日本語では「空腹」というと、単にお腹がすいていることを指しますが、英語で「空腹」を意味する「hungry」には「餓えた」「不毛の」という意味もあります。

英語の「hungry」は非常に空腹状態にある人の心理をよくとらえているように思います。空腹状態はよい意味でも悪い意味でも体と心にさまざまな影響を与えることが英単語の意味からよくわかりますね。

この記事では極度の空腹が与える影響と、理想的な食事の間隔、飢餓状態を解消すると言われているチートデイについてお話したいとお思います。

目次

空腹はどんな影響がある?

空腹の体への影響と言えば、「血糖値」の変動が有名だと思います。血糖値は空腹のときに下がり、食事をすると上昇します。食後、血糖値が上昇するのは生理現象ですので、ある程度は当然と言えますが、この上昇率が高いことを「食後高血糖」と呼び、糖尿病予備軍として知られています。

このように、食前・食後の血糖値が高いことはよくありませんが、逆に空腹によって血糖値が下がりすぎてしまうと「低血糖」となります。糖尿病患者が空腹を訴えて倒れてしまうことがありますが、これは低血糖が原因で、場合によっては命に関わることもあります。

一方で、食事と食事の間の時間が短いと、胃腸が休む時間がないため1日中、何かを食べて過ごすことも体のためにはよくないと言われています。

食事のタイミングはどのように考えればよいのでしょうか。

食事時間はどのくらい空けてもよい?

食事は1日3回食べるべき、1日1回のほうが体によいなど、さまざまなことが言われています。

健康的なダイエットの観点からは、食事と食事の間を6時間程度あけて、1日3回食事をするのが健康的であるとする、すなわち3回の食事を12時間以内で食べるのがよいとされる説が有力です。

この考え方に添って食事をするためには、たとえば、朝6時→昼12時(正午0時)→夕6時に食事を摂ることになり、夜から次の朝ごはんまでは12時間、時間が空くことになります。

夜は体を休める時間ですから、胃腸も休めるためにこの時間配分がよいとされています。ただし、これはあくまで机上論です。実際には朝6時→昼12時→夕7時のように、13~14時間以内に1日の食事を終えられていれば、理想的だと考えてよいと思います

ダイエットの「チートデイ」は本当に役に立つ?

チートデイ

最後に、よくいただくご質問にお答えします。「チートデイ」は本当に停滞期を乗り越えるために役に立つのか?というものです。

「チート」は英語では「cheat」。「ズルをする」という意味です。
チートデイはすなわち「ズルする日」。

ダイエット中、体が飢餓状態になっているため、食事を摂って「ズル」をすれば飢餓状態が解消されて停滞期から脱出できるというのが、チートデイを推奨する人たちの意見のようです。

私のこの「のようです」の言葉でお気づきの人もいると思いますが、プロである我々の目から見ると「何を考えているのかな?」といった印象なのです。

体重を下げたいと考えることは必ずしも悪いことではありませんが、体重を下げたいからと言って飢餓状態まで我慢している段階でその方法は失敗に終わります

もし、医師から指導された、ボクシングや柔道のように体重による階級があるスポーツをしていて減量が必要だというようなことがあっても、飢餓状態まで追い込むことはしません。

医師から指導された場合は、もともとの目標体重はBMI22の理想体重よりも重く設定されることも多いですし、スポーツのための減量の場合は飢餓状態まで追い込んでしまうとか体力がなくなってしまうので、減量に成功しても試合には負けます。

そもそも「ズルをする日」を作りたいと思うようなダイエット方法は間違っているということです。

実際「cheat day」を学術論文で検索しても、動物実験の結果を人間でも同じ結果が出るとして推奨している例がほとんどである(Intermittent fasting: the science of going without)という程度の記載があるだけで、人間に応用できる方法だという記載はどこを探しても見当たりません

ほかにもチートデイの出典先を探してみたのですが、どこにも見当たらず、なぜこのような考え方が生まれたのかさえ、分かりませんでした

人間は誰しも辛いことは苦手です。だからこそ「ズルい」方法があれば知りたいと考えるものです。しかし、ズルい方法のほとんどは何らかの落とし穴があるものです

ダイエットは特別な方法ではなく、日々の営みの中で自然に無意識にできる作業を健康的な人が行っているものに近づけることで自然と目標体重を目指していくのがもっとも体に負担がかからず、リバウンドもしづらい方法なのです

もしかすると、この「普通に生きているのにダイエットできる」というこの方法が、「世界一ズルい」ダイエット方法かもしれませんよ。