友人がピルを飲み始めた。そのようなことを聞くと、心配になる方も多いと思います。たしかに昔のピル、いわゆる経口避妊薬は副作用も強く、安全とは言えないものでした。しかし、最近のピルは低用量化が進んで、飲み方さえ守っていれば安全なものになっています。今回は、ピルによって避妊が可能になる原理と、正しい飲み方について紹介します。

目次

ピルによる避妊の原理

ピルに含まれる成分は、排卵後に放出されるホルモン、卵胞ホルモンと黄体ホルモンと呼ばれるものです。この2つは通常、排卵後に形成される黄体から放出されます。そして、卵胞ホルモンと黄体ホルモンには、次の月経まで排卵が起こらないように排卵を抑制する効果があります。

排卵が起こらなければ、妊娠することはあり得ません。そこで、これらのホルモンを摂取により排卵をおさえるというのが、ピルの基本原理です。他にも卵胞ホルモンと黄体ホルモンには子宮内膜の組成変化や子宮頚管粘膜の組成変化といった作用もありますが、メインの作用としては排卵をおさえることだと考えれば良いでしょう。

ピルの飲み方と種類

薬の種類-写真

正しく飲み続けることが大切

ピルを服用する上で一番大切なのは、正しく飲み続けるということです。正しく飲み続けていれば、妊娠する確率は1%よりもはるかに低くなります。完璧でない理由は、下痢などを起こしてピルが上手く吸収されない場合があるためです。ただし飲み始めて最初の1週間や、24時間以上の飲み忘れをしてしまった場合には、妊娠の危険があります。

また、ピルを飲んでいても生理は起こり、出血も起こります。ピルは21日間飲み続け7日間休薬する(7日間の休薬期間中も避妊効果は継続されます)というサイクルを繰り返しますが、その7日の間に生理が来ます。つまり、飲んでいても排卵が起こっていないだけで生理は続いているので、ピルをやめればいつでも妊娠ができるというわけです。

ピルには、21錠入っているタイプと28錠入っているタイプがあります。28錠タイプの最後の7錠はプラセボ(偽薬)と呼ばれ、薬用成分のまったく入っていないものです。これは、休薬期間が明けた時にピルを飲み忘れるのを防ぐために入れられています。つまり、ピルはそれだけ正しく飲むことが大切なのです。

もしもピルを飲み忘れてしまったら?

もしもピルを飲み忘れてしまった時は、1度休薬して次のサイクルから飲み始めるという方法でのみ対処できます。短時間であっても、飲み忘れて一瞬ホルモン濃度が落ちた瞬間に排卵が起こり、妊娠を起こす可能性もあります。

「アンジュ」というピルの場合、ピルを飲み始めてから1年以内の場合、飲み忘れによって避妊に失敗する確率は9パーセントもあります(これは薬剤師用の薬の説明書である添付文書にも書かれています)。

ピルの種類

次にピルの分類についてですが、一相性三相性という分け方が一般的です。

一相性の場合、ピル(偽薬でないもの)にはすべて同じ量のホルモンが含まれています。一方、三相性の薬の場合には7日ごとに含まれるホルモン量が異なっています。ホルモンというのは、周期があり、常に一定量が出ているわけではありません。つまり、三相性のピルをある程度自分の身体の周期に合わせて使うことによって、ピルによる体調不良を抑えることができます。

ピルによる避妊のメカニズムと正しい飲み方-図解

まとめ

ピルは排卵を促すホルモンをコントロールして避妊を実現する薬で、その避妊率は100%に近いです。しかし、正しく飲まなければその効果は保障されません。薬の服用は面倒と思われる方もいることと思いますが、妊娠は人生を大きく変える出来事です。上手にピルを利用し、ご自身の人生をしっかり計画する一助としてください。