「HIVに感染しているかも…」と思ったら、検査を受ける必要があるか考えたり、感染をしていない理由を探したりする前に、まず検査を受けることが大切です。

HIVに感染?~HIV/AIDSの基礎知識~」の記事では、HIV感染症(エイズ)に関する基礎知識を、「HIV感染症(エイズ)かもと思ったら、どんな検査を受ければいいの?」の記事ではHIVへの感染を確認する検査方法を紹介しました。

では、検査はどこで受けることができるのでしょうか?

目次

HIV検査の検査機関を選ぶときに大事なこと

全国でHIVに感染しているか否かの検査を行っている保健所や医療機関はHIV検査相談マップで調べられます。ここに掲載されているところであれば、検査結果についてどこも信頼できます。

検査を受ける人のほとんどは陰性、すなわち感染していないという結果を期待していると思います。一方で、知り合いに検査を受けるところを見られたらと考え、住んでいるところから離れた場所で検査を受ける場合もあるでしょう。

しかし、万が一でもHIVに感染していた場合、どこの医療機関を受診するかについて正確、かつ信頼ができるアドバイスが得られるところで検査を受けることが大事です。治療が必要になった場合を想定して、自宅から通える医療機関について詳しいと思われる検査機関で検査を受けましょう。

HIV検査が受けられる場所

医師の人形-写真

保健所

保健所というのは都道府県や政令市(大都市)が設置している機関で、全国のほとんど全ての保健所がHIV検査を行っています。

保健所では匿名(名前を言わなくていい)で検査を受けることができ、料金も無料です。 予約が必要であったり、日時や定員が決められたりしている場合もありますので、事前の確認が必要です。即日(迅速)検査を行っているところと、行っていないところがあります。

医療機関(病院クリニック)

エイズ治療拠点病院HIV/エイズ診療拠点病院)のほか、婦人科や性病科などの病院でHIVの検査を実施しています。保健所のように匿名ではありませんが、プライバシーへの配慮は充分になされています。

医療機関の場合もスクリーニング検査を実施し、陽性の場合は確認検査を行います。

費用は全額自己負担で3,000円~7,500円で、検査費用は原則健康保険が適応されないため、医療機関の判断で決めることになっています。検査の種類や費用は医療機関によって異なりますので、事前に確認しておくほうがよいでしょう。

HIV自己検査キット

インターネットでは自分で採血をした血液を検査機関に郵送してHIV検査を受ける自己検査キットが販売されています。ただ、厚生労働省が正式に認可したものはありませんのでお勧めできません。ぜひ保健所や医療機関での検査をお勧めします。

HIV診療拠点病院

HIVに感染していることがわかったときに、一番大事なことは、きちんと、早めにHIVに感染している患者さんの診療に慣れた医療機関を受診することです。きちんとした検査機関で検査を受けていれば、適切なところを紹介してくださるでしょうが、ご本人が混乱してよく覚えていない場合や、よくよく考えて別のところを選びたいという場合は拠点病院診療案内を参考にしてください。

ただ、都道府県のホームページに記載されている病院であっても、実際にはほとんど患者さんを診療していない病院もあります。受診をする前に一度直接電話をして診療体制について確認されることをお勧めします。

HIV感染症は早期診断の時代に

私が書かせていただいている記事で「感染していることが心配な人は?」と敢えてしていません。その理由は、実際に感染していることが判明した人でも、「まさか自分が感染しているなんて」と思っている人がすごく多いからです。

よく講演会で「エイズウイルス(HIV)に感染したら何らかの症状はありますか?」と質問されます。その質問に対して私は「特別な症状はありません」とやんわりごまかしています。しかし、実はちゃんと勉強をしている医師であれば、HIVに感染した人を、その人の症状に加え、性行動等を含めて確認し、非常に早期の時点でHIV感染を診断しています。

HIV/AIDS患者さんの診療にあたっている医師の誰もが読んでいるHIV感染症「治療の手引き」第19版には急性HIV感染症の症状という記載があります。

急性HIV感染症とは?

急性HIV感染症を疑う、HIV曝露危険度の高い行動の2~6週後にみられる兆候あるいは症状のこと。

以下の兆候・症状・臨床検査所見が単独あるいは複合してみられる。

  • 発熱(96%)
  • リンパ節腫脹(74%)
  • 咽頭炎(70%)
  • 皮疹(70%)
  • 筋肉痛/関節痛(54%)
  • 頭痛(32%)
  • 下痢(32%)
  • 嘔気・嘔吐(27%) など

(参考:Dybul M et al.: Ann Intern Med 137(5 Pt 2): 381-433, 2002)

誰でも風邪を引けば、発熱もし、リンパ節が腫れ、咽に炎症を起こし、下痢もしますが、風邪を引いたときに「自分はHIVに感染しているかも?」とは思いません。

しかし、このような情報が行き渡ると、ある日「HIVに感染したかも?」と不安になった人は、「そう言えば、あの行為の後に少し微熱が、のどの痛みが、下痢が…」と心配になり、「感染している可能性はないでしょうか?」と相談してきます。

極端な場合は、自分で勝手に感染していると思い込み、それこそうつになったり、自ら命を絶ったりする人がないとは言えません。そのため、これまでは「HIVに感染しても特別な症状はありません」と言い続けてきました。

一方で、医療の進歩とともに、HIV感染はより早期に発見した方が患者さんのその後の健康状態のみならず、様々な面でメリットがあることがわかってきました。しかし、HIV感染を疑う症状が出現するのは、感染初期の急性HIV感染症の時期か、エイズを発症する前後の、かなり免疫力が低下した時のどちらかになります。

ここでは、特にプライマリケア、総合診療に従事している、患者さんが風邪等でかかる先生方にこそ、患者さんが外来を受診した際に急性HIV感染症を見落とさないでいただきたいという思いで、このような記載をしています。

HIV感染症(エイズ)についての相談

なぐさめるキャラクター-写真

「HIV感染症(エイズ)にかかってしまったのではないか?」「検査を受けたいけど陽性だったら怖い」「もし陽性だったら、今後どうなるのだろう」などHIV感染症(エイズ)には多く不安があります。身近な人にも相談できず一人で抱え込んでしまいがちです。

HIV感染症(エイズ)に関する様々な悩みを相談できる窓口もありますので、悩んだときは相談してみましょう。

API-Netエイズ予防情報ネット|エイズ予防財団 電話相談のご案内

まとめ

HIVに感染したかもしれない…という場合には、不確かな情報に踊らされず、まずはHIVの検査機関やHIV/AIDSの診療をしている医療機関を受診し、早めに専門家に相談することが大切です。

また、HIV感染症(エイズ)に関する悩みや不安は、医療機関だけではなく専用の窓口があります。不安になったときは、まずは相談・受診というかたちで、一歩を踏み出してみましょう。