一般には視力とは「二つのものが二つであると細かく見分けられる力」のことです。しかし、実は一言に視力といっても、遠方視力と近方視力、動体視力や深視力など様々な「視力」が使われています。

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視力のいろいろ

子供の頃から学校などでも測っている視力検査は、少し離れたところから片眼を覆って「C」のような記号(ランドルト環)のどこに切れ目が入っているのか、または動物や文字を答えるものです。この検査で分かる視力を遠方視力といい、文字通り遠く(基本的には5m)がどれだけ見えるかを調べています。逆に30cmといった近くでの視力は近方視力といいます。

通常は、近視では遠方視力が悪くて近方視力が良く(遠くはぼやけるが近くははっきり見える)、遠視や老視では遠方視力はそれほど悪くなくても近方視力が悪く(近くがぼやける)なります。

動体視力や深視力は同じ「視力」といっても、遠方視力や近方視力とは全く異なります。

動体視力とは

動体視力とは、動いているものを細かく見分ける力であるといわれており、水平に動くものを認識する力は「DVA動体視力」、前後の動きを識別する力は「KVA動体視力」と呼ばれています。

DVA動体視力はサッカーなど左右の動きが多いスポーツに対して力を発揮するといわれ、KVA動体視力は遠くから近づいてくるものを捉えるため、運転中の視力などに関連するといわれます。

ただ、実際にスポーツ選手の視点を調べるとずっと対象物を眼で追っているわけではありません。DVA視力のみで良い成績を収められるわけではなく、今まで培ってきた経験と練習により、例えば球がどこにこれから来るかを一瞬で見極め、体が無意識に適切な場所へ、動くべきタイミングで動くようになるまで習熟していることが複雑に影響しているという考えもあります。

KVA動体視力は、年齢で落ちていくといわれています。運転に影響を及ぼす可能性がないかどうかを目的に、実際に70歳以上の高齢者が運転免許を更新する際に講習で測定します。機器を覗き、遠くから向かってくる(実際には小さいものが大きくなってくる)ランドルト環の切れ目が分かった時点でレバーやボタンを操作し、口でも答えるといった検査です。

深視力とは

奥行き感の判断力を表します。

車庫入れの時や、他の車との距離感がわからないと重大な事故を起こす可能性があるとの理由で、大型自動車免許二種免許を取得する際に深視力検査があります。

深視力は「三桿法(さんかんほう)」と呼ばれる検査で測ります。検査器を覗くと三本の棒が並んでおり、真ん中の棒だけが前後に移動していきます。この棒が三本並んだ時にボタンを押し、その誤差の平均を調べます。指定の誤差以内だと合格ですが、誤差が大きければ不合格となります。

限られた人が目にする検査です。ただ、この深視力の検査だけが苦手、でも車庫入れなどは非常に上手、などという人もおり、ある程度のトレーニングで「深視力のテスト結果」は良くなる可能性があります。

深視力が悪いのは何が原因?

深視力検査に不合格-写真

大型自動車免許などを取得もしくは更新する際、深視力検査で引っかかることがあります。一番は、上記のように

  • 深視力検査に慣れていない

非常にわかりにくい検査なので、まず慣れが必要です。自分の癖などを知っていることは深視力検査では非常に有利になるでしょう。

何度やっても引っかかってしまう場合は、以下のように、両眼で協調してみる力に何かしらの異常があるかもしれません。

  • 左右の視力差がありすぎる
  • 斜視などで立体視が弱い

通常は二つの眼で同じように見ていると感じますが、基本的には効き目といって、どちらかの眼が主にものを見て、もう片眼で側面を見ることで立体感や遠近感を培っています。

深視力が悪いのは子供の頃から?大人になってから?

強い遠視や近視が片眼にあり、適正な治療がなされないと、脳への刺激が少なくなり視力が育ちにくいことがあります。またその場合は、遠方視力自体が非常に悪いので、深視力が悪いのはもちろん、通常の視力検査で大型免許の取得は難しいと考えられます。

過去の普通免許や遠方視力検査で問題なかったのに、大型免許の取得もしくは更新時に初めて深視力で引っかかってしまう時は、白内障や網膜の病気など、何らかの眼の病気によって視力に左右差がでていたり、斜視などによって両眼で協調してものを見ることを妨げられていたりする場合があります。

深視力の気になる治療法は?

まずは、両眼の視力が正常に育っているか、眼の位置は正常かが、深視力を良くできるかどうかのターニングポイントです。3歳時や就学時検診で異常を指摘されたら、必ず眼科にかかりましょう。

大人になって斜視になっているために協調運動ができないケースは、プリズムという特殊なメガネを使って矯正したり、手術で眼の位置をまっすぐに戻すことができたりする場合があります。また、白内障や網膜疾患などで片眼の視力が低下していたりする場合は、手術で視力の回復が望める場合もあります。ただ諦めるよりも、治療ができるのか、できなくても進行して失明する病気が隠れていないか、今後の生活のためにも眼科を受診しましょう。

まとめ

動体視力も深視力も、遠方視力や近方視力とは異なるものですが、両眼の視力、眼位がしっかり保たれていないことにはどうしようもありません。自分の眼を正しく知っておくため・病気の早期発見のためにも年に一度は眼科で定期検診を受けることをおすすめします。