすぎると、糖尿病が悪化した状態となり救急搬送・入院治療を必要とする場合もあります。

ここでは、ペットボトル飲料の大量摂取を続けた場合に起こる「ペットボトル症候群」について説明します。

目次

ペットボトル症候群の由来・疾患概念

「ペットボトル症候群」の由来は、1990年代に大量の清涼飲料水を水分や食事の代わりに飲み続けていた高校生・大学生が、意識障害やけいれんを起こして医療機関へ搬送されるケースの報告が相次いだことです。正式名称は「清涼飲料水ケトーシス」であり、この概念が、1992年での日本糖尿病学会においてはじめて発表され、その後、医学界はもちろん、社会に認識が広まってきました。

このように糖尿病の自覚がない10代から30代の方が、糖尿病の症状の1つの「喉の渇き」を補うため、10%程度の糖分が含まれる清涼飲料水を1か月以上にわたり、毎日1.5リットル以上の大量摂取を続け結果生じる、急激に血糖が上昇したケトーシス(糖尿病においてケトン体が血中に増えている、重症な症状)の状態が、診断基準とされております。

※ケトン体:脂肪が分解された物質で、エネルギー源として使用されます。大量に増えてしまうと、臓器の働きを損ねてしまうことがあります。

ペットボトル症候群の症状

ペットボトル症候群は、基本的な症状としては糖尿病とは特にかわりありません。症状としては、連日の暑さなどにより清涼飲料水を1日1.5リットル(ペットボトルとして3本)以上飲む状態が長引いた結果血糖の上昇がみられます。ある一定の状態を超えると、この「高血糖」による状態で起こる「喉の渇き」を、単純に水分不足と誤って認識してしまいます。

この結果として、インスリンの分泌が欠乏して、飢餓(きが)に近い状態に体が変化します。倦怠感・体重の急激な減少から始まり、重篤な状態となると「多尿」、お腹の症状「嘔吐・腹痛」、進行すると意識障害・昏睡から死亡する場合があります。

  1. 異常に喉が渇くことが多い(暑さ・運動による喉の渇きがなくなる)
  2. 尿量が増えて夜起きることが多くなる(腎臓からの尿糖の排せつが増え、結果として尿量が増える)
  3. 急激な体重減少がある、食べても満腹感がない

この3つの症状に該当する場合、食事生活においてはペットボトル症候群の可能性もありますので医療機関受診をおすすめします。

気を付けるのは清涼飲料水だけ!?~パッケージの見方

ペットボトル飲料を飲む男の子-写真

熱中症の対策として、清涼飲料水のほかにもスポーツドリンクなどでの対策をされる方もいらっしゃるかと思います。実際には、市販されているスポーツドリンクをはじめとした飲料水には、飲みやすさを考えて、糖質が多く含まれていることが多いです。飲みやすいスポーツドリンクでも、糖質が5%程度含まれているものが多いです。

最近では、健康志向も高まっていることから、清涼飲料水は、消費者ニーズにおいて、「低糖」「微糖」「無糖」という糖分の表示、また「カロリーゼロ」「低カロリー」という表示されております。

飲料の100mlあたり、糖類が0.5g以下である場合には「無糖」、2.5g以下の場合には「低糖」「微糖」と表示してあります。ペットボトルを含めた栄養成分表示では「炭水化物」は糖質と食物繊維の合計でありますが、実質、殆どが糖分に相当しますので、こちらを参考にしてください。

例えば、以下の栄養成分表示の場合

「100mlあたり エネルギー 20kcal タンパク質 0.2g、脂質 0.0g、炭水化物 4.8g

という表記では、糖質は4.8gと考えられます。100mlあたりに4.8gが溶けていますので、糖質は4.8%相当と計算されます。

その一方、「カロリーオフ」や「カロリーゼロ」と表記した飲料水も増えていますが、こちらの表記にも注意が必要です。「カロリーオフ」は100ml当たりのエネルギーが20kcal以下の場合、「カロリーゼロ」は100ml当たりのエネルギーが5kcal未満の場合に表示可能です。こうした商品の多くは、糖質の量を少なくする代わりに、ソルビトールなどの人工甘味料を使っていたりしますが、糖質によるエネルギーがないわけではありません。このような人工甘味料の接種が過剰となると、同様に糖尿病のリスクや腎臓機能障害などの影響が懸念されております。

まとめ

清涼飲料水の飲みすぎによる、糖尿病に似たメカニズムで起こるペットボトル症候群について説明しました。この疾患の予防としては、飲料の成分表示をみながら含まれた糖分濃度をチェックする習慣をつける、清涼飲料水の摂取量を確認することが重要です。

これに併せて、異常な喉の渇きの渇きや体重減少があれば、ペットボトル症候群を疑い早めに医療機関を受診して対策を練ることも重要であります。