「指しゃぶりをすると歯並びが悪くなる。」子育て中の方は、きっとこんなフレーズを耳にされたことがあるのではないでしょうか。現代では歯列矯正をする人も多く、お子さんの歯並びについて心配される方も少なくありません。赤ちゃんの時から始まる「指しゃぶり」。いつまで続け、卒業するのかは個人差があり、一人一人違います。一体、何歳ぐらいまでなら指しゃぶりを続けても良いのでしょうか?今回は、いつやめさせた方が良いのか、放って置いても良いのか悩んでしまう、「指しゃぶり」と“歯並び”の関係についてお話していきます。

目次

指しゃぶりは何のため?

そもそも、私達人間が赤ちゃんの頃から自然と「指しゃぶり」をするのは何故なのでしょうか?

赤ちゃんは、生後2~3カ月ごろから「指しゃぶり」(吸啜反射)を示します。お腹の中にいる時からしていることもあるそうです。これは本能的なもので、1~2歳くらいまではごく普通に見られます。

赤ちゃんの「唇に何かが触れると吸う」という本能的な行為は、おっぱいを吸うためであったり、何となく落ち着いたり安心したりするため、そして最も敏感な器官である口で色々なものを確認するためだと言われています。確かに、赤ちゃんを見ていると指だけでなく足までしゃぶったり、掴んだものは何でも口に持っていったりしますよね。指しゃぶりも五感の発達の一過程で、ごく自然な現象です。ですから、この時期に指をしゃぶることについては、全く心配いらないでしょう。

指しゃぶりの原因

それでは、すくすくと成長し乳幼児から幼児になっても「指しゃぶり」をするのはなぜでしょうか。これに関しては、欲求不満、家庭環境、親子関係、単なる癖として残っているなど様々な説がありますので、一人一人理由は違うでしょう。以下に、原因として考えられることを挙げていきます。

指をしゃぶることが習慣になっている

昔からの習慣として、癖が残ってしまう場合があります。

指を吸うことで安心する

おっぱいを吸っていた時のような安心感が得られるため行う場合もあります。

反射行為

本能的な反射行為として口に入ってきたものを吸っていることも考えられます。

ストレス・不満がある

何かに不満や不安がある時、寂しさを感じている時などに現れることがあります。

このように色々なものが考えられますが、取り除ける原因であれば、それを取り除くことで指しゃぶりが治まっていくこともあります。まずは原因となっていることがないか、お子さんをよく観察したり、今までのことを思い返したりしてみて下さい。

指しゃぶりの歯並びへの影響

指しゃぶりを続けていると、一体どんな歯並びになってしまうのでしょうか。一言に「歯並びが悪くなる」と言っても、その乱れ方は様々です。ここでは、指しゃぶりが原因と思われる歯並びの乱れ方について見ていきましょう。

開咬(かいこう)

上下の前歯が噛み合わない状態

上顎前突(じょうがくぜんとつ)

上の歯が前に出た(いわゆる出っ歯)状態

開咬や、出っ歯になると、上下の唇が閉じにくくなってしまいます。上手く口が閉じられなくなった締りのない口元は、だらしない印象を与えてしまうこともあります。

交叉咬合(こうさこうごう)

上下の歯を噛み合わせた時に、上下の歯列が左右にずれている状態

交叉咬合になると、奥歯で物を強く噛んだり、歯を食いしばったりすることができなくなってしまいます。

こうした歯並びの乱れは、見た目だけでなく、「噛む」という役割にも影響を及ぼしてしまいます。一度乱れた歯並びを整えることは、時間も費用もかかりますし、決して簡単なことではありません。親心としては、防げるものは防いであげたいですよね。

指しゃぶりは歯並び以外にも影響する

テディベア

指しゃぶりによって歯並びが乱れることで、それ以外にも影響が出てきてしまいます。

  • 発音:上下の前歯のすき間に舌をいれる癖が生じることが多く、発音が不明瞭で(サ行・タ行・ダ行・ナ行・ラ行など)舌足らずな印象のしゃべり方になってしまいます。
  • 口元が出て上唇がめくれやすくなる:上顎前突(いわゆる出っ歯)により起こります。
  • 正常な顎の発達を阻害する:指しゃぶりなどの悪習癖は、顎の変形など骨格的に影響を及ぼしてしまうこともあります。
  • 口呼吸:口で呼吸するため口内が乾燥してしまい、虫歯歯周病喘息、アトピーのリスクが高くなります。

指しゃぶりは、こうした口腔機能にも様々な影響を及ぼし、お子さんの正常な成長の妨げとなります。

指しゃぶりをやめさせる時期

指しゃぶりは、乳歯の奥歯が生える2歳半~3歳くらいが卒業の目安になります。 4歳半~5歳で指しゃぶりが自然に消えない場合は、歯並びに悪影響が出てきますので、積極的にやめさせるようにした方が良いでしょう。遅くても小学校低学年にはやめさせて下さい。

5歳頃までに指しゃぶりをやめた場合は、歯並びに変化があっても、正常に戻る可能性があります。しかし、永久前歯の生え替わりまで持ち越してしまうと、その状態から戻ることは少し難しくなってしまいます。

まとめ

指しゃぶりは誰もが通る道ですが、卒業時期を誤ってしまうと歯並びに悪影響が出てしまいます。なかなかおさまらない指しゃぶりによって、既にお子さんの歯並びや口元に影響が出てしまっている場合は、早めにかかりつけの歯科医院で相談してみてくださいね。