人間の体は頭から爪先まで数多くの骨によって構成されていて、その数は成人で206個あるといわれています。骨には体を支える働きのほか、大切な内臓を守ったり、カルシウムなどが不足しないように貯めたりしておくなど、とても重要な働きがあります。

ただ、骨の強さ(骨強度)を超える力が加わると、骨折してしまうことがあります。骨折は原因や折れ方などによってタイプが異なります。今回は骨折の症状や分類、治療などについて紹介します。

目次

骨折の症状

一口に骨折と言っても、単に骨が折れることだけ意味するものではありません。骨が欠けたりへこんだり剥がれたり、骨にヒビが入ることなども該当します。

骨折した箇所が痛んだり、腫れたりします。これは骨やその周辺には血管が多く、また神経も豊富にあるためです。痛みは押すと強くなる場合があるほか、運動しているときだけ痛むケースもあります。後述する開放骨折のように、骨が皮膚の外に飛び出している状態だと激しく出血することがあり、その場合ショック状態に陥る可能性もあります。

見た目でわかるほど変形している場合もあり、その場合は通常のように動かせなくなります。傍から見て骨折しているかどうかわからないこともあり、本人は突き指や捻挫と勘違いしてしまうケースもあります。

骨折の種類

原因や程度、どのような力が骨に働いたかによって、骨の折れ方は異なります。その種類について、いくつか挙げていきます。

原因

大きく分けて次の3つに分けられます。疲労骨折はスポーツ選手によくみられます。病的骨折は高齢者や中年以降の女性は特に注意する必要があります。

  • 外傷性骨折…転倒や転落、衝突・交通事故などが原因で起こるもの。
  • 疲労骨折…骨の同じ部分に何度も繰り返して力がかかることが原因で、骨にヒビが入るなどしたもの。
  • 病的骨折…骨粗鬆症や骨腫瘍などによって骨強度が低下しているため、健康であれば問題ない弱い力でも起こるもの。

程度

骨がどの程度折れているかによって、異なります。

  • 完全骨折…文字通り、完全に骨が分断されるように折れたもの。
  • 不完全(不全)骨折…ヒビが入るように折れる亀裂骨折などのように、骨が部分的に折れたもの。

創の有無(骨が空気に触れているか)

皮膚やその下にある軟部組織(筋肉や脂肪など)が切れている状態を創(そう)と言います。その創から骨が出ているか(空気に触れているか)で分けられます。このうち、開放骨折は傷口からの細菌感染が起こりやすく、早急な治療が必要です。

  • 開放骨折…創があり、骨が空気に触れてしまっている状態。激しい出血も伴う。
  • 閉鎖骨折…創はなく、骨も空気に触れていない状態。

骨に伝わる力の方向

外からの力(外力)がかかる方向によって、折れ方は異なります。いくつか紹介します。

  • 圧迫骨折…骨が圧迫されつぶれている状態です。腰椎・胸椎に起こりやすく、骨粗鬆症などがある高齢者によくみられる。
  • 裂離骨折(剥離骨折)…小さな骨が靭帯や腱の結合部分から剥がれてしまった状態。手足、足首などに起こりやすい。
  • 陥没骨折…強い外力によって骨が内側にへこんでしまう状態。
  • 捻転骨折…ねじれるような力が骨に働いたときに起こる。

 

この他に、骨折線(骨折した箇所をレントゲンで撮影したときに映る線)や、骨折した骨の箇所などによって分類することができます。前者では粉砕骨折(複雑骨折)、後者では関節内骨折(骨軟骨骨折)などが当てはまります。また、若木骨折のように、子供にみられるタイプもあります。

骨折の診断・治療法・リハビリ

診断

骨折かどうか診断する場合、症状を確認し、レントゲン検査を行います。ただ、なかにはレントゲン検査では分かりにくい骨折もあるため、その場合はCT検査やMRI検査も用いられます。

治療

骨折の治療法は保存療法手術療法に分けられます。

保存療法

骨折した場合、固定する前に骨折によって生じたズレをできるだけ元の状態に戻す必要があります。徒手整復(手技によって元の状態に戻すこと)牽引法(骨折した箇所を器具で引っ張る)で対応します。この2つの方法でで十分な整復位が保てない場合は、後述する手術を行う場合があります。

その後、ギプスや副子(添え木)、コルセットなどで骨折部分を動かないように固定し、骨がくっつくのを待ちます。骨がくっつくまでに要する時間は、骨折の種類や折れ方によって異なります。

痛みに対しては、消炎鎮痛剤を用いて緩和することもあります。

手術療法

ズレの大きな骨折や開放骨折などは、手術で骨折部を固定しなければなりません。その場合は、ネジや釘、プレートを使って骨折部を直接固定します。

リハビリ

固定している間は、動きが制限されるため、筋萎縮関節拘縮(関節が固くなること)のリスクがあります。また、骨折した箇所によってはベッドで安静にしなければならないため、肺炎尿路感染症を起こす恐れがあります。

上記のような症状・疾患を予防するためには、早くからリハビリに取り組む必要があります。ただ、頑張りすぎるとかえって痛みが出て逆効果の場合もあるため、医師や理学療法士の指示に従いながら臨みましょう。

まとめ

骨折といっても、見た目で明らかに折れたとわかるものから、疲労骨折のように知らず知らずのうちに折れていたケースがあります。状態によって症状や治療法、治療の緊急度は変わってくるため、「痛みがなかなかひかない」「むしろ痛みがひどくなる」「内出血してきた」など気になる場合は放置せず整形外科を受診しましょう。