インフルエンザにかかると、高熱や身体の痛みなどの症状が出ます。その症状だけでも身体には十分な負担ですが、インフルエンザにかかったときに最も注意しなければならないのが、合併症として起こるインフルエンザ脳症です。

ここでは、インフルエンザ脳症の症状や予防についてまとめます。

目次

インフルエンザ脳症とは

インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルスの感染が原因で起こる脳症のことです。

では、(急性)脳症とは何でしょうか。

実は明確な「脳症」の定義はありません。一般的には、「ほとんどの場合感染症に続いて起こり、急性に発症して意識障害を主な症状とする症候群」と理解されています。つまり、何らかの感染症により、急性に意識障害が進行・持続する状態です。

インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルスの感染がきっかけでこの状態になったものです。

急性脳症はどの年齢でも起こりますが、小児期(特に乳幼児期)に多いです。きっかけとなる感染症はウイルスが最も多いですが、細菌、ウイルスやマイコプラズマなども原因となることがあります。

インフルエンザ脳症の原因は「ウイルスの感染」

インフルエンザ脳症はインフルエンザウイルスの感染で引き起こされる急性脳症です。

脳症は、ウイルス自体が脳や脳を覆っている膜(髄膜)に炎症を起こしているわけではありません(脳や髄膜に炎症を起こす病気は、脳炎・髄膜炎と呼ばれます)。

脳症では、感染によって強く過剰な炎症が引き起こされ、炎症性サイトカインと呼ばれる物質が産生されます。この炎症性サイトカインが血管の障害や細胞を取り巻いている膜の障害を引き起こし、その結果脳がむくんでしまうこと(脳浮腫:のうふしゅ)が原因で様々な症状が起こると考えられています。

インフルエンザ脳症の診断基準と症状

インフルエンザ脳症の診断基準の必須項目は、下記の2点です。

  • 意識障害を呈していること
  • インフルエンザウイルスの感染が確定していること

このうち、意識障害はインフルエンザ脳症の最も重要で特徴的な症状といえます。インフルエンザ脳症では一般的に、呼びかけても反応しない程の意識障害を呈します(ゆさぶりや痛み刺激で反応する、あるいはそれでも反応しない)

また、インフルエンザウイルスにかかっているかどうかの検査は、最もよく行われる迅速検査も含め、種々の検査で確かめます。

加えて、インフルエンザ脳症の診断基準には「参考となる項目」もあります。参考となる項目としては発熱けいれん異常言動・行動、脳がむくむことで起こる症状である嘔吐乳頭浮腫(にゅうとうふしゅ:視神経の障害で嘔気・嘔吐・視力低下などが起こる)・呼吸状態の変化瞳孔の異常などがあります。

これらの診断基準と、症状・検査とを合わせて診断します。

インフルエンザ脳症は予防できる?

子供に手洗いをさせるお母さん

インフルエンザ脳症は、発症した場合の死亡率が約30%で、約25%で後遺症を残すと言われており、非常に重篤で問題となる合併症です(日本小児神経学会より)。

インフルエンザ脳症を予防するために最も有効とされているのは、インフルエンザワクチンの接種です。ワクチンの接種は、インフルエンザ脳症だけではなく肺炎などの重篤な合併症の予防に有効といわれています。

もちろん、ワクチンでも100%予防できるというわけではありません。しかし、他に有効な予防法がないのが現状です。インフルエンザ脳症はいったん発症すると治療は難しいので、ワクチンを接種して予防に努めましょう。また、インフルエンザに感染しないようにするための 手洗い・うがいも大切です。

まとめ

インフルエンザは感染力の強いウイルスです。インフルエンザに感染すると、高熱・咳・鼻水・関節痛・全身倦怠感などの症状が出現します。それだけでも十分大変です。しかし、インフルエンザに感染した時に最も注意しなければいけないのがインフルエンザ脳症です。

インフルエンザ脳症で一番重要な症状は意識障害です。少しでも意識障害が疑われるようなとき(呼びかけても反応がない など)にはすぐに医療機関を受診しましょう。インフルエンザにかかった場合には注意深く経過をみることが必要です。