ものが二重に見えることを「複視」と言います。二重に見えると聞くと「乱視かな?」と思うかもしれませんが、ものが二重に見えるのは乱視だけとは限りません。目の病気だけではなく、体の病気でも二重になって見えることがあるのです。覚えておきたい複視について、医師・安倍 勇先生による監修記事で詳細を見ていきましょう。

目次

複視とは

目を抑える

複視とは、ものを見た時に二重に見えることをいいます。

複視には「片眼性複視」「両眼性複視」とがあります。

片眼性複視

片目を隠して見た時に二重に見えるのが、片眼性複視です。目の屈折異常や目の病気が原因と考えられ、ものがダブって見える乱視はこの片眼性複視になります。目の老化といわれる白内障や、視力に大きく関係している黄斑部の疾患でも起こる可能性があります。

両眼性複視

片目ずつでは一つに見えるけれど両目で見ると二重に見えるのが両眼性複視です。

私達がものを見る時、正常な状態では右目と左目が同じ動きをします。この時にどちらか片方が別の動きをして同じ方向を見ることができないために視線がずれてしまうこと、つまり斜視が両眼性複視の原因で多いとされています。

複視の原因は様々

上を向く男性

片眼性複視では、乱視が原因となっている場合が多いです。もちろん白内障などの目の病気が原因となっていることもありますが、その場合、かすんで見えるなど二重に見える以外の目の異常を感じることも少なくありません。

しかし、見え方だけでこれは乱視だと自己判断するのはやめましょう。眼科を受診し検査をすれば、乱視があるかないか・乱視が複視の原因なのかはすぐにわかります。もしも屈折異常の乱視が原因だった場合は、眼鏡やコンタクトレンズで矯正すれば二重に見える症状も改善されるでしょう。

一方の両眼性複視の場合は、目そのものの異常というよりも、目をキョロキョロ動かす筋肉や目に関係する神経が原因となっている可能性が高いと考えられます。

複視と目を動かす仕組み

子供の目元

私達は当たり前のように目を動かしてものを見ていますが、その目を動かす仕組みも複視と深い関係があります。

眼球には、目を動かすために6本の筋肉「外直筋」「上斜筋」「上直筋」「内直筋」「下直筋」「下斜筋」がくっついています。そこに「外転神経」「滑車神経」「動眼神経」という3つの神経が指令を出し、コントロールしています。

これらに異常があると、両目を同じように真っ直ぐすることができなくなり、斜視となってものが二重になって見えるようになるのです。

乱視の場合や、もともと斜視だったという場合は、急に二重に見えるということはありません。今までは普通に見えていたのに急に二重に見えるようになった・また目の向きによって症状がひどくなるなどの場合は、脳の病気や血管障害、全身性の病気などの可能性があります。自己判断はせず、眼科や脳神経外科などを受診するようにしましょう。

まとめ

複視では、単眼性複視か両眼性複視かによって対処法も異なってきます。単眼性複視の場合は緊急を要するものは少なく、治療で改善する場合も多いで す。一方、急に両眼性複視が出た場合は脳疾患など緊急を要する症状の場合もあるため、早めに医療機関を受診するようにしましょう。