食べ過ぎ、ストレス…胃の痛み自体は、それほど珍しいものではないでしょう。しかし、突然激しい痛みがでたり、慢性的に痛みがでたりすることがあれば注意が必要です。普段の胃痛ではなく、病気のサインかもしれません。その詳細について、今回は説明していきます。

目次

胃の役割は?

胃のメカニズム-図解

皆様もご存知の通り、食物を消化することが胃の役割です。胃の粘膜からは、たべものを消化するはたらきのある胃液が分泌されています。強い酸性を持ち、大多数の細菌は胃の中で殺菌されます。しかし、自身の胃壁は消化されません。胃粘液が粘膜の上に薄い粘液の層を作り、胃液から自身を守るためです。
胃があるのは、お腹の中央部からやや上の、みぞおちあたりです。

痛みの種類

胃の痛みの原因には、大きく分けて2種類あります。

  • 食べ過ぎ:胃が膨らみ、お腹が突っ張ることで痛みを感じる
  • 胃に異常が起きている:焼けるような・ものを食べると痛む、というように短時間の痛みが多い

食べ過ぎて胃が痛む、であればよいのですが、病気が関係してきていることもあります。

考えられる主な病気

胃の痛みを引き起こす病気は、いくつかあります。今回は、主な病気7種類をご紹介します。

下記のような病気かな?と疑われるようでしたら一般内科消化器科胃腸科かかりつけ医へ受診されることをおすすめします。

消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性胃粘膜病変、NSAIDs(消炎鎮痛剤)潰瘍)

胃潰瘍十二指腸潰瘍などはその名の通り、胃や十二指腸の粘膜が、胃液によって傷つけられた状態をいいます。

症状としては、胃の痛み胸やけげっぷ胃のむかつきタール便(黒い便)吐血空腹時のみぞおちの痛みなどが出てきます。個人差があり、症状が出ない場合もあります

原因は、ピロリ菌薬の副作用・胃酸の過分泌・ストレスなどとされています。胃内視鏡や胃透視(バリウム検査)で検査を行います。

胃炎

胃が痛む胃炎には、2種類あります。

急性胃炎

胃粘膜に、突然の炎症が起こった状態のことです。日常的に、一番起こりやすい病気とされています。症状は、胃の痛み不快感・むかつき・おう吐・食欲低下・吐血が起こります。多くは、安静にして食事に気を付けて、薬を飲めば2~3で治る病気です。

原因は、ウイルスの感染・食中毒・刺激の強い食べ物の摂りすぎ・暴飲暴食・アルコールの摂りすぎ・薬の副作用・アレルギー・ストレスと様々です。血液検査や腹部超音波・胃内視鏡検査が行われ、他の病気と鑑別します。薬を飲んでも胃の痛みが治まらない場合や激しい嘔吐や腹痛・高熱がある場合は、消化器科か胃腸科のある病院を受診することをおすすめします。

神経性胃炎

精神的な不安や苦痛、ストレス、寝不足、仕事による疲れが原因で、引き起されます。胃の症状は激しい胃痛・吐き気全身倦怠感・食欲不振・体重減少胃もたれ・げっぷ。これに加えて、心身症の症状(ふらつき・不眠・不安・抑うつなど)もみられます。

血液・尿検査、胃内視鏡、腹部超音波、便に血が混じっていないか便潜血検査がされます。これらの結果に異常がなければ、内科や精神科医の問診で判断されます。

胃アトニー

胃下垂(胃が正常な位置より垂れ下がっている状態)が原因で、胃の動きが弱っている状態のことをいいます。症状としては胃痛胃もたれ・げっぷ・むかつき・食欲不振・精神疲労・胃が張ったような痛み・すぐ満腹になってしまう、などがあります。バリウム検査で判断されます。

食後に体の右側を下にして横になると、症状が軽くなる特徴があります。

胃アニサキス症

アニサキスという虫が寄生している魚介類を、生や、加熱が不十分なまま食べることでおこる病気です。魚を食べた大体2~8時間後に、激しい胃の痛み・おう吐が起こります(厚生労働省|アニサキスによる食中毒を予防しましょう)。

主な感染原因は、サバ・アジ・イワシ・イカ・サンマなどの海産魚介類を食べることです。原因となるアニサキスを内視鏡下に除去する、あるいは2日ほど我慢すれば、症状はおさまります。

胃粘膜下腫瘍

胃の壁に腫瘍や、隆起ができる病気のことを指します。腫瘍が小さい時は、ほとんど症状がありません。時々腹痛・胃の痛み不快感がおこることがあります。腫瘍が大きくなるにつれて、吐血・下血(肛門から血液が出てくる)の症状が出てくることがあります。内視鏡・超音波検査で発見できるものです。腫瘍が5.1cmを越えて大きくなると、摘出手術が必要になります。

胃がん

日本の死亡数の男性第2位、女性第3位を冠する病気です。症状には胃の痛み・不快感・膨らんだような感じ・胸やけ・げっぷ・吐き気・食欲不振・貧血・体重減少がでてきます。胃がんは、症状では他の病気と区別ができません。

ピロリ菌が原因となっているのではないか、と考えられています。内視鏡検査と病理組織検査で、診断が行われます。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアは、原因となる疾患がないにもかかわらず、慢性的にみぞおちが痛くなったり胃もたれがおきたりする病気のことです。

詳しい症状については「原因不明の胃もたれや胃痛が続くなら。機能性ディスペプシアかもしれません」をご参照ください。

胃けいれん

胃けいれん自体は、病気ではありません。みぞおち部分を中心に突然発症するもので、激しい痛みを伴います。痛みは、数分~2時間ほど続くこともあります。

胃炎だけではなく、十二指腸炎や急性膵炎便秘といった他の部位の病気が原因で、胃けいれんが引き起こされることがあります。

予防するには!

日常的なことから予防できます。胃に負担を与えすぎないことが大切です。

起きてすぐや、寝る1~2時間前にものを食べないことでも予防できます。

アニサキス病に関しては、魚を60℃で一分以上の加熱-20℃で24時間以上冷凍処理することで原因となる虫を殺せます(国立感染症研究所|アニサキス病とは)。生食を避け、加熱したものを食べるようにしましょう。

まとめ

現代社会では、ストレスを感じる場面が多く、不規則な生活になってしまいがちです。胃痛を抱えている方も、少なくないでしょう。

いつものことだから。仕事をしていると規則正しく眠れない。そういって生活改善を諦めることはありません。食事の時にはしっかり噛む。できるだけ三食食べる。このように、少し意識するだけでできることから始めてみてはいかがでしょうか。