関節リウマチはいまだ原因が充分に解明されていない病気ですが、悪化すると様々な合併症を起こすことが分かっています。早期に発見することで合併症を予防し、悪化させないためのセルフケアも重要です。関節リウマチの検査、治療、セルフケアについて解説します。

目次

関節リウマチとは

関節リウマチは、本来であれば自分の体を守るための働きである免疫システムが、自分自身の組織を異物と見なして攻撃してしまう自己免疫疾患のひとつです。

関節の腫れ、痛み、朝のこわばりなどの典型的な初期症状が見られるほか、倦怠感や微熱が続き検査をしたところ関節リウマチと診断される場合もあります。

関節リウマチのメカニズムと症状については「関節が腫れて痛い!関節リウマチってどんな病気?」をご参照ください。

リウマチかなと思ったら?

関節の腫れや痛み、朝のこわばりなどの関節リウマチを疑う症状がある場合は、リウマチ科や膠原病科などの専門医への受診をします。整形外科や内科でもリウマチの検査は可能ですが、早期の適切な診断により病気の進行を抑制すべき必要があること、鑑別すべき病気が多いことから、診断の時点ではリウマチ専門医にかかるようにしましょう。

リウマチ科と標榜していても必ずしもリウマチ専門医とは限りません。治療については、通院の利便性なども考慮しつつ、専門医のいる診療所、病院を選択するのがよいとされています。一般的にはリウマチ・膠原病は内科系リウマチ専門医を、リハビリメインの場合は整形外科医系リウマチ医が良いとされています。

リウマチの検査

血液検査

血液検査では、体内の炎症反応、リウマチ因子や抗体の有無を調べます。先にも述べたように、リウマチは自己免疫疾患のひとつであるため、血液検査により体内で異常な免疫反応や他の膠原病の合併や炎症が起こっていないかどうか確認するのです。

1.CRP(C反応性蛋白)

炎症の有無や程度を知る上で不可欠な検査です。CRPはかぜや気管支炎、腎盂腎炎などの感染でも高くなる場合があります。関節リウマチの場合では、CRPは診断の補助、さらには治療中の病状の把握のために行われる検査です。

2.赤沈(または血沈)

CRPと同じく、炎症の検査として広く行われます。

3.リウマトイド因子(RF)

関節リウマチの診断のために行われる検査ですが、健常な人やシェーグレン症候群などのほかの膠原病や肝炎、結核などの疾患の場合にもが上昇することがあり、この検査だけで診断が確定することはありません。

4.抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)

関節リウマチの早期診断に役立つ検査です。抗CCP抗体が見つかった場合は、ほぼ関節リウマチと診断されますが、関節リウマチ患者さんの中には陽性とならなない人もいます(感度は70%程度)。

画像検査

関節リウマチでは、背骨・腰骨を除く体中の関節に炎症が起こります。そのため、画像検査により関節に骨破壊や炎症がないかどうかを確かめます。

1.レントゲン検査

骨や関節の状態を見るためや、加齢によって起こる変形性関節症などの他の疾患との区別のために検査を行います。関節リウマチだと骨びらんという骨の欠損がある場合があります。

2.MRI検査

MRI検査はレントゲン検査よりも詳細な異常が発見できるため、レントゲン検査で異常がなく関節の変形のない早期診断に有用な検査です。

3. 関節エコー検査

関節エコー検査では、関節内の炎症の有無と程度、びらんなどを確認します。レントゲン検査で異常が無い場合でもエコー検査では関節内の滑膜炎が確認できます。

リウマチの治療

1週間の薬

 

関節リウマチの治療の基本は薬物による治療です。

かつては、なるべく副作用の少ない薬を選ぶことを念頭に置き、様子を見ながら少しずつ強い薬を投与していくステップアップが主流でした。しかし、そのような投与方法が、症状の悪化を食い止めるうえではあまり有効でないことがわかりました。

現在では、はじめにメトトレキサートなどの抗リウマチ薬を使用して寛解の状態を目指し、効果が十分でなければ生物学的製剤などを追加する方法がとられるようになっています。

薬物治療

1.抗リウマチ薬(DMARDs)

関節リウマチの免疫異常に直接働き、活動性を抑える薬です。薬剤の作用機序によって数種類の薬剤がありますが、中でもメトトレキサート(MTX)は治療のアンカードラッグと呼ばれて基軸薬として使用されており、内服開始後4週間から数ヶ月かかって効果がでる遅効性の薬剤ですが、早期に飲み始めることで異常な免疫を調整して骨破壊など病気の進行を抑えます。

2.非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)

鎮痛・解熱・炎症を抑える効果を持つお薬の総称で、いくつかの種類があります。リウマチの進行を抑える効果はなく、関節炎による痛み・腫れの症状を抑えるためだけに内服されます。

非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、胃腸障害や腎障害などの副作用が出現することがあります。副作用を早めに見つけるためには、定期的な検査が大切です。

3.ステロイド薬

炎症を強く抑える作用があり、痛みや腫れを抑える効果がある薬ですが、骨破壊を抑制することはできません。ステロイドの投与は一時的、最小容量として投与は慎重に行います。ステロイドを漫然と長期間内服することは骨粗鬆症、糖尿病、高血圧、高脂血症などの副作用が出現することがあるので注意が必要です。投与する場合には患者さん自身も、薬の性質・使用方法をしっかりと理解したうえで、主治医の指示のもとで使用するようにしましょう。

4.生物学的製剤

リウマチの症状の発生に関わっているサイトカインを抑制するためのお薬です。関節リウマチに対して高い治療効果を発揮します。骨破壊や変形を予防することを実現できますが、抗リウマチ薬に比べて金額が高価であることから、処方に際しては主治医の先生と十分に話し合ったうえで、費用対効果やライフスタイルを考慮した投与をすることが望ましいです。

手術療法

関節リウマチが進行し、関節の変形によって日常生活が困難な場合に、機能を回復するために手術が行われることがあります。

リハビリテーション

関節の腫れや痛みにより動かすことが困難になると、筋肉が萎縮し、さらに症状が悪化していきます。こうした症状の悪化を抑えるためにリハビリテーションが行われます。

ホットパックで温めたり、関節の運動のほか、不安定な関節を装具によって保護することもリハビリテーションに含まれます。

合併症に対する治療

関節リウマチはは貧血や肺炎シェーグレン症候群などの合併症を起こしやすく、これらの兆候がないか経過観察を必要とします。

必要に応じて、呼吸器科や眼科医などと連携を取りながら治療が行われます。

リウマチを悪化させない日常生活上の注意点

赤いスニーカー

関節を冷やさない

関節リウマチの痛みやこわばりを抑えるためには、関節を冷やさないようにしましょう。

手指や手首に症状がある場合、パソコンや読書などで手を動かさない状態で室温にさらされていると、血行不良により冷えが増強します。

ハンドウォーマーやアームカバーなどで保温し、冷えを予防しましょう。

長く続いている慢性の関節痛の場合には温湿布などが効果的なこともあります。温泉などにゆっくり入る湯治は温熱効果とリラックス効果が期待できます。

安静と運動のバランスを

関節リウマチは関節の痛みや腫れだけでなく、倦怠感や微熱などの全身症状も伴い、悪化すると肺炎や貧血、骨粗鬆症などの合併症を起こします。

症状が強い場合は無理をせず、しっかりと休息をとることが必要です。

しかし、一方、安静にしすぎて身体を動かさないことも、関節の拘縮や筋肉の萎縮を起こしてしまいます。関節の炎症や全身症状が治まれば、積極的に運動を行い骨粗鬆症の予防しましょう。

柔らかいボールやスポンジを握る手指の関節運動のほか、ウォーキングなどの全身運動も効果的です。

関節に負担をかけない生活の工夫

手指や手首に症状がある場合は、ドアの開閉や水道の蛇口、キャップの開け閉めなどがしづらくなります。また膝や足に症状があれば、立ち座りや歩行がスムーズに行えないなど、日常生活の様々なシーンで支障が出てきます。

こうした不自由をサポートするための自助具として、持ちやすい箸や握らないタイプのレバー式のハンドル、着替えの際のボタン掛けや靴下を履くことをサポートする道具などもあります。

また、ベッドやイスの高さを調整したり、トイレや浴室には手すりを付けたりしておくことで関節に負担のかからない生活環境を作りましょう。

まとめ

関節リウマチは、長期の服薬や医療機関での継続的な検査が必要となる一方で、正確な診断により早期発見し、適切な治療を受けることで、症状の進行を抑え寛解状態にすることも見込めるようになってきています。そのためにも、診断の際にはリウマチ専門医にかかることが重要です。

また治療で使われるお薬は、最近では有効性の高いものが登場していますが、いずれも有効性に個人差があったり副作用が出現するものがあります。また、生物学的製剤など値段が高価なものもあります。患者さん自身もお薬の性質を十分に理解し、リハビリなども組み合わせながら、個々のライフスタイルに適した治療法を、主治医の先生と一緒に選んでいくことが理想です。