あなたは健康診断を受けたことはありますか?健康診断は病気の早期発見のために行われます。自主的に受けている人、受けること自体が受け身となってしまっている人、それぞれだとは思いますが、自分のからだのチェックができる折角の機会です。検査結果を理解し、自分の健康に関心を持つということが、今後のあなたの未来を左右するかもしれません。

今回は、健康診断の結果を受け取ったら、何に注目してみたらいいのか、書いてある数字が何を表しているのかなど、健康診断結果の見方を解説します。

目次

健康診断の項目について

健康診断は一般的には、学校健診や職場では雇用時健診、一般定期健診、特定健診などがあります。受ける検査項目は、対象者の年齢や受診歴、体調等を考慮して決定されることもあり一概には言えませんが、基本的な健康診断の項目は以下の表のとおりです。

問診 現病歴 既往歴 喫煙歴 飲酒 自覚症状など
診察 聴打診 他覚症状 血圧測定
身体計測 身長 体重 BMI 体脂肪率
血液検査 脂質 LDLコレステロール HDLコレステロール 中性脂肪
肝機能 AST(GOT) ALT(GPT) γ-GTP
血糖 空腹時血糖 または HbA1c
尿検査 尿糖 尿たんぱく

健康診断結果の数値について

健康診断を受けた結果は成績表として手元にわたります。そこには測定された数値がずらりと並んでいますが、だいたいは自身の数値の横に基準値が表示されており、数値が逸脱しているかどうか比較できるようになっています。基準値は、その健康診断を受けた施設によって設定している数値が異なります

それぞれの検査項目でわかることは?

健診結果で、逸脱している数値があるとどんなことが考えられるのでしょうか。

項目ごとに説明していきます。

血圧測定

血圧測定では、高血圧であるかどうかを調べます。高血圧の状態が長く続くと、血管は負担を受け続け、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害、心筋梗塞などの循環器疾患、腎障害などを引き起こします。

高血圧は、

  • 家庭血圧の場合:収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上
  • 診察室血圧の場合:収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上

となりますので、この数値未満ならば基準内といえます。より詳しい数値に関しては以下の血圧の判定基準をご参考ください。

成人における血圧値の分類

収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg)
重症高血圧 180以上 かつ/または 110以上
中等症血圧 160~179 かつ/または 100~109
軽症血圧 140~159 かつ/または 90~99
正常高値 130~139 かつ/または 85~89
正常血圧 130未満 かつ/または 85未満
至適血圧 120未満 かつ 80未満

(日本高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2014より一部改変)

高血圧と判定されたら、生活改善(減量・減塩・運動療法など)が必要になります。生活改善をしても血圧が下がらない人や、中等症・重症高血圧の人、血圧が高いと問題となるような病気を抱えている人に関しては、医師の指導のもと血圧をコントロールする必要があります。

低血圧とは?

低血圧の診断基準はありませんが、一般的には収縮期血圧が100mmHg以下をいいます。症状がなければ心配いりませんが、心疾患やホルモン異常などが原因の場合や自覚症状が強く生活を送るのに支障がある場合は検査や治療が必要です。

身体計測

1.BMI(ボディーマスインデックス)

体格指数のことです。BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))で計算でき、正常なBMIはBMI:18.5~24.9とされています。25以上で肥満、18.5未満は低体重(やせ)に該当します。

肥満は体内脂肪が多くなりすぎた状態を指し、さまざまな病気のリスクを高めてしまいます。肥満になる原因や肥満が引き起こす病気に関しては「肥満は万病のもと!どうして肥満はいけないの?」の記事をご参照ください。

2.腹囲

臍の高さで測定したウエストまわりの長さです。男性は85cm未満、女性は90cm未満が基準値で、それ以上あると内臓蓄積型肥満と診断されます。腹部臓器周囲に脂肪が蓄積する内臓蓄積型肥満は、様々な病気を引き起こし危険なものです。

また、腹囲はメタボリックシンドロームの診断にも用いられます。

血液検査

血液検査

1.脂質

LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の数値を調べ、下記の表に該当する場合は、脂質異常症が疑われます。脂質異常症があると動脈硬化のリスクを高めてしまいます。

コレステロールについては「コレステロールって何?善玉・悪玉は何が違う?」の記事をご参照ください。

LDLコレステロール 140mg/dL以上 高LDLコレステロール血症
120-139mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール 40mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
中性脂肪 150mg/dL以上 高中性脂肪血症

日本動脈硬化学会による動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012

2.肝機能

AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPが基準を逸脱している場合は、肝障害の可能性があります。

AST(GOT)・ALT(GPT)

ともに肝臓の細胞に多く含まれる酵素で、肝臓が障害されると肝臓の細胞が壊れ、AST(GOT)とALT(GPT)が血液中に流れ出します。数値が高いとそれだけ肝臓の受けている負担が大きいということです。AST(GOT)は、心臓、筋肉、血球にも多く含まれています。

数値が高い場合は急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、肝硬変、アルコール性肝障害などが疑われます。ASTのみが高い場合は心筋梗塞、筋肉疾患などが考えられます。

基準値はAST(GOT)・ALT(GPT)ともに30以下(単位:U/L ユニットパーリットル)
出典:日本人間ドック学会

AST・ALT値が500U/Lを超えるような場合は急性肝炎や劇症肝炎が疑われ、100U/Lまでの上昇では慢性肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝などが考えられます。

γ-GTP

γ-GTPは、肝臓の細胞が壊れたり、胆管が閉塞したりしたときに血液中の数値が上昇します。

数値が高い場合は、アルコール性肝障害、慢性肝炎、薬剤性肝障害、胆管結石、脂肪肝などが疑われます。このほかNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)の疑いもあり、現在注目されています。

基準値は男性で50U/L以下、女性で32U/L以下
出典:日本人間ドック学会

3.血糖

健康診断では血糖は「空腹時血糖」と「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」で調べます。どちらも糖尿病を見つけるための検査です。

糖尿病がどのような病気かは、「糖尿病ってどんな病気?専門医が語る、放っておいてはいけない理由とは」の記事をご覧ください。

空腹時血糖

10時間以上飲食していない状態で採血した血液の中のブドウ糖の濃度を調べる検査です。

糖尿病の他にも、他の病気が原因で起こる高血糖や、低血糖を引き起こすインスリンノーマなどの膵臓の病気に対しても行われる検査です。

日本糖尿病学会の空腹時血糖値の区分

(理学的根拠に基づく糖尿病治療ガイドライン2013より)

空腹時高血糖値の区分

基準値は70~109mg/dLです。(100~109mg/dLは正常高値)正常高値は、将来糖尿病に移行する可能性が高いため生活習慣を見直す必要があります。

126 mg/dL以上の高値となると下記で説明するHbA1cの検査や自覚症状の有無なども合わせて糖尿病の判定を行います。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)

体内に酸素を運ぶヘモグロビンというたんぱくがブドウ糖と結合してできたもので、血糖値が高いほど量が多くなります1~2か月前の血糖値の平均的な状態を知ることができるため、糖尿病のコントロールの指標となります。

基準値は6.2%以下

空腹時血糖が正常でもHbA1cが高値の場合、糖尿病が疑われます。

また、空腹時血糖が126mg/dL以上かつHbA1c 6.5%以上なら糖尿病と判断します。

尿検査

尿は腎に始まる尿路系の異常だけでなく体全体の変調も映し出されます。

1.尿糖

糖尿病を見つけるための検査のひとつです。血液中に含まれるブドウ糖が一定量を超えると腎臓から糖が尿に漏れ出ます。通常、血糖はインスリンの働きでエネルギーに変わるため、尿中に出ることはありません。なので、基準値は陰性で、陽性の場合は、糖尿病が疑われます。ただし、正確な糖尿病の診断は、血糖値やヘモグロビンA1cの測定などを行います。

他に、腎性糖尿という病態もあります。血糖値が正常なのに腎臓から尿中に糖が漏出してしまうのです。

2.尿蛋白

尿に含まれる蛋白のことです。基準値は、定性(試験紙で測定する検査)では陰性、定量(1日の尿量から尿蛋白の量を測定した検査)では150㎎未満/です。陽性の場合は、慢性腎炎・急性腎炎・ネフローゼ症候群・腎盂炎・膀胱炎など、尿路の感染や腎障害が疑われます。

ただし、正常な人でも蛋白尿は見られることがあります。たとえば、運動後や発熱後、起立時や前かがみの時に一時的に起こることがあります。その場合は心配いりません。

まとめ

これまでに当てはまるものはあったでしょうか。年齢とともに体の変化は訪れます。健康診断を受けて終わり、ではなく、前年度の健康診断結果と比較し、自分の身体の傾向を知りましょう。健やかな毎日を送り続けるためには、体に変化があればその変化に合わせて生活を改善していくことがとても大切です。

健康診断後、どのような生活を送ったらよいのかについては、「健康診断の結果で知る!良くないところが見つかったら何を気をつければいい?」の記事をご覧ください。