「エイズになったかも?」「エイズウイルスに感染したかも?」「エイズを予防するにはどうしたらいいの?」と思ったら、まずは正しい知識を持つだけではなく、仲間、友人と思いを、情報を、不安をシェアすることから始めましょう。
HIV感染症とはどんな病気
HIV感染症とは、HIV(Human Immunodeficiency Virus)という名のウイルスに感染する感染症です。基本的に、感染しただけでは無症状ですが、少しずつ体の中の免疫機構(体を様々な病原体から守る力)が障害された結果、いろいろな病気を起こします。
そして、ニューモシスティス肺炎やカポジ肉腫といった合併症を起こした状態をエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)と呼びます。人は免疫が正常に機能しなくなると、免疫力が正常なときは平気である細菌やウイルスに対する抵抗力が弱まり、健康を害する状態を引き起こしやすくなります。
世界と日本、HIVの感染動向
UNAIDS(国連合同エイズ計画)の発表によれば、2015年の時点で、全世界に3,690万人がHIVとともに生きているとされています。そして、その内1,500万人が抗HIV治療を受けています(エイズ予防情報ネット(PDF)より)。また、日本国内ではHIV感染者は16,903人、エイズ患者は7,658人で、いずれも増加傾向にあります(世界エイズ研究予防財団より)。
※HIV感染者:HIVに感染している人
※エイズ患者:HIVに感染し、エイズ特有の合併症を発症している人
正しい知識で予防する、感染経路と予防方法
HIV感染症(エイズ)は、HIVに感染した人の体液(精液、腟分泌液、血液)の中に含まれているHIVが、以下の感染経路を通して他の人に感染します。以下、感染経路とそれにあわせた予防方法について解説します。
1.性感染性行為セックス
感染経路
- 男性(タチ)から男性(ウケ)へ:感染している男性との性行為(肛門内や口腔内への射精)
- 男性(ウケ)から男性(タチ)へ:感染している男性(ウケ)との性行為(肛門内への挿入やフェラチオをされる)
- 男性から女性へ:感染している男性との性行為(膣内や口腔内への射精)
- 女性から男性へ:感染している女性との性行為(膣内へのペニスの挿入、フェラチオをされる)
男性は興奮しただけで射精が始まっています。
体液の交換がない女性から女性への感染はないとされていますが、膣内などに挿入した器具をパートナーが使うなどすれば感染する可能性はあります。
予防方法
- 性行為・セックスをしない
- 体液との接触を避けるためにコンドームを正しく使う
※正しいコンドームの使用方法はYouTubeのこちらの動画を参照。
男性同士の性行為で感染するリスクが高いのは、直腸内への射精を受けた場合です。精液内に存在するHIVと、ウイルスの侵入経路となる直腸粘膜との接触時間が長いためです。
コンドームなどが破れたりした場合は、排便や浣腸などで、直腸内に入った体液を速やかに体外に出すことが重要です。
2.薬物
感染経路
- 感染している人と、静注薬物(注射器で血管内に薬物を注射する廻し打ち)を一緒に使用すること
- 性的興奮作用等がある薬物を使用することで、性感染予防、コンドーム使用に対する意識が低下することによる感染
※薬物使用は違法だというのは誰もが知っていることです。しかし、なぜ有名人を含めて薬物使用が減らないのかを考えてみてください。
- ドラッグを使ったことが正直に言える場所がない
- 仲間でドラッグを使用で連帯感が高まる
- セックスの痛みの緩和につながる
- 依存症の自分を助けてと言えない
予防方法
使わないのが一番ですが、使ってしまったら、すぐ誰かに相談しましょう。
3.輸血
現在国内では輸血については、すべての献血血液に対しHIV検査を実施していますが、感染してからの期間がわずかな人が献血をすると検査をすり抜け、輸血で感染する可能性があります。輸血を受けたら、必ず3か月ほど経ってからHIV検査を受けてください。健康保険が適応されます。
4.タトゥー(刺青)
タトゥー用の針や墨を使い回すことでHIVに感染することがあります。必ず専門の店で、自分の目で、自分専用の針や墨を使ってくれているかを確認してください。アートメイク、ピアスなどの施術も、同様に衛生面での管理が充分に行われているか確認が必要です。
血液感染に関する誤解
万が一、不慮のケガ人の手当てなどで「HIVに感染している人の血液に触れる場合は手袋やビニール袋などで、自分の手を保護しましょう」といったことが教科書などにも書かれています。しかし、輸血、刺青、薬物の回し打ちのように、HIVが感染していない人の血管内に直接入るといったことがなければ感染することはありません。
万が一血液が体についたら、流水で充分に洗い流しましょう。また、HIV感染を心配する以前の常識として、日用品(カミソリ、ピアス、歯ブラシなど)は各自専用のものを使用しましょう。
5.母子感染
HIVに感染していることに気付かずに妊娠、出産した場合、胎内感染や出産時の産道を介して、または母乳を介して胎児、新生児への感染が起こります。そのため、日本国内では出産を希望する妊婦さんに妊娠初期の検査の一環としてHIV検査を実施しています。感染が判明した場合、母子感染予防のために、妊婦さんに抗HIV薬を投与し、帝王切開での出産をすることで、母子感染はほぼ100%回避できるようになっています(API-Netエイズ予防情報ネット HIV母子感染予防対策マニュアルより)。
予防のための検査
HIVに感染しているか否かは血液検査(HIV検査)でわかります。HIV検査は医療機関だけではなく、保健所等でも受けられます。
保健所等では無料、匿名(名前を言わなくてもいい)が原則ですが、医療機関だと1万円以上する場合があります。検査結果をその場で教えてくれるところもありますので、事前に電話をして確認しましょう。
感染していた場合は、適切な医療機関を紹介してもらえます。感染していない場合は、その後の性生活等に関するアドバイスをもらうことができます。
まとめ~予防のために本当に必要なもの~
HIV感染症(エイズ)はHIVの感染によって起こる免疫不全症候群です。しかも、HIVに感染している人たちは、実は正しい知識をもっています。それなのにどうしてHIVを予防することができなかったかを当事者の人たちに学んでください。結局のところ、「HIVって身近だよね」とか、「予防にコンドームは常識」といった会話、コミュニケーションが不十分だったためです。
今のところ、一度感染したHIVを体内から完全に除去することはできませんが、早期に発見することで、エイズを発症しないようにすることが可能になりました。HIVに感染したかも?と不安になった場合は、早めに検査を受けましょう。