皆さんは普段呼吸をする時、鼻で息をしていますか?それとも口で息をしているでしょうか。口をぼーっと開いて呼吸をしていると「だらしない」と見えることもありますが、実は、口呼吸はそれ以上に身体によくない影響を与えているのです。今回は、口呼吸が健康に与えるデメリットについて見ていきましょう。

目次

鼻呼吸と口呼吸

まずは、鼻と口、それぞれで行う呼吸の特徴を見ていきましょう。

鼻呼吸

鼻から息を吸うと、繊毛(せんもう)と呼ばれる毛や粘膜がフィルターの役割を果たしてくれます。これらのフィルターは、空気中の細菌やウイルス、ゴミなどを除去してくれることに加え、冬場などの冷たく乾いた空気が肺に直接入らないよう、空気を温め、湿度を与える役割を持っています。つまり鼻は、空気清浄機と加湿器の役目を請け負っているのです。

口呼吸

実は、口は本来、呼吸器ではなく消化器に分類されます。

口で吸った息は、そのまま気管から肺へと入ります。

空気中のゴミや病原体は除去されず、さらに鼻呼吸ほど加湿や加温も行わないため、乾燥した空気が喉へと入ります。そのため、喉や口の中は乾燥し、免疫力が下がってしまいます。これにより、口の中や全身の様々な症状・病気を引き起こすことがあるのです。

口呼吸の影響:口の中のトラブル

まず、唾液の働きを確認してみよう

口の中の健康を守るにあたり、大切な役目を担っているのが唾液です。下記のような働きをします。

  • 粘膜保護作用:ムチンという成分により、舌や頬の内側などを保湿します。
  • 自浄作用:食べかすを洗い流します。
  • 潤滑作用:食べ物に唾液が混ざることで、食塊が喉を通りやすくなります。
  • 緩衝作用:pHを一定に保ち、酸性の環境になって歯が溶けないようにします。
  • 抗菌作用:ラクトフェリンやリゾチームという物質が細菌やウイルスに抵抗します。
  • 消化作用:唾液中のアミラーゼという酵素がデンプンを分解します。
  • 再石灰化作用:虫歯菌が出す酸などにより歯が溶けてしまったとき(脱灰)、唾液に含まれるカルシウムとリン酸が再沈着します。

これらの作用により、体や口の中を守ると同時に消化を助けています。

口呼吸を行うと口の中が乾燥してしまうため、唾液がうまく働かず、様々な支障が出てくるのです。

虫歯

甘いものや酸っぱいものを食べると、歯の表面は酸により脱灰してしまいます。唾液の緩衝作用、再石灰化作用がきちんと働いていれば、虫歯はできにくくなります。しかし口呼吸によって口の中が乾燥すると、再石灰化は起こらず虫歯ができやすくなります。

着色

口呼吸により口腔内が乾燥すると、唾液が食べ物の色素を洗い流すことができません。そのため、歯の着色が起きやすくなります。

歯周病

唾液の殺菌作用や浄化作用が少なくなってしまうため、細菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。

歯周病の病原菌が繁殖し、毒素を出して歯周ポケットが深くなってしまいます。

舌苔・口臭

唾液の浄化作用が働かず、舌苔(舌についた汚れ)が多く付いてしまいます。さらに、舌苔の中に含まれている硫化水素ジメチルサルファイドなど成分が、乾燥していることにより揮発しやすくなり、口臭が出やすくなります。

歯並びへの影響

歯並びは通常、舌などによる内側からの圧力と、口を閉じた際に口の周りの筋肉が歯を締め付ける外側からの圧力とで適正に保たれています。口呼吸で口を開けた時間が長くなると、この外側からの圧力がかからなくなり、内側からの力によって前歯が押し出されてしまうことがあるのです。

特にお子さんではこの影響が出やすいといわれます。

舌の痛み

口呼吸によって口の中が乾燥し、唾液の粘膜保護作用が働かず舌がピリピリ痛くなることがあります。

口呼吸の影響:全身のトラブル

風邪・アレルギー

口から吸った空気からは病原体が取り除かれません。また、乾燥したまま喉や器官へ入ってしまいます。

そのため、細菌やウイルスが喉や気管で繁殖しやすく、風邪をひきやすくなってしまいます。また、アレルギーも起こしやすくなると考えられています。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に喉の奥の方が狭くなり、無呼吸状態やいびきを繰り返す睡眠障害です。一般に、口呼吸を行っている人の方が上気道が狭いため、上気道が閉塞し、睡眠中に無呼吸になりやすくなってしまいます。朝起きて口の中が乾いていると感じたら要注意です。

もしかして、口呼吸をしているかも…?

現在、日本人の半数以上、小学生では8割が口で呼吸を行っていると言われています(西宮市歯科医師会より)。自分では気付いていなくても、もしかしたら鼻ではなく口で呼吸をしている方もいるかもしれません。下記のような症状のある方は、口呼吸をしている可能性があります。

  • いつも口を開けてしまう
  • いつも鼻が詰まっている
  • 喉が渇きやすい
  • 唇が渇きやすい
  • 口臭がある

特にお子さんの場合、テレビを見ている最中や遊んでいる最中に口が開いていないか、保護者の方が見てあげてください。

まとめ

口で呼吸をするのは自然なことだと思っている方も多いかもしれませんが、口呼吸は身体に様々な悪影響を及ぼしてしまいます。思い当たる節がある方は、まずはできるだけ鼻で呼吸することを意識してみてください。それでもうまくいかない方は、歯科医院などで相談してみることをおすすめします。