下痢や便秘が続いて熱もあって、といった場合には病院を受診する方が多いでしょう。しかし、「たべすぎ」「のみすぎ」「胃のもたれ」「むかつき」といった症状の場合、テレビCMでお馴染みの胃薬を購入する場合もあることと思います。

ところでこの「胃薬」、一つ常備しておけば上記の全てに効く、と思っていませんか?確かに、様々な成分を配合しており多くの症状に効くようにできている胃薬は多々あります。一方、細かい症状に狙いを定めた胃薬も、数多く販売されているのです。

目次

「胃薬」の有効成分にはこんなに種類がある!

ここからは、胃薬の有効成分を効き目ごとに紹介していきます。なお、記事内で挙げる有効成分は一例ですので、参考までにご覧ください。

胃粘液の分泌を促進する

胃粘膜の表面は、胃粘液という分泌液によって胃酸などの刺激から守られています。この胃粘液を増加させることで胃粘膜を守るのが、テプレノンという成分です。胃もたれ、胸焼け、食欲不振などの症状に有効であるほか、胃潰瘍の治療にも用います。

胃粘膜を修復する(胃粘膜保護・修復剤)

胃酸によって傷ついてしまった粘膜を修復する成分です。銅クロロフィリンカリウム、スクラルファートなどが挙げられます。胃の痛みを感じるときは、この成分が含まれている薬を選択すると良いでしょう。

胃酸を中和する(制酸剤)

胃酸が分泌されすぎてしまった時に、胃の中の酸性度を整えることで胃粘膜への刺激を抑える成分です。炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが使用されます。

胃の働きを高める(健胃剤)

ウイキョウ、センブリ、ソウジュツなどの漢方(生薬)が用いられることが多いです。食欲不振や胃もたれ、お腹の張りなど、胃の働きが弱まっていると感じられたときに役立つ薬です。

消化を助ける(消化剤)

唾液や胃液などに含まれる消化酵素の働きを助ける成分です。消化不良や食欲がないとき、食べすぎてしまったときなどに効果を発揮します。リパーゼ、ビオヂアスターゼなどといった成分があります。

胃酸の分泌を抑える(M1ブロッカー・H2ブロッカー)

胃酸の分泌を促すM1受容体やH2受容体をブロックすることで胃酸の分泌を抑えるのが、「M1ブロッカー」「H2ブロッカー」と呼ばれる成分です。胃の痛みや胸焼けに効果的です。M1ブロッカーにはピレンゼピン塩酸塩水和物などが、H2ブロッカーにはファモチジン、シメチジンなどがあります。

基本的にはH2ブロッカーの方が強い薬で、以前はH2ブロッカーは処方せんがなければ使用できない薬(医療用医薬品)でした。現在、一部の製品は市販薬として販売されていますが、服用方法や服用期間に制限があるため、用法・用量を必ずよく確認してください。

胃痛をおさえる(鎮痛鎮痙剤)

キリキリとする胃痛や、急な胃痛に有効なのが鎮痛鎮痙剤(ちんつうちんけいざい)です。胃の活動を司る副交感神経に作用して痛みを抑えます。臭化チメピジウム、オキセサゼインなどの成分が用いられます。

様々な症状に対応できるのは「総合胃腸薬」

上記のような成分を組み合わせて配合しているのが総合胃腸薬です。どの成分を主としているかにより作用は異なりますので、やはり自分の症状と照らし合わせながら選ぶことをおすすめします。

胃のトラブルに漢方は有効?

カプセル剤

お腹の調子が優れない日々が続き、改善するための薬を探すとき、選択肢の一つに「漢方」が入る方は少なくないでしょう。漢方では、「胃腸」全体で一つの機能を持つと捉え、体質や症状・原因に合わせて薬を選びます。

例えば体力が中程度の場合、「胃腸が弱く、食欲不振の症状がある」という方には六君子湯が良いでしょう。「ストレスから胃痛が来ている(神経性胃炎)」という方には、半夏厚朴湯が良いかもしれません。また、同じ「便秘がち」という症状であっても、体力のある方であれば大柴胡湯、体力が中程度以下であれば桂枝加芍薬大黄湯というように選び方が変わってきます。自分で選ぶのは難しい、という方は薬剤師さんに相談してみると良いでしょう。

最後に

長く続く胃もたれや胃痛は、生活の質を下げる原因となってしまいます。市販薬にも非常に様々な種類があるため、自分の症状にあった薬を選ぶようにしましょう。

また、実際に自分に合った胃薬を購入しようと思ったら、自己判断するのではなく、薬剤師さんと相談して選ぶことをおすすめします。ご自身で選べない時には、上記を「キーワード」として薬局・薬店で相談してくださいね。

また、長期の胃薬(市販薬)の自己使用は、胃痛や胃もたれといった症状の改善により、根本にある胃潰瘍や早期の胃がんなど重大な疾患の症状を隠してしまうことがあります。症状が長引いたり、薬の服用をやめるとぶり返したりするようであれば、お近くの消化器内科で相談するようにしてください。