風疹は別名「3日麻疹(はしか)」ともよばれ、発熱・リンパ節・発疹を認める、伝染性の疾患です。小児よりも成人の方が感染者は多く、症状は強くなります。また、風疹ウイルスによって胎児に先天性異常が生じる先天性風疹症候群も増加傾向であります。ワクチンが予防には有効であり、自身のみならずこれから生まれてくる赤ちゃんの先天性感染を予防することが重要です。

目次

風疹の最近の傾向とワクチンの歴史

注射

日本では、約5年ごとに大規模な全国流行がみられていました。男女幼児が定期接種の対象になってから、大規模な全国流行はみられなくなり、一時的に収束に思えたこの感染症ですが、この数年では流行の兆しがみられております。

2010年に87人であった報告数は2011年に378人、2012年には2,392人、2013年以降では5,000人を超えて、全国への感染が拡大傾向となっております。ところが、小児に多いとされていたこの疾患も、報告患者の9割が成人です。男性が女性の約4倍であります。男性は20~40代に多く、女性は20代に多いです。

その理由として、ワクチンのこれまでの対応が考えられております。1977年~1994年まで、風疹のワクチンは中学生の女子のみが定期接種でした。ところが、1995年4月からその対象は生後12カ月以上〜90カ月未満の男女(標準は生後12カ月〜36カ月以下)に変更になりました。詳細は割愛しますが、接種もれの定期接種の方へこの情報が行きわたらず、現在の成人の方はワクチンを未接種の方が多いため、成人の流行および先天性風疹症候群が明らかに増えてきたと考えられます。

一方、小児では2006年からはMR(麻疹・風疹)混合ワクチンの2回接種が導入されています。

風疹の感染経路

風疹ウイルスに感染した人の鼻・のどからの分泌物の中に風疹ウイルスが含まれます。それが飛沫感染を起こすことにより、手指を介して鼻・口へ運び込まれる、またこの飛沫を吸い込むことによって起こります。鼻・咽頭部の粘膜で増殖して約1週間後に、血液中に多量のウイルスが全身を巡り、後述する症状を認めます。また、妊娠早期では母親の感染により直接、胎児の感染が起こります。

風疹の症状(こどもと大人の比較)

ウイルスの感染から14〜21日(平均16〜18 日)の潜伏期間の後

  1. 38度以上の発熱
  2. 発疹
  3. リンパ節腫脹(ことに耳介後部、後頭部、頚部)

が出現します。発熱はすべての風疹患者にみられるわけではなく、60~70%にみられる程度です。また、ウイルスにかかっても症状が出ない「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」が15~20%程度存在します。風疹は別名「3日はしか」と呼ばれる通り、これらの症状は3・4日で改善傾向となります。

これら風疹の症状は、子供のうちは比較的軽いものですが、稀なケースとして急性脳炎・血小板減少性紫斑症など合併症が発生することがあります。

また、風疹は子供の感染症と思われがちですが、感染者のほとんどが成人であることを強調しておきます。成人が感染すると、発熱発疹期間が長く(1週間以上)、また関節痛がひどいなど、子供と比較し症状が重くなる傾向があります。

この3つの症状がそろわない場合には診断は困難となり、血液検査で判断することが多くなります。また似たような疾患では溶血性連鎖球菌による発疹、伝染性紅斑(りんご病)伝染性単核球症(EBウイルス感染症)があります。

先天性風疹症候群~増加傾向だからこそ知っておくべき知識~

妊婦

風疹の最大の問題は、ウイルスに免疫のない妊娠20週頃(胎盤の機能がしっかりしてくる)までの妊婦が感染したことにより、胎児が感染して、下記の先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風疹症候群が出現することです。

妊娠中の感染時期により重症度、症状の種類が様々であり、先天異常として発生するものの多くには以下の3主症状があります。

  • 先天性心疾患(動脈管開存症が多い)
  • 感音性難聴
  • 白内障または緑内障

先天異常以外に新生児期に出現する症状としては、低出生体重血小板減少性紫斑病溶血性貧血間質性肺炎髄膜脳炎精神運動発達遅延があげられます。

先天性風しん症候群の発生頻度は、妊婦が風疹に感染した時期により異なり、妊娠4週までは50%以上、5~8週は35%、9~12週は15%、13~16週は8%とされています。妊娠8週までの罹患では、白内障、心疾患、難聴の2つ以上の疾病が出現し、それ以降20週までの罹患では難聴のみのものが多く、妊娠後半の罹患では、胎児に感染は起こっても、先天異常は出現しません。

風疹の予防…大人でもワクチン!

日本においては、小児には1年長の2回にMRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)が定期接種として行われております。こちらはご存じと思われます。その一方で、成人に対しても、市町村によっては、妊娠を希望する女性・そのパートナーに対して助成によりワクチン接種を進めている自治体もありますので、お住まいの自治体や医療機関でご相談されることをおすすめします。成人の場合でも感染しないため、また生まれてくる赤ちゃんの先天性風疹症候群の予防にご検討ください。

まとめ

先天性風疹症候群を含めた風疹感染症は、近年増加傾向にあります。小児より成人の方が症状は強くみられ、また先天性風疹症候群のリスクもあります。感染予防の観点から、妊娠をご検討の女性・男性ともに、公費助成があるワクチン接種を検討ください。