子供の目について、親が気にすることといえば、視力に関することではないでしょうか。視力が低下する原因としては近視や遠視・乱視などがありますが、もう一つ覚えておきたいのが「弱視」です。弱視とは一体どんな症状?その原因は?など、子供を持つ親ならば是非知っておきたい弱視についてみていきましょう。

目次

弱視って何?

生まれたばかりの赤ちゃんは「明るい」「暗い」など光の明暗しか分かりません。しかし生後2ヶ月ほどで物の形や色が分かるようになり、目の前で動くものを目で追う「追視」ができるようになります。赤ちゃんの視力の発達は著しく、一般的には3歳頃には視力が1.0程度になり視力検査も可能に、そして6歳頃には大人と同じような視力になるといわれています。

この視力の発達に欠かせないことがあります。それは、絶えず物を見るということです。筋肉を使わなければ衰えていくのと同じように、目も物を見ていることで脳に刺激が伝わり、視力の発達に繋がっていくのです。

しかし、この視力の発達の途中で何らかの原因によって「物を見ることができない」「見えにくい」という状態が長く続いてしまうと脳へ刺激が伝わらず、視力の発達は止まってしまいます。これを弱視といいます。

弱視の目はどのように見えているの?

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では、弱視の人にはどのようにものが見えているのでしょうか。

眼鏡やコンタクトレンズなどで視力を矯正している人が眼鏡を外すと、ピンボケしたように見えますよね。しかし、弱視の場合の見え方はこれとは異なります。弱視の人の見え方は「ピントは合っているのに大雑把に見えている」「くっきり見えているつもりだが、細かい部分は潰れていて分からない」という感覚だといいます。原因となる病気によっては、霧の中のものを見ているような状態だったり、ゴミがかぶさったような状態だったりすることもあります。

とはいえ、弱視ではない人にとって「弱視の人がどのようにものを見ているか」を理解するのは難しいことです。さらに、弱視のお子さんは生まれてから一度もはっきりとものを見たことがない場合もあるため、自分の見え方を人に説明することは困難です。親御さんが「見える?」と聞いたとしても「見える」と答えてしまうことが多いといいます(本人なりに「見えている」ため)。

お子さんの弱視に気付くためのポイントは?

弱視は、外からの見た目で判断することはできません。そのため、周りの大人は気付きにくいものです。また、片目だけが弱視の場合はもう片方の目で見えているので、本人ですら気付いていないことが多くあります。

見た目で分かる弱視の症状には、次のようなものがあります。

  • 目を細めて見る
  • テレビに近づいて見る
  • 頭を傾けてものを見る
  • 片方の目を覆って見る
  • 左右の目が同じ方向を見ていない
  • 集中力がない

これらは、近視など視力が低下している時にも見られる症状です。

近視の場合は眼鏡などで矯正してあげることで視力が出て見やすくなります。しかし弱視の場合は視力の発達ができていないため、いくら眼鏡などで矯正しても視力が上がらないのが特徴です。

上記のような症状や、目が悪くなったのかな?と感じることがあれば、念のために眼科を受診するようにしましょう。

弱視の原因って何?遺伝?

親と子

ここまで、弱視の症状を中心に解説してきました。では、一体弱視の原因は何でしょうか。

お子さんの目に異常がある場合、最初に頭に浮かぶのは「遺伝」かもしれません。しかし、弱視と遺伝との因果関係は分かっていません。遺伝よりも、視力が発達する過程に何らかの障害があって視力の成長が妨げられていることが原因です。

視力の成長を妨げる原因には遠視や斜視・目の度数の左右差・網膜に光が通りにくいなどがあります。その原因によって、弱視は「屈折性弱視」「斜視弱視」「不同視弱視」「形態覚遮断弱視」に分けられます。

屈折性弱視

強い遠視や乱視などの屈折異常が原因の弱視を、屈折性弱視といいます。強い屈折異常のため網膜にぴったりとピントを合わせることができず、それが視力の成長の妨げになり弱視になります。

斜視弱視

ものを見る時に片方の目が違う方向を向いている、いわゆる斜視が原因の弱視を斜視弱視といいます。

片方の目は正常に前を向いているため問題ありませんが、違う方向を見ている目の方は使われない状態になるため、視力が発達せず弱視になります。

不同視弱視

右目と左目の度数の左右差が大きい状態のことを不同視といい、この不同視が原因でおこる弱視を不同視弱視といいます。屈折異常の大きいほうの目は網膜にピントが合わず使われないため、視力が発達せず弱視になります。

形態覚遮断(けいたいかくしゃだん)弱視

何らかの病気が原因で起こる弱視を、形態覚遮断弱視といいます。

  • 先天性白内障
  • 眼瞼下垂(がんけんかすい:まぶたが垂れ下がっている状態)
  • 角膜混濁(かくまくこんだく)
  • 眼窩腫瘍(がんかしゅよう)

といった病気が原因になるほか、眼帯の長期間装用など、ものを見ることができず網膜に刺激が伝わらないため、視力が発達せず弱視となります。

弱視は早期発見が重要!

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視力の発達する時期のことを「視覚感受性期」と呼びますが、この期間はいつまでも続くというわけではなく限りがあります。視覚感受性期は生まれてから8歳ぐらいまでとされており、それ以降に視力の発達を望んでも、視力の成長が止まってしまっているため治療は難しくなるのです。そのため、弱視は早期発見・早期治療がとても重要です。

弱視の程度や視力の発達が妨げられていた期間などによって、治療の効果も変わってきます。小学校に入学してから弱視に気付いて慌てて治療しても、治療開始時期が遅いために視力がよくならない場合もあるのです。

現在では、3歳児健診などで視力低下を指摘されて弱視に気付き治療を行う人が大半ですが、それよりも早く弱視を発見できれば治療も早く始めることができ、治療効果も上がります。

弱視は、早期発見ができるかどうかで治るかどうかが決まるといっても過言ではないのです。

まとめ

視力は、放っておけば勝手に発達していくように思われがちですよね。しかし、視力の発達のためにはものを見るという行為が必要不可欠で、これが行われなければ視力は発達しません。そのため、生後から幼児期の間は視力にとって非常に大切な時期なのです。

また、子供は例え見えにくくても自分の意思を上手く伝えることができないため、親や周囲の大人が子供の見え方を注意深く観察する必要があります。子供の弱視のサインを見逃さないためにも、弱視の知識を得ておくということはとても重要なことといえます。