風疹(ふうしん)は子どもの病気と考えられることが多いですが、近年では大人、とくに男性がかかる傾向があります。大人が風疹にかかると、発熱・リンパ節の腫れ・発疹などの症状は子どもと同じですが、経過が長く重症化する可能性もあります。また、妊婦がかかると胎児に先天性風疹症候群という臓器への異常がみられます。

ここでは、最新の風疹の流行状況とその対策に関して記載します。

目次

風疹(ふうしん)の近年の流行状況~ワクチン接種との関係

統計から見ると、風疹はこれまでにおおむね5~10年程度の周期で流行がみられていました。特に多かった1982年では感染者は約32万人と推定されています。

この10年では、2012年から2013年にかけて、規模は以前より小さくなりましたが約1万6千人の感染報告がありました。近年は、麻疹(はしか)と同様に海外での感染により帰国後に発症する症例が多く、地域的な流行がみられました。感染者の年齢は9割が成人であること、感染者のほとんどが30から50代の男性であることが近年の風疹感染の特徴です。

これまで、風疹の予防政策(予防接種)は、後述する先天性風疹症候群の予防に重点を置いていました。1977年からは、女子中学生を対象として風疹ワクチン接種を実施していました。

しかし女子中学生のみへの予防接種では、男性を感染源とした先天性風疹症候群の新生児例がみられる可能性があります。また社会での感染伝播のリスクがあると考えられ、男性への予防が重要と判断されました。こうした判断から、1995年から男性にも接種するようになりました。

一方、1977年から1995年までは男性には積極的にはワクチン接種を行っていませんでした。そのため、現在では30代以上の男性は風疹に対しての抵抗力が低下(抗体がない)しており、近年の発症が男性に多い傾向となっています。

国立感染症研究所によると、2018年では7月より風疹の患者が増加傾向です。8月中までの報告数は140名程度であり、関東地方での流行(千葉県・東京都)が増加傾向となっています。年齢・性別も30-50代の男性が多くを占めており、近年の流行パターンに類似しているだけでなく、今後も増加が懸念されています。

風疹(ふうしん)の症状

風疹とは、風疹ウイルス感染による急性の発熱・発疹がみられる感染症であり、3日はしか」という別名があります。潜伏期(ウイルスに感染してから発症するまでの期間)は2-3週間程度ですが、主な症状としては、発疹・発熱・耳の後部のリンパ節の腫れです。

風疹で起こる発疹は、麻疹のように癒合(ゆごう:離れていた皮膚や筋肉が付着し、傷口がふさがること)傾向はありません。そのため、直径1-2mm程度と細かい発疹が、発熱とほぼ同時にみられることが特徴です。

また、成人では関節症状等が強くみられる場合があります。経過としては、発熱は3日程度、発疹も5日程度続きますが、成人例ではこうした症状が1週間程度と長引くことがあります。

風疹の感染力は、発熱1-2日前から、発疹が消失するまではあります。感染経路は唾液感染・空気感染と考えられています。

先天性風疹症候群~胎児の感染による合併症

先天性風疹症候群は、母体が妊娠6か月くらいまでにかかることにより、胎児に臓器発達障害が起こることで異常な症状を示します。

先天性風疹症候群の3大症状は、先天性心疾患・白内障・難聴です。先天性心疾患・白内障は、妊娠初期の3か月以下での母体の感染で発生します。難聴は妊娠6か月程度までの感染でもみられます。

この他にも、網膜形成異常、小眼球症、精神運動発達遅延、血小板減少症(血が止まりにくく、あざができやすい)などの様々な症状が合併します。

ワクチンが重要な予防手段です~男性も積極的に

風疹には、インフルエンザのように抗ウイルス薬の特効薬がないため、ワクチン接種が感染予防の唯一の手段です。風疹の予防接種を行う主な目的は、麻疹同様に、感染による症状発生の予防と感染拡大予防ですが、このほか、妊婦が風疹にかかることで赤ちゃんに先天性風疹症候群による臓器障害が生じることを予防することも大切な目的です。

現在、小児では1-2歳・就学前の2回、MRワクチン(麻疹風疹)接種を実施しております。また、自治体にもよりますが、妊娠を希望する女性とそのパートナーにも公費助成として、先天性風疹症候群予防目的でのMRワクチン接種を推奨しています。なお、妊娠中の女性は風疹の予防接種をうけることはできません。

特に30代以上の男性では、風疹の抗体価が低い(感染のリスクが高い)方が20%程度という統計があります。風疹にかからない、移さないためにも、ワクチン接種歴をご確認いただき、積極的な接種を推奨します。ただ、ワクチン接種から2か月は避妊をする必要がありますので、こちらも留意してください。

まとめ

風疹は、近年では周期的な流行がありますが、その多くはワクチン接種が対象外であった30-50代の男性に多くみられます。風疹感染は成人の方が長く症状が続き、重症化することもあります。また、妊婦が感染することによって起こる先天性風疹症候群の発症を予防することが重要です。このため、風疹の感染拡大や先天性風疹症候群の発生予防には、個人のレベルでのワクチン接種を確認・実行することが重要であります。