かぜ薬や痛み止めを飲んだときに、なんとも胃のあたりが重くなったり、痛くなったりしたことはありませんか?また、病院で痛み止めを処方された時に胃薬が処方されて「なんでだろう」と思ったことはありませんか?

今回は、胃が痛くなる仕組みと痛み止めで胃が痛くなる理由を解説します。

目次

胃痛の仕組み

胃では胃液が分泌されていて、主に食べ物を溶かす胃酸、タンパク質を分解するペプシン、それらから胃粘膜を守る粘液があります。その胃液は1日に約2リットルも分泌されているのです。

胃酸は、金属を溶かすほどの強力な酸で酸性度(pH)は1~2になります(7未満が酸性、7が中性、7より上~14がアルカリ性です)。胃の粘膜にある壁細胞から分泌され、食べ物の消化と共に一緒に侵入した細菌のほとんどを殺菌します

胃酸は、アセチルコリン、ガストリン、ヒスタミンという伝達物質が指令を出すことにより、胃壁から分泌されます。ペプシンは、タンパク質を分解する消化酵素で、胃粘膜にある「主細胞」から分泌されます。粘液は、胃の粘膜が胃酸やペプシンによって自身が消化されてしまわないように、胃粘膜の「副細胞」「粘膜上皮細胞」から分泌され、胃の粘膜を薄い膜で覆い守っています。

どうして胃が痛くなるのか?

胃の中では、粘液が胃酸やペプシンから胃を守って上手くバランスをとっています。しかし、そのバランスが崩れると胃酸が胃を攻撃してしまい痛みが出てくるのです。

つまり胃の痛みは、主に多く出過ぎた胃酸が胃の粘膜を傷つけることで起こります。ストレスや食生活が胃酸過多の原因になることが多く、症状が進むと胃炎や胃潰瘍などの病気になることもあります。また、何らかの原因で胃の中で粘液が減ってしまうなど保護成分の減少によって胃が胃酸に傷つけられることでも生じます。

胃酸が増える

胃酸が増える原因については、「食べ過ぎだけが原因じゃない!胃もたれの原因とは」をご覧ください。

胃の粘液が減少する

アルコールは、上記の記事でも胃酸を増やす原因として取り上げられていますが、実は胃の粘液が減る原因の1つでもあります。他にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症剤)によって胃の粘液が減ることがわかっています。かぜ薬や痛み止めにはこのNSAIDsが含まれていることがあり、その副作用によって胃が痛くなることがあるといわれています。

NSAIDsによって胃痛が起こるわけ

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では、どうしてNSAIDsは胃の粘液が減らしてしまうのでしょう。

炎症や痛みに関係が深い、プロスタグランジンという物質があります。プロスタグランジンは、身体の生命活動を保つために欠かせないものです。体内で作られ、体内のあちこちで様々に作用します。

プロスタグランジンにはいくつかの種類がありますが、その一部は痛みや炎症に関係しています。その働きによって痛みを強めたり、血流増加による腫脹、発赤・熱感、発熱を生じたりします。

その他に胃酸分泌の抑制、胃粘膜血流増加、胃粘液分泌促進(胃粘膜保護)、局所の血流増加など、さまざまな事象に関連しています。

NSAIDsは、プロスタグランジンが作られるのを阻害する(別の物質がプロスタグランジンに変わる過程を邪魔する)ことによって解熱・消炎・鎮痛の効果を発揮します。プロスタグランジンを減らすことで、プロスタグランジンの作用である胃粘液分泌促進、胃酸分泌の抑制なども抑えてしまうので、NSAIDsを服用すると胃痛や胃もたれが生じてしまうのです。

病院で痛み止めを処方されるときに胃薬(胃の粘膜保護薬)も一緒に処方されるのは、痛み止めによる胃への副作用を補うためと考えられます。市販の痛み止めを服用するときにいつも胃が痛くなっていたという方は、この点を踏まえて、胃の粘膜を保護する成分胃粘液分泌促進をする成分の入った胃薬を一緒に用いることをおすすめします。

最後に

風邪薬や痛み止めを飲んだ時に胃痛に悩まされることがある理由が分かったでしょうか。

せっかく抑えたい痛みは無くなったのに、代わりに胃痛に悩まされないように、薬剤師さんとも相談して胃薬を服用するようにしましょう。

また、病気などにより長期にわたってNSAIDsを服用しなければならない場合には、胃酸を抑える薬剤(H2 blocker, PPI)が必要となることもあります。医師や薬剤師とよく相談してみてください。