一時的なことだとわかっていても、妊娠中の”つわり”はツライですよね。実は体質に合った漢方薬により、症状が改善されることがあります。今回は、つわりに効く代表的な漢方薬をご紹介します。

目次

つわりと妊娠悪阻の症状とは?

妊娠初期では多くの方が吐き気や嘔吐、頭痛や食欲の低下、さらには食べ物の好みが変わったり、においに敏感になったりするようです。そのような症状を”つわり”と言いますが、原因はまだはっきりと解明されていません。

体内のホルモンバランスや代謝が急激に変化することにより、母体がうまく適応できないことが一因ではないかと言われています。

一般的に、つわりは妊娠5~6週頃から始まり12~16週までに治ることが多いようですが、個人差が大きく、全く症状のない方から 症状が重い方まで、また期間が短い方から長い方まで様々です。

そんな中、症状が重いと「妊娠悪阻」と病名がつけられます。

つわりと妊娠悪阻の区別ははっきりしていませんが、吐き気や嘔吐の繰り返しにより食事ができなくなり、栄養が不足したり脱水症状になったりする等、治療が必要となる場合に妊娠悪阻と診断されます。

つわりと妊娠悪阻の頻度は?

つわりは妊婦全体の50~80%に見られますが、妊娠悪阻は妊婦全体の0.1%ほどであり、頻度は高くありません。

多胎妊娠であったり過去に妊娠悪阻になったことがある場合、また妊娠中毒症になったことがある場合は、妊娠悪阻になりやすいと言われています。

治療法は?

フルーツ

1.食事による治療

妊娠初期は、お腹の赤ちゃんのために栄養のあるものを食べなければと頑張るものの、つわりの吐き気などでなかなか食べられず、心配になってしまうこともあるかもしれません。
しかし、12週頃までの赤ちゃんは卵黄嚢(らんおうのう)という臨時のお弁当のような器官とつながっており、そこから栄養と血液をもらっているので、母体の栄養状態が赤ちゃんに影響することはほとんどありません。

好きなものや食べられるものを少しずつ、1日に5〜6回くらいに分けると食べやすくなります。

お腹がすいている、あるいは逆にお腹がいっぱいだと吐き気が増すことが多いので、そのような状態にならないようコントロールしていきます。吐き気を抑える効果がある生姜を取り入れるのもお勧めです。

2.安静による治療

出産前後の準備など、いろいろとやらなければならないことや気になることもありますが、ゆっくりと心身共に休めることが大切です。

無理をしたりストレスを感じることが、症状を悪化させると言われています。

3.輸液や薬による治療

吐き気や嘔吐により食事や水分摂取ができない場合は脱水症になることがあり、症状によっては内服薬や座薬・点滴で加療を行うことがあります。

つわりに効く漢方薬は?

それでは、つわりに効く漢方薬にはどのようなものがあるのでしょうか。
以下に代表的な例をいくつか挙げていきます。

1.小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)

つわりに使われる代表的な薬です。比較的初期に使用されることが多く、強い吐き気にも有効です。
服用の際は冷たい水に溶かして水筒に入れ、気持ち悪い時に少しずつ飲む様にすると効果的です。

2.五苓散(ごれいさん)

喉が渇いて水分を摂るとすぐに吐いてしまい、おしっこが出にくいタイプのつわりによく効きます。むくみや下痢、頭痛がある場合にも効果的です。

3.半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

つわりを感じるようになって暫くして、喉が詰まる感じや何か引っかかる感じがある場合によく効きます。
カゼではないのにが出たり不安感や憂鬱、不眠などがある場合にも効果があります。

4.人参湯(にんじんとう)

冷え症で疲れやすく瘦せ型の人で”みぞおち”が痛んだり、口の中に薄い唾液が溜まりやすい場合のつわりによく効きます。含まれている甘草の成分によりむくみを起こすことがありますので、むくみが生じた場合は中止したり五苓散を服用することで軽減させることができます。

5.当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

もともと妊婦さんの腹痛に使用された薬です。冷え症で血色が悪い瘦せ型の方に使用します。つわり予防だけではなく安胎作用もあり習慣性流産の予防にも使用されます。胃腸が弱い方は人参湯と併用することで、より胃腸への負担が少なくなります。

漢方薬の安全性は?

漢方薬は比較的安全と言われていますが、妊娠中に悪い影響を及ぼす薬が無いわけではありません。上記の薬は比較的安全ですが、より安全にとお考えであれば信頼できる医師(漢方専門医)に相談すると良いでしょう

医師に相談するときの注意点は?

つわりの症状はもとより、体質やアレルギーなどをお話下さい。また複数の病院にかかっている場合や市販薬を飲んでいる場合は”薬の重複”や”飲み合わせ”による副作用が出ない様に薬の情報をお伝え下さい。妊娠・出産に向けて抱えている不安等がありましたら話すだけでも、症状軽減の糸口になるかもしれません。

まとめ

つわりは病気ではありませんが、体質により症状は様々で非常に不快で苦しいものです。

何かと負担の多い妊娠期を少しでも楽に過ごせる様に、比較的安全性の高い漢方薬を使ってみるという方法もありますので、辛い場合は医師に相談してみましょう。