風邪のときに耳が痛くなり、病院で中耳炎と診断されたことはありませんか?この様な中耳炎の多くは医学的に急性中耳炎と呼ばれており、一般的には抗生物質の投与などによって治療されます。一方で、真珠腫性中耳炎はより長い治療期間を必要とし、病気のメカニズムも急性中耳炎とは大きく異なります。ここでは、この真珠腫性中耳炎について詳しく説明します。

目次

中耳炎ってなに?

「中耳炎」とは文字通り、中耳に発生する炎症です。

中耳とは耳の一部のことであり、鼓膜と鼓膜に伝わった振動をより奥(内耳)へと伝えるための耳小骨と呼ばれる骨を含む空間を指します。また、耳管と呼ばれる管を介して鼻と繋がっています。中耳炎では、この中耳が何らかの原因で炎症を起こしてしまいます。

私たちにとって身近に経験する急性中耳炎は、鼻に潜んでいる細菌が耳管を通して中耳に伝わることで発症することが多いとされています。

真珠腫性中耳炎ってなに?

それでは真珠腫性中耳炎は一体どのような病気なのでしょうか?

真珠腫性中耳炎は、皮膚と似た成分(上皮成分)のかたまりである真珠腫が中耳でできて広がってしまう病気です。

多くは、長い年月をかけて形成される後天性真珠腫と呼ばれるものです。子供の頃などに鼻や中耳の病気を繰り返し、耳管の通りが悪くなり中耳の圧が低い状態(陰圧状態)になってしまうことがあります。この状態が長く続くと、上皮成分が中耳に引き込まれ真珠腫を形成します。さらにここで細菌などが繁殖してしまうと、炎症が発生し周囲の骨などを溶かしながら真珠腫が進行していきます。

また、生まれつき中耳に真珠腫がある場合(先天性真珠腫)もあります。先天性真珠腫は、胎生期に真珠腫の原因になる皮膚の成分が、鼓膜の奥に取り残されてしまうために生じるといわれています。

真珠腫性中耳炎の症状は?

真珠腫性中耳炎の症状は通常の急性中耳炎とやや異なります。一般的な急性中耳炎の代表的な症状は耳痛(耳の痛み)発熱です。これは、中耳内で細菌が急性炎症を起こすことによって生じます。ですが、真珠腫性中耳炎で痛みが生じることは多くありません。

真珠腫が大きくなってくると、音の振動を伝えるための耳小骨が破壊されることで難聴が生じ始めます。真珠腫ができたばかりの頃は、痛みや難聴といった症状が現れることはそれほどありません。中耳への細菌感染により、耳漏(耳だれ)を生じるようになります。

また、真珠腫は放置しておくと中耳だけではなく周囲の骨にも広がっていきます。これによって内耳が損傷されると、感音難聴やめまい、周囲を走る神経(顔面神経など)が損傷されると、顔面麻痺(顔の筋肉が動かしにくくなること)などが生じることもあります。

最悪の場合、脳にまで真珠腫が広がり脳膿瘍(脳に膿ができること)や髄膜炎となり、命にかかわる事態となることもあります

治療はどうするの?

耳鼻科の診療器具、耳鏡、鼻鏡、膿盆

一般的な中耳炎は抗生物質によって治療されることがほとんどで、状態が悪い場合も鼓膜を切開する程度の治療で済みます。

一方、真珠腫性中耳炎は基本的に手術によって真珠腫を取り除く以外に根本的な治療法はありません

ただし、手術で真珠腫を取り除いても一定の確率で再発するリスクもあります。そのため、手術後は定期的な通院を継続し、再発の有無に注意していく必要があります。最初から手術を二段階にわけて実施する(2回にわけて手術する)場合もあります。

まとめ

真珠腫性中耳炎は急性中耳炎と比較すると頻度も低く、あまり一般的には知られていない病気かもしれません。ですが、そのまま放置しておくと難聴やめまい、顔面麻痺などの様々な症状を引き起こします。また、内耳への進展により感音難聴を起こしてしまった場合、失われた聴覚は人工内耳などの別の手術を行わない限りは回復することはありません。したがって、できるだけ早期に発見することが重要なのです。