産後、女性の体は今までにない急激な変化を迎えます。
身体的にも精神的にも負担が大きく、トラブルを抱えることもしばしばです。

ここでは、産後に起きやすい異常としてどのようなものがあるのか、何科に行けば良いかについてお話ししたいと思います。

目次

子宮復古不全

妊娠中に胃を押しあげるぐらいまで大きくなった子宮は通常、出産後にどんどん収縮し、産後1ヶ月ほどで妊娠前と同じくらいの大きさに戻ります。

このような子宮の戻りが悪い方を、子宮復古不全と言います

原因としては、子宮内に胎盤や卵膜などが残っていて子宮収縮を邪魔している場合や、多胎妊娠や微弱陣痛、母体の疲労などによって子宮の収縮力が弱っている場合などが考えられます。

子宮復古不全では子宮内の出血が止まりきらず、子宮内膜の再構築が遅れて、血性の悪露(産後、子宮から排出される分泌物)の量が多い状態が続きます。その結果、稀に子宮内感染を起こします

出産後、退院前の診察などで子宮の復古状態を確認されるほか、産後1ヶ月目の検診でも診察されます。もし、退院後に悪露の量が増えたり、血の塊が出たりすることがあれば、産婦人科に連絡しましょう

マタニティブルーズ

産後は身体だけでなく、精神的にも負担が大きい時期です。
赤ちゃんを24時間体制でお世話し、さまざまな不安や失敗に直面するため、マタニティブルーズと呼ばれる一過性の軽度のうつ状態になることも少なくありません。

出産直後から産後7〜10日以内にみられ、主に2〜4日が発症のピークになります日本産科婦人科学会より)。
涙もろさ、不安感、焦燥感、緊張感、抑うつ気分、集中力欠如などの精神症状のほか、疲れやすい、食欲不振、頭痛などの身体症状が出る場合があります。

マタニティブルーズの症状が産後7〜10日以降、産後2〜4週の時点でみられる場合には、産後うつ病などの産褥精神病の可能性があります

早めにかかりつけの産婦人科を受診するか、精神科・心療内科を受診するようにしましょう。

おっぱいトラブル

授乳に関するトラブルも、産後にはよく見られます。

出産後、授乳が開始するわけですが、産んで急に母乳がよく出るようになるわけではありません。産後1〜2日経った頃、母乳を作るために乳房が張って痛みが出始めることがあります(乳房うっ積)。

そして産後3〜4日後になると、母乳の分泌が増えます。この時、乳頭の亀裂や湿疹、乳管の圧迫や閉塞があると、母乳が作られているのにうまく出すことができず、部分的に赤くなったり腫れたり、痛みが出たりします(乳汁うっ滞)。この状態を放置すると乳腺炎になる場合があります。

次に問題となるのが、おっぱいが十分に分泌できない状態(乳汁分泌不全)です。ホルモン異常や、陥没や扁平など乳頭の形状的に授乳しづらい場合、赤ちゃんの哺乳力不足の場合などに起きることがあります。

いずれも状態によって授乳介助やマッサージ、搾乳、薬物療法の必要がありますので、痛みがひどい場合や母乳が出ない場合には産婦人科に連絡しましょう

尿もれ

産後、尿もれが起きやすくなることがあります。
もともと女性は男性よりも尿道が短く、尿失禁を起こしやすい状態です。

出産では尿道を支える筋肉に大きな負担がかかります。そのため尿道の締まりが悪くなり、くしゃみや咳をしたときなど、腹圧が上昇した際に尿漏れを引き起こすと考えられます。

尿もれは通常、産婦人科か泌尿器科で診察してもらえますが、産後1年以内の場合には、産婦人科を受診してみましょう。

出産時の力みで、痔になってしまう方は少なくありません。

軽傷の場合には生活習慣の改善だけで治ることもありますので、お早目に産婦人科の先生に相談するか、外科や肛門科を受診してみましょう

また、もともと痔をもっていた方は出産時に悪化してしまう恐れもあります。

妊娠中は女性ホルモンの影響で便秘になりやすく、排便の際に肛門に負荷がかかって痔になりやすい状態です。出産前に痔がわかっている場合には、治療をしてからの出産が望まれます。

ただし、妊娠中には使用できない薬もあるため、自己判断で市販の薬を使わないようにしましょう

かかりつけの産婦人科に相談するか、肛門科にて妊娠中だと伝えた上で診察を受けると良いでしょう。

まとめ

産後の心身は、自身が思っている以上にダメージを受けています。これぐらいなら大丈夫と無理をすると、回復に余計に時間がかかることもあります。

産後は、赤ちゃんのお世話と自身のからだの回復に専念できるように、ご主人やご家族に協力してもらいましょう。上記のような異常が起きた際、医療機関を受診する必要が出てくる場合がありますので、お母さん以外の方が赤ちゃんのお世話ができる状態を作っておきましょう。自治体の一時保育を活用する方法もありますので、事前に調べておくと安心です。