指の怪我の中で、「突き指」は多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。スポーツをしているときなどによく起こりますが、「突き指をしたときには、引っ張ると良い」という話を耳にしたこともあるでしょう。しかし、それは本当なのでしょうか?また医療機関を受診すべきか迷う方もいるかと思います。今回は怪我の中でも起こりやすい突き指について、症状や応急処置、やってはいけないことなどについて紹介します。
突き指とは
指先に物が当たったり、引っかかったりして衝撃を受けて起こる怪我の総称を、突き指といいます。ボールを使うスポーツなどでよく起こります。
症状
衝撃を受けた力の強さと方向、指先の部位などによって症状は異なります。
- 関節に腫れと痛みがある
- 指先が曲がって変形する
- 指先を完全に伸ばすことができない
- 指がグラグラと不安定になり、横に曲がっている
突き指の応急処置は
- すぐに安静にする
- どの指のどの関節が怪我をしているか確認する
- 変形がないか調べる
- 痛みがあるときは、無理に動かさない
- 痛みのある指の全体を冷やす
- 固定する
指を冷やすときのポイント
洗面器やボールなどに氷水を張って、直接指を入れて冷やします。入れ物がないときは、ビニール袋に氷を入れて、指を挟むように冷やしましょう。指を冷やす際には凍傷に注意してください。くれぐれも氷で直接患部を冷やしたりすることは避けましょう。氷がなければ流水でも結構です。テーブルやいすの上に指を置いて、患部を心臓より高い位置にセットします。
怪我をしたときから病院にかかるまでの間に行う応急処置として覚えておきたいのが、RICE処置です。RはRest(安静) 、IはIcing(冷却)、CはCompression(圧迫)、EはElevation(挙上)です。詳しくは、「長く続く打撲の痛み、応急処置と病院受診の目安は?」をご参照ください。
指を固定するときのポイント
指の関節が変形していたり、骨折が疑われたりするときは、適切なサイズの副子(関節や骨折部などの患部を安静にするために使われる固定器具)を当てて、伸縮性包帯やテープで固定します。
伸縮性包帯やテープを使用して固定する際にはくれぐれも締めすぎに注意をしてください。あくまでも添えてあげることが大事ですので、締めすぎると指先(末梢)の血流不全を起こしてしまいます。
してはいけないことは

突き指は関節の周りの組織の損傷です。無理に引っ張ることでかえって悪化させてしまうので、安静を保つように気を付けましょう。
- 指をむやみに引っ張る
- 患部を揉む
突き指の治療
軽症であれば、痛み止めの内服や軟膏、貼付剤で1~2週間程度で改善します。指先用の副子を使ったり、テーピングを行ったりして固定するケースもあります。固定期間は病態により様々です。しかし、無駄な長期間の固定は指の関節の動きの制限を引き起こしてしまいますので、病態を正確に把握し、早期に可動域訓練を開始することが非常に重要です。
指先を突き指して、指を伸ばす腱が切れて指先が伸びなくなってしまうと6~8週間くらい固定をしなければならないケースもあります。骨折をした場合は、手術で骨折を元の位置に戻してから鋼線で骨折部の固定を行うケースもあります。
医療機関を受診する目安は
指に少しでも痛みや腫れ、変形があるときは、正確な診断と適切な治療が必要になります。整形外科を受診しましょう。
- 指が腫れて痛む
- 指が短くなったように見える
- 指を曲げにくい、曲げられない
- 指が曲がったまま動かない
- 指を動かせない
また、以下の部位に怪我や特有の症状が現れた場合は、以下の状態、病態が考えられます。第1関節、第2関節、第3関節それぞれがおのおのの関節の特性をもっているため、突き指をした際に起きやすい病態は様々です。
第1関節(遠位指節間関節、えんいしせつかんかんせつ、DIP関節)
第1関節が腫れて曲がって、伸びなくなっているときは、「マレット指」の可能性が考えられます。指を伸ばす腱が切れてしまった、または、その腱が骨についているところで指先の骨(末節骨)が折れてしまった可能性があります。関節がずれている時には脱臼している可能性もあります。また骨折と脱臼を同時に併発しているケースもあります。
第2関節(近位指節間関節、きんいしせつかんかんせつ、PIP関節)
第2関節が腫れて内出血をしているときは、PIP関節の中節骨(指の2番目の骨)、基節骨(指の3番目の骨)が折れてしまっている可能性があります。また、関節の横の痛みが強かったり、指の向きが変だったりする時は脇の靱帯を損傷している可能性もあります。第1関節同様脱臼を伴う可能性もあります。
第3関節(中手指節間関節、ちゅうしゅしせつかんかんせつ、MP関節)
第3関節で起きた突き指で、指の付け根の部分が腫れている時は、MP関節の基節骨(指の3番目の骨)、中手骨(手の平の骨)が折れてしまっている可能性があります。また、同様に指の向きが変な時は脇の靱帯を損傷している可能性や脱臼を伴う可能性もあります。指が曲がったまま動かないときはロッキングという病態が起きていることもあります。
ロッキングの整復はコツがいりますので自分では戻さないようにしましょう。
まとめ
突き指はボールを使うスポーツなどで指に強い力が加わると、起きやすい怪我です。主な症状は指の腫れや痛みですが、ひどい場合は指が変形することもあります。応急処置として患部を動かさないように固定して、冷やしましょう。その後整形外科を受診しましょう。