尿は身体の健康状態を示す重要なサインです。尿の出方などの自覚症状や、尿の量、色などひとつの異常だけでは病気と判断することは難しく、ほかの検査と総合して病気の診断が行われます。尿検査で異常があるといわれた場合、どのような病気の可能性があるのでしょうか?
尿検査で見ている項目と、そこから分かる病気について詳しく解説します。
尿検査の種類と検査でわかること
尿検査は健康診断や病気の原因を探るときなど、広く一般的に行われる検査です。
正常な尿の成分や尿が作られるメカニズムについては、こちらの記事「尿が泡立つのは糖尿病のサイン?!尿が伝える健康状態」をご参照ください。
一般的に行われる尿定性検査は、カップに採取した尿を試験紙に適量垂らして、試験紙の色の変化を確認します。試験紙が変色しなければ陰性(-)、わずかに変色すれば疑陽性(±)、はっきりと変色すれば陽性(+)で、その変色の色調によって強陽性(2+)、(3+)と判定されます。
そのほか、試薬による検査なども行われます。
尿タンパク
正常な尿にはタンパク質が出ることはありませんが、腎臓の働きが悪くなると、身体に必要な成分であるタンパク質が腎臓で再吸収されずに、尿に混ざって出てきます。
このように、尿タンパクの検査は腎臓の働きを見る検査で、急性または慢性の腎機能障害の診断に用いられます。
尿糖
糖(ブドウ糖)も身体に必要な成分として腎臓で再吸収されるため、正常な尿に出ることはありません。腎臓の機能が低下している場合や、血中の糖が腎臓の処理機能を超えて高い場合には、尿に糖が出てきます。尿糖が検出された場合は、糖尿病の可能性があります。
尿潜血反応
尿潜血とは、尿に血液が混じっている状態です。腎臓や尿路(尿管や膀胱、尿道口)から出血している場合に検出されます。尿が赤みをおびていたり、血塊が混じっていたり、目で見て出血を確認できる場合もありますが、検査をしなければ分からないことも多くあります。
尿潜血反応がみられた場合は腎臓や尿管、膀胱などの病気が疑われます。ただし、疲労などによって一時的に尿潜血が出ていることも考えられるので、診断を確定させるためには複数回の検査を行います。
尿ビリルビン
ビリルビンは、胆汁に含まれる色素です。通常、肝臓から胆汁に排泄されるため、尿には排出されません。しかし、胆汁の流れが悪くなるとビリルビンは血液中に増え、腎臓から尿へと排出されるようになるのです。ビリルビンが含まれると、尿は褐色になり、黄色い泡が出るようになります。
ビリルビンの陽性反応が出た場合は、急性肝炎や肝硬変、胆道閉塞といった病気の疑いがあります。
尿ウロビリノーゲン
ウロビリノーゲンとは、古くなった赤血球が肝臓などで分解され、ビリルビンという胆汁色素となって腸内で分解、生成されたものです。その一部が肝臓から血液に入り、腎臓を経て尿に排出されます。尿が黄色いのはこのウロビリノーゲンによるもので、正常な尿からはわずかにウロビリノーゲンが検出されます。
急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変などで肝臓の働きが悪くなると、尿中のウロビリノーゲンの量が多くなります。
またウロビリノーゲンは検出されない場合も異常で、胆汁の流れが悪くなる疾患(胆道閉塞など)で尿ウロビリノーゲンが陰性となります。
尿pH(ペーハー)
尿のpH(水素イオン濃度)を測る検査で、いわゆる酸性・アルカリ性を調べます。健康な人の尿は基本的に6.5程度(4.5~8.0)で、弱酸性を示します。しかし何らかの病気である場合、常に酸性・アルカリ性のどちらかに傾いてしまうのです。
常にアルカリ性の場合をアルカローシスといいます。アルカローシスと判定された場合、腎盂腎炎や膀胱炎、尿道炎などの感染症が原因として考えられます。
一方、常に酸性の場合をアシドーシスといいます。アシドーシスと判定された場合、飢餓や激しい下痢、発熱、フェニルケトン尿症という病気などが考えられます。また、尿が酸性の場合は腎結石や尿管結石ができやすくなります。
尿沈渣
尿を遠心分離機にかけ、沈殿した物質を調べる検査です。
尿の中にどのような物質が多く含まれているかは、肉眼では分かりません。顕微鏡で拡大して観察すると、きれいな尿でも病的な沈殿物がみられたり、濁っていても正常な成分しかみられなかったりします。
何らかの成分が多くみられた時には、それぞれ以下のような病気を疑います。
- 赤血球:腎盂腎炎、急性糸球体腎炎、膀胱炎、尿道炎、腎腫瘍、腎結石など
- 白血球:腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎など
- 上皮細胞:慢性腎炎、糸球体腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群など
- 円柱細胞:腎結石、痛風、重度の肝障害など
※上皮細胞は、健康であっても女性の尿には多くみられることがあります。
上記の検査のほかに、水に対する比重を調べることで腎臓の機能をはかる尿比重検査や、糖尿病の状態を見る尿中ケトン体検査などがあります。
健康診断で尿検査を受けるときの注意とは?
尿タンパクや尿糖は、病気でない場合にもわずかに(±~+)検出されることがあります。激しい運動や疲労、ストレスなどでも検出されることもあり、また食事の影響も受けるため、食直後の検査では正しい結果を得ることはできません。また、女性の場合、月経中は尿を採取する際に血液が混入する可能性が高くなります。
健康診断を受ける場合は、多忙や体調不良、月経中などの時期をさけ、食事時間の指示を確認しましょう。
また、尿を採取するときは、出はじめの尿は採取せず途中の尿を採取しましょう。これは中間尿採取といい、尿道口付近の雑菌を尿に混入させないための採取法です。
試薬で行う定性検査には尿は5~10mlほどあれば充分ですが、50mlほどあれば良いとされています。
尿検査で異常と言われたら?尿の異常から分かる病気とは
糖尿病
健康診断で尿糖が出ていると言われた場合に、まず疑われるのがこの糖尿病です。
血液検査の血糖値と合わせて診断しますが、尿糖も血糖も1日~数日の節制で正常値になる場合があります。正確に診断するために、おおむね3か月間の血糖値を見るHgbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という血液検査が行われます。
糖尿病の詳しい検査、診断についてはこちらの記事「専門医に聞く!糖尿病の診断と、診断に必要な検査」をご参照ください。
腎臓疾患
尿タンパクや尿潜血が出ている場合には腎臓疾患の疑いがあります。血液検査で腎臓の機能を評価し、より詳しい尿検査を行います。
クレアチニンクリアランス検査
クレアチニンとは、体内でエネルギーとして使われたタンパク質の老廃物で、腎臓でろ過され、尿中に排泄されます。
クレアチニン・クリアランス検査は、血液中と尿中のクレアチニンの量を測定、比較し、腎臓の働きを調べる検査です。
PSP検査
PSP検査は、検査用の色素を静脈より注入し、どの程度の時間でどの程度の量が排出されるかを調べることで、腎臓の排泄機能をはかる検査です。さらに必要に応じて、造影検査などの画像診断や腎臓の組織を直接採取する生検検査が行われます。
腎臓疾患について詳しくはこちらの記事「静かな恐怖~CKD(慢性腎臓病)~ あなたの腎臓、大丈夫!?」をご参照ください。
尿路感染症
尿潜血が出ている場合は尿路感染症の疑いがあります。
代表的なものは膀胱炎ですが、膀胱炎の場合は排尿時痛、残尿感、排尿切迫感などの自覚症状があるため、これらの症状と合わせて診断されます。また発熱や腰痛、全身倦怠感を伴う場合は、腎盂腎炎の可能性もあります。
これらの感染症に対しては速やかに抗生物質の投与による治療が開始されますが、これと並行して原因となる細菌を特定するための尿培養検査が行われます。
まとめ
尿は、腎臓の働きや尿路に起こる異常を表す重要な役割があります。比較的簡単にできる検査で、多くの病気の診断の足がかりになりますが、尿検査だけでは診断はできません。また、正確な結果を得るためには採取の時間や方法などにも注意が必要です。
健康診断や病院で検査を受ける場合には、これらのことを理解しておきましょう。