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残念ながら、何らかの理由で歯を失ってしまった…あなたはどうされますか?

そのままにしていても支障がない、と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの場合は何らかの形で歯を補ってあげることが望ましいです。なぜなら、歯は1本1本がその位置にあることで果たしている役割があるからです。1本でも欠けると、他の歯が移動したり傾いたりしてしまい、噛み合わせや歯並びなどのバランスが崩れてしまいます(下図レントゲン参考)。そしてそれは、元通りには戻りません。

この記事では、一般的に「インプラント」と呼ばれている歯科治療について紹介します。

歯が移動したレントゲン写真

↑歯が失われた箇所に向けて、周囲の歯が移動している(篠田歯科さまより提供につき転載禁止)

インプラントは人工の歯根!?

本来インプラントとは、体内に埋め込む医療機器や材料をさし、心臓のペースメーカーや人工股関節もインプラントの一種です。歯科におけるインプラントはデンタルインプラントといって、顎の骨の中に埋め込む人工の歯根のことです。治療では、埋め込んだ人工歯根のうえに歯を作ります。

例えば、虫歯などで歯の頭の部分がなくなっても、根の部分が残せる状況であれば、そこに土台を建てて歯を作ることができます。いわゆる差し歯というものですね。しかし、根が残せない状況だと、このような治療をすることはできません。そんな時に、人工の歯根を埋めてあげることで、差し歯のように上に歯を作ることができるようになるわけです。

人工の歯根にはチタンチタン合金が多く用いられ、これらは体に異物として認識されず馴染み(生体親和性が高い)、咬合力に耐えられる強度もあり、骨と結合してくれるという性質があります。

インプラントの構造

インプラント写真

インプラントは、一体どんな構造になっているのでしょうか。

差し歯の場合と照らし合わせて考えてみるとそれぞれイメージしやすいかもしれません。

  1. 「フィクスチャー(インプラント本体)」…顎の骨の中のねじのような部分
  2. 「アバットメント」…インプラント本体と被せ物をつなぐ土台にあたる部分
  3. 「上部構造」…上物の被せ物の部分

歯の根に相当するねじ、そこに建てる土台、そして被せ物という構造になっており、インプラントはこの3つの部分からなっています。大まかには差し歯と似ていると考えると、少し身近に感じられますよね。

入れ歯やブリッジと比べた場合のインプラント治療のメリット

根管治療の進め方-図解

昔から、歯を失った部位には入れ歯やブリッジという治療が行われてきました。インプラント治療は入れ歯やブリッジに代わる第3の選択肢です。ここでは、入れ歯とブリッジと比較した場合のインプラント治療のメリットについて解説します。

  • 見た目が良く、自然である
  • 違和感が少ない
  • 自分の歯と同じような感覚で物を食べることができる
  • 咀嚼効率(物を噛み砕く力)が自分の歯の80と高い。(義歯は30%)
  • 隣の歯に負担がかからない
  • ブリッジのように他の歯を削る必要がなく、ブリッジが適用できない症例にも対応できる
  • 義歯のように浮き上がったり外れたり、食事の度に外して洗うという煩わしさがない
  • 義歯と比較すると、留め金もなく、装着感が良いので発音に影響がない

ブリッジは健康な歯を削る必要があるので、土台となる歯の寿命を短くさせてしまうことがあります。部分義歯は違和感が強く、自分の歯と同じようには物を食べることができないこともあります。

その点、インプラントは快適性などの要望にも応えられる事が多い治療と言えます。

入れ歯やブリッジと比べた場合のインプラント治療のデメリット

  • 保険適応外の自費治療になるので高額である
  • 骨に穴をあけて、インプラントを埋め込むという手術が必要になる
  • 手術から上部構造装着まで治療期間が長くなる
  • 治療後のメンテナンス(定期検診や正しい歯磨きなど)ができない方には向かない
  • 顎骨の骨量が十分でない場合など、インプラントができないケースもある
  • 糖尿病などの持病がある場合、感染に対するリスクが高いので、あらかじめ血糖値のコントロールが必要

最も気をつけなければならないのは、治療後のメンテナンスができないような場合です。

インプラントのトラブルは、その多くがメンテナンス不良によるものです。インプラントもご自分の歯と同じように、磨き残したプラーク(細菌)が原因で炎症を起こします。入れたら終わりではないのです。

特にインプラント埋入後の1年間は、その後のインプラントの持ちを左右する大事な期間です。

インプラント治療を受ける前に、これらの点は心しておいてくださいね。

まとめ

いかがでしたか?インプラントとはどんなものなのか、またそのメリット・デメリットをご理解いただけたと思います。歯を補う方法をご検討されている方、インプラントをご検討されている方は、これらの点を念頭に置いて考えてみてくださいね。