肺がんは若い人よりも中年以降によくみられている病気です。世界で最も患者数が多いがんといわれ、日本でも、男性の死因としては最も多くみられるがんです(対がん協会より)。

肺がんは、生活習慣によって罹患リスクが上がることがある病気の一つです。特に、喫煙の週間がある方は注意が必要となります。一方、タバコを吸っていなくても肺がんになる方もいます。

ここでは、肺がんの予防のために知っておきたいことをご紹介します。

目次

肺がんってどんながん?

肺がんはその名の通り、肺の細胞に発生するがんです。発生する場所や組織の状態により、下記のような種類に分類されます。

  • 腺がん:肺の奥の方に発生します。女性に多くみられるがんです。
  • 大細胞がん:肺の奥の方に発生します。増殖が速いことが多いといわれます。
  • 扁平上皮がん:肺の入口付近に発生します。患者さんの多くに喫煙経験があります。
  • 小細胞がん:肺の入口付近に発生します。患者さんの多くに喫煙経験があり、転移しやすいのが特徴です。

肺がんの3つの原因

喫煙

最大のリスクとして知られているのは喫煙で、特に扁平上皮がんや小細胞がんでは患者さんのほとんどが喫煙者だといいます。「肺がん検診Minds版やさしい解説」によると、喫煙は肺がんリスクを10倍から20倍に上げてしまいます。加えて、喫煙をしない方であっても、周囲に喫煙者がいる場合、タバコの煙を吸い込んでいることがあります。これを受動喫煙といい、自分は一切タバコを吸っていなかったとしても、肺がんになる危険性が上がってしまうのです。

環境(空気中の汚染物質)

腺がんの原因と考えられているのが、空気中の汚染物質を吸い込むことです。

アスベスト、アルミニウム、ヒ素といった物質を吸引したり浴びたりすることも肺がんのリスクを高めてしまいます。また、PM2.5などの大気汚染物質も肺がんの危険性を高めると考えられています。

女性ホルモンの影響

特に腺がんでみられるのが、女性ホルモン(エストロゲン)の影響です。喫煙をしていなくても、下記のような場合で肺がんの発生率が高くなることが研究により明らかになっています。

  • 初経が16歳以下・閉経が50歳以上など、初経から閉経までの期間が長い人
  • 人工的に閉経し、ホルモン剤を使用したことがある人

これらは、エストロゲンの量や濃度が関係していると考えられています。特にタバコを吸わない女性で大きな影響がみられているようですが、現在も研究が進められている最中です。

詳細は、「国立がん研究センター 社会と健康研究センター|生殖関連要因やホルモン剤使用と女性の肺がんとの関係について」をあわせてご覧ください。

肺がん予防・早期発見、3つの予防のポイントは?

3つのポイント

肺がんの原因をおさえたところで、ここからは肺がんの予防と早期発見のためにできることを見ていきましょう。

禁煙

タバコを吸わないということが、肺がんのリスクを下げる最大の方法です。今はタバコを吸っているという人でも、禁煙することで肺がんのリスクは少しずつ下がっていきます。

下記の表は、喫煙者及び禁煙した人の肺がんによる死亡リスクが、非喫煙者のリスクと比べて何倍になるかをまとめたものです。喫煙中はかなり上昇していますが、禁煙を始めて時間が経つにつれてリスクが下がっていることが分かります。

喫煙者 4.71倍
禁煙後0-4年 3.99倍
禁煙後10-14年 1.87倍
禁煙後25年以上 0.67倍

出典:ファイザー|すぐ禁煙.jp|タバコの害について学ぶ

ただし、自分が禁煙をしても、周りに喫煙者がいると受動喫煙になってしまう場合があります。できれば、家族など周りの人にも禁煙をすすめると良いでしょう。

定期検診

40歳以上の方は、毎年1の肺がん検診の受診が推奨されています。問診やX線検査、喀痰細胞診などで肺がんの有無を調べます。

問診

喫煙経験の有無や、肺の病気にかかったことがあるかどうか、今までにどんな仕事をしてきたか(アスベストなどに曝露された経験があるか)を聞かれます。

X線検査

肺の状態をX線で撮影して確認します。異常な影がみられた場合、肺がんのおそれがあります。

喀痰細胞診

起きてすぐに出た痰を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無を調べます。1回では発見できない場合もあるため、肺がん検診では通常3日にわたって痰を採取します。

血液検査

がんが作り出す物質(腫瘍マーカー)を測定し、がんの有無や性質、部位を調べることができます。腫瘍マーカーの検査だけでがんの診断を下すことはできないため、他の検査と合わせて総合的に判断します。

果物を食べる

果物を食べることで肺がんのリスクを下げられる可能性があるという研究結果が出ています。また、海外では野菜も肺がんリスクを下げるという研究結果が出ています。ただしこれは科学的根拠となる研究データがまだ少なく、日本人にも同様の効果があるとは分からないのが現状です。野菜や果物を取り入れるだけでなく、バランスの取れた健康的な食事を心掛けると良いでしょう。

国立がん研究センター 社会と健康研究センター||野菜・果物と肺がんリスク」もあわせてご覧ください。

まとめ

肺がんの最大の原因は喫煙です。他の原因もありますし、非喫煙者でも肺がんに罹患することはありますが、タバコをやめることは肺がんのリスクを下げることに繋がります。

また、死亡数の多い肺がんではありますが、早期に発見できれば根治も可能な病気です。特に40歳を過ぎた方は、年に一度の検診をしっかり受けておくと良いでしょう。