血液や精液を介して感染するHIV感染症(エイズ)。正しい知識をもって予防することが第一ですが、誰もがかかりうる病気です。HIVに感染したかもと思ったら、どうすればいいのでしょうか?今回は、HIVに関する受診や検査について解説します。

目次

HIV感染症(エイズ)とは

HIV感染症(エイズ)は、HIVウイルスに感染することによって身体の免疫力が低下していく病気です。

最も多い感染経路は性感染であり、感染した後は数年の無症状期を経て、免疫力の低下が原因で起こる日和見感染症悪性腫瘍を発症する経過をたどります。

HIV感染症(エイズ)の感染経路や発症については、記事「HIVに感染?~HIV/AIDSの基礎知識~」をご参照ください。

HIV感染症(エイズ)が疑われたら、どうすればいい?

HIVの感染を疑った場合、以下のような検査を受けることになります。

1.HIV抗体検査

HIVの感染が疑われるときに、まず行われる検査(スクリーニング検査)です。

HIVに感染すると、体内で抗体が作られます。HIV抗体検査は、血液を採取してこの抗体の存在を確認する検査です。検査の結果抗体が確認されたものを陽性、確認されなかったものを陰性と判定します。

陽性と判定された場合は、測定方法を変えて確認検査を行い、真の陽性を判定します。

ただし、HIV抗体は感染後、血液から検出されるまでの期間があります。これをウインドウ期(ウインドウ・ピリオド)といいます。通常、感染後4週間後くらいから検出されるようになりますが、個人差もあるため、3か月以降の検査、または再検査が確実です。

2.NAT検査

HIV抗体検査より早い時期に感染を確認できる検査として、採取した血液からウイルス遺伝子を調べるNAT検査(核酸増幅検査)があります。通常感染後12日後から検出されるため、この時期から検査が可能です。

現在、一部の保健所や医療機関で実施されています。検査を希望する場合は、希望する機関での事前確認が必要です。

全国で検査を行っている保健所や医療機関はこちらのサイトから検索できます。

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HIV感染症(エイズ)の感染は、実は結構身近な問題

HIVリボン

ここまでHIV検査の解説をしてきましたが、そうは言ってもなかなか「検査を受けてみよう」という気が起きない方も少なくないことでしょう。そこで、ここからは厚生労働省エイズ動向委員会の統計から、HIV感染者の情報をみていきます。

日本には、およそ17,000人のHIV感染者がいます。2015年に新たに国に報告された患者数は1,434件でした。そのうち日本国籍だったのは898件で、男性が860件なのに対し女性は38件と、感染者の大半を男性が占めています。また、全体の報告数のうち68.7%を占める691件が同性間の性的接触による感染でした。異性間の性的接触によるものが19.5%(196件)だったので、日本国籍の男性の場合、同性間での性的接触においてHIVに感染するケースが最も多いことが分かります。

とはいえ、一概に「同性間の性的接触が危険」と言い切ることはできません。年齢が上がるにつれて、異性間の性的接触による感染の割合が高くなる傾向もみられるのです。

注意して見ていただきたいのは、これらの数値があくまでも「報告数」だということです。HIVの初期には症状がないため、自分が感染していることに気付いていない患者さんは、実際にはこの統計の5~10倍いるのではないかという見方もあります。HIVは、決して他人事の病気ではないのです。

HIVに初期症状はない

「不特定多数と性的接触を持ってしまった、けれど特に症状があるわけでもないから大丈夫」。そんな風に考えている方はいませんか?

よく、HIVに感染すると、風邪に似た初期症状が出るといわれます。しかし、この症状には人によって差があり、必ずしも熱が出るわけではありません。また、もしも実際に発熱があったとしても、ただの風邪かどうかを判断することは非常に難しいです。したがって、初期症状の有無でHIVに感染したかどうかを判断することはできないと思ってください。

HIVに感染したかどうか確認する唯一の方法は、検査を受けることです。現在は匿名で検査を受けられる機関も多数ありますので、「もしかして感染しているんじゃ…」と思った方は症状の有無にかかわらず、まずは検査を受けてください。

最後に

HIVは、なかなか身近な病気とは思えないかもしれません。しかし、誰もが感染する可能性のある病気です。今回は検査について中心に解説しました。本記事にある通り、HIVかどうかを確かめる唯一の方法は検査を受けることです。心配に思っていることがある場合、「症状が出てからでいいや」などと考えず、お近くの医療機関や保健所で検査を受けてくださいね。