声帯結節は、アーティストやアナウンサーをはじめ、声を使う職業の人にとっては職業病とも言うべきものです。一体、どのようなメカニズムで起こるものなのでしょうか?ここでは、声帯結節のメカニズムと治療法を解説します。

目次

「声」はこうして出ている

まずは、そもそも「声」はどのように出るものなのかを見ていきましょう。

私たちが声を出す時には、喉仏の中にある声帯が震えます。声帯の下には気管があり、ここから吐き出される空気が声帯を震わすのです。

声帯は左右に1本ずつ、あわせて2本あります。声を出す時は2つの声帯がぴったりと寄り添いますが、その隙間を空気が通り抜けることで声帯に振動が起こり、声となります。

声帯は、楽器に例えるとピアノやバイオリンの弦のようなものです。声帯を形成する粘膜が適度にやわらかく、うまく震えるようになっていないと、うまく声を出すことができなくなってしまいます。

声帯結節は声帯の「たこ」のようなもの

ボーカリスト

では、声帯結節とはどのような病気なのでしょうか。

一言で表すなら、声帯結節は手にできる「ペンだこ」のようなものです。絵や文字を長期間にわたって書き続けると、手や指のペンがあたる位置にタコができることがありますよね。これと同じように大声で叫ぶ・怒鳴る・大声で歌う・不自然に低い声を使う・高い声を喉を詰めて出すなど慢性的に無理な発声があった場合、声帯の中で最も擦れ合う場所に比較的硬いしこりができることがあります。これが、声帯結節です。

長期にわたって声を酷使した場合に発症するので、歌手やアナウンサーの他にも教師、保育士、居酒屋など騒音職場で働く人などに多くみられます。結節は主に女性に見られる状態ですが、男性でも起こることがあります。また、幼少期に男女を問わず見られるのが小児結節です。変声期を過ぎるあたりでほとんどの小児結節は自然に良くなります。

なお、よく似た病気である声帯ポリープは、声帯にできるやわらかい球状の腫瘤です。通常片方の声帯のみにできます。必ずしも大声を出した後にできるわけではなく、声帯にできる血豆が元で生じる病気です。例えばスポーツ観戦で大声をあげて叫んだり、カラオケに行って大声で歌いすぎたりしても声帯ポリープの原因となる血豆ができます。

一方で麺類を食べているときにむせて咳き込んだり、思い切り咳払いをしたり、大きなくしゃみを一回しただけでも血豆はできてしまします。最初は赤い色をしている血豆が、数週間から数ヶ月経つとやがて白い色に変わっていき、ポリープとなります。

声帯結節の症状って?

声がれ(嗄声)が主な症状となります。このほか、のどに違和感をおぼえたり、声を出すと軽い痛みを訴えたりする方もいます。これらの症状は、数日から数週間かけて徐々に現れますが、場合によっては一度ほとんど声が出なくなった後にある程度改善して、そこから先に完全に元に戻らないこともあります。発声時に声帯がぴったり閉じないので、長く声を出すことができなくなります。

声を使う頻度によって症状が良くなったり悪くなったりすることがあります。例えば教師が声帯結節を患った場合、夏休みになると症状が改善することがあるのです。

声がかすれたままなかなか治らない場合、耳鼻咽喉科の専門医を受診するとよいでしょう。喉頭鏡(こうとうきょう)やファイバースコープで声帯を観察し、声帯結節かどうかの診断がなされます。

声帯結節の治療法とは

マイク

保存的療法

声帯結節の治療で最も大切なのは、のどへの刺激を避け、声を休めることです。声の酷使が原因である場合、言語療法士による音声治療発声訓練沈黙療法など)を受けることもあります。これは、声帯に負担をかけずに声を出す方法を学ぶものです。

声帯結節は、このような治療で消失することが大半です。

手術療法

上記のような治療を行っても効果がない場合は、喉頭顕微鏡下手術が行われます。

この手術は口から咽頭直達鏡を入れ、声帯の病変部を顕微鏡で観察しながら行われます。全身麻酔が必要ですが30分程度で終わるものです。

手術を受けても、手術前と同じように声を酷使した場合、再発する可能性があります。

再発を予防するには、手術前に音声治療を受けて、声帯結節になりやすい発声についての理解を得てから手術をすることをお勧めします。せっかく手術を受けても声の生活習慣が変わらなければ数ヶ月のうちに元に戻ってしまうケースも多く見られるからです。

声帯ポリープの治療法とは

声帯結節と違って、ポリープの場合は手術適応になるケースが多いです。

ポリープの場合は結節ほど再発も少ないので、早めに手術をして切除したほうが良いことが多いのです。

ポリープができると、反対側の声帯にポリープが当たってその場所に結節ができることがあります。声帯結節とポリープをしっかり鑑別してもらえる耳鼻咽喉科の医師を探して受診し、手術するかしないか、早めに判断を仰ぐことも大事です。

最後に

声を使う職業の人にとっては身近な病気、声帯結節。のどにできるペンだこのようなものと考えれば、ボーカリストやアナウンサーにとっての職業病だということも頷けます。

声帯結節では、のどを休めることが何よりの治療になります。診断された場合は無理をせず、しっかり休んで治療に取り組んでください。

また、ポリープは偶発的にできることも多いので結節とは対応が異なります。声を休めても良くならないことが多いので、手術するかどうか早めの決断も大事です。