「斜視」は日本の人口のおよそ3%にみられ、決して珍しくはありません(日本眼科学会)。斜視といえば正面を向いたときに片側の黒目が横を向いているイメージを持つかもしれませんが、実はその向きや原因にはいくつか種類があります。今回は斜視について、原因や種類などを紹介します。
斜視とは
私たちがものを見るとき、両眼は目標に対して正面を向いています。しかし、なかには片眼だけ目標と違う方向を向いてしまう状態があり、その状態を「斜視」といいます。
斜視の多くは子供のうちに症状が現れます。ただ、大人になってから斜視がみられることもあります。
斜視の見え方
私たちは、左右それぞれの眼で見た2つの像を脳でまとめて1つの像にして、見ているものの立体感や奥行き感を感じ取っています。この能力を両眼視機能と言います。斜視ではこの両眼視機能がうまくはたらかず、立体感や奥行き感がつかめなくなります。
斜視があると、ずれている方の眼を使わずにものを見る癖がついてしまいます。その結果、斜視がみられる眼の視力はうまく発達せず、弱視になります。また、大人など視力が発達した後にみられる斜視では「複視(ものが二重に見える)」がみられます。
斜視の原因
斜視の原因としては、以下のことが挙げられます。
眼を動かす筋肉と神経の異常
眼を動かす筋肉や神経に何らかの異常(麻痺や過動など)があると、眼球をうまく動かすことができず眼の位置がずれてしまいます。
眼の位置がずれると両眼でものを捉えられず、斜視がみられます。
遠視
近くを見る時、人は無意識に目標へピントを合わせる動きをしており(調節)、眼は少し内側に寄っています。
遠視があると遠くにも近くにもピントが合いません。近くを見る時にはより強く調節がはたらくため、眼は通常よりもかなり内側に寄ることになり、斜視になることがあります。
遠視について詳しくは「遠視はなぜ起こる?どんな症状なの?」をご覧ください。
両眼視の異常
遺伝や、脳の一部の異常などが原因となり、両眼視機能が障害されて斜視となることがあります。
視力の不良
病気や眼の怪我などで片側の視力が悪くなると両眼視ができなくなり、斜視になる場合があります。
斜視の分類
斜視は、眼の位置によって大きく次の3つに分類されます。
内斜視
黒目が内側に寄っている斜視です。
- 乳児内斜視…生後6ヵ月頃までに起こる斜視
- 後天内斜視…2歳以降に発症した斜視
- 調節性内斜視…遠視が原因で起こる斜視 など
外斜視
黒目が外側に寄っている斜視です。
- 恒常性外斜視…常に外側を向いている斜視
- 間歇性外斜視…普段は問題ないが、疲れが溜まったり、起床直後だったりしたときなどに外側を向く斜視。読み方は「かんけつせいがいしゃし」
上下斜視
黒目が上下に寄っている斜視のことです。
眼を上下左右に動かしたり回転させる働きがある上斜筋、下斜筋という筋肉が過剰に働きすぎたり、麻痺があったりすることなどが原因でみられます。
偽りの斜視「偽斜視」って?
赤ちゃんの場合、斜視ではないのに斜視のように見えてしまうことがあり、これを偽斜視と言います。眼の機能に特に影響を与えることはありません。
斜視に見える理由は、赤ちゃんは鼻が低く目頭と目頭の間隔を広いため、黒目が内側に寄っているように見えるためです。成長するにつれて鼻は高くなっていくため、偽斜視は自然と治っていきます。
しかしなかには本当に斜視の場合もあるので、赤ちゃんだから偽斜視だと決めつけず、眼科医に診察してもらって確認しましょう。
斜視かどうかチェックしてみよう
子どもの場合、見え方に問題があっても慣れてしまい、その状態が異常だと気づくことは難しいです。また、たとえ違和感を覚えたとしても、うまく説明できるとは限りません。
お子さんに以下のような症状がみられた場合は、斜視の可能性があるので眼科医に相談すると良いでしょう。
- 黒目の位置が、外側・内側・上下にずれている
- 眼が揺れている(眼振)
- 遠近感や立体感をとれていないように見える
- 強度の遠視・近視・乱視がある
- 片眼をつぶって見る・首を傾げて見る、眼を細めて見るなど、見方に極端な癖がある
大人の場合
大人の方でこのような症状がみられたら、斜視の可能性があります。
- 視線が定まらず、焦点が合ってないように感じる時がある
- 両目で見た時に、物が二つにだぶって見える
- 視力が出なくなり、眼鏡などで矯正しても改善しない
大人で斜視がみられた場合、脳の腫瘍やその他の病気が原因となっているケースも考えられます。速やかに眼科を受診してください。
まとめ
斜視は外見的な問題だと思われがちですが、立体視や遠近感、視力などに影響を及ぼします。幸い斜視は発見しやすく、「子供の眼の向きがおかしい」と感じたら放置せずに眼科を受診し適切な治療を受けるようにしましょう。