脳出血による死亡率は1965年の時点で世界で1番高く(日本神経治療学会より)、沢山の人が脳出血で亡くなっていました。今は高血圧の治療が進んできたことや、食生活の改善などで脳出血の死亡率は低下してきてはいますが、年間に約3万3千人の人が亡くなっています(日本生活習慣病予防協会より)。ミュージシャンの桑名正博さんや、ルパン三世の声でお馴染みだった声優の山田康雄さんも脳出血で亡くなっています。
まだまだ怖い脳出血。原因は何で、どういう症状に注意しなければならないのでしょうか。
脳出血とくも膜下出血とは違う
さて、「脳出血」と呼ばれているものは、知名度の高いくも膜下出血とは区別されることをご存知ですか?
みなさんは、頭蓋骨の中で出血したものをひっくるめて「脳出血」と呼んでいるかもしれませんが、厳密には違います。頭蓋骨の中には硬膜やくも膜があって、その内側に脳が収まっています。脳に栄養を送っている血管が破れて、そこから脳の中に出血するものを脳出血といいます。
くも膜下出血は脳の中ではなく、脳の表面の血管が破け、くも膜と脳の間の隙間に血液が出てしまうことをいいます。
脳出血の原因は?
脳出血の原因は、長年の研究や調査で色々分かってきました。現在、いわれている原因は主に以下の5つです。
1.高血圧
血圧の値が高ければ高いほど、脳出血の発症率が高くなることがわかっています。脳出血の患者さんの46%は高血圧の治療中に、24%は高血圧で治療をしていなかった人から起こっているとの報告結果もあります(日本神経治療学会より)。
また、高血圧だと言われていなくても、上の血圧が120mmHg以上あると発症する率が高くなるということも報告されていますので、日頃から血圧値は気にしておく必要があるといえますね。
2.食生活
脳出血は上記の通り、高血圧との関連が深い病気です。脂肪や塩分が多すぎる食生活は高血圧を招き、やがて脳出血に繋がるおそれがあるため避けた方が良いでしょう。詳しくは「高血圧を改善するための食事とは?~減塩のポイント~」をご参照ください。
あわせて、神経治療学会のガイドラインでは、脳出血の予防として緑黄色野菜や果物を毎日食べることを推奨しています。
3.お酒の飲み過ぎ
過度の飲酒は、身体のあちこちに様々な影響を及ぼします。1日のアルコール摂取量が60ml(日本酒2合、ビール大瓶2本)を越えると、飲酒をしない人に比べて脳出血やクモ膜下出血のリスクが高くなります。
4.コレステロールが低すぎる
え?逆じゃないの?と思うかもしれませんが、コレステロールが低い状態と高血圧が重なると脳出血のリスクが高くなることが分かっています。
5.血液をサラサラにする薬
血液が固まり難くする薬(ワルファリン)は、脳出血のリスクを2倍にするとの報告があります(日本集中治療教育研究会 慈恵ICU勉強会資料より)。ただし、抗凝固剤は脳梗塞や心筋梗塞の予防には効果的であるため、服用に際しては担当の医師とよく相談してください。
脳出血で注意が必要な症状とは?
くも膜下出血はカナヅチで殴られたような強烈な頭痛が代表的な症状と言われていますが、脳出血はどのような症状が起こるのでしょうか?典型的な症状は以下の5つです。
1.片方の手や足の麻痺や痺れ
脳出血が右側の脳に起こった時には左側の麻痺や痺れが起こり、左の脳に起こった時には右に症状が出ます。
麻痺は歩けないほどの症状の時もありますが、顔だけに起こったり、手足のみに起こる場合もあります。
2.ろれつが回らない、言語障害が出る
ろれつが回らなくなり何を言っているのか分からなくなることがあります。またそれだけではなく、頭で思ったことが言葉にならなくなる、人が言っていることが理解できなくなるなどの障害が起こります。
3.脱力感やめまい
足に力が入らず立てなかったり歩けなかったりすることがあります。また、めまいのため、フラフラすることがあります。
4.物が2つに見えたり、視野が欠けたりする
複視と呼ばれますが、物が二重に見えることがあります。また、片方だけ見えなかったり、ぼやけたりする場合もあります。
5.激しい頭痛
出血のため脳の中の圧力が高くなり、頭痛がすることがあります。頭痛と一緒に吐気がすることも多いです。
脳出血の場合は、頭痛と麻痺・痺れなどの症状が一緒に出ることが多いです。
症状があった時、どうすればいい?
もし脳出血を疑うような症状がある時は、可能な限り早く病院を受診します。
病院ではすぐに、CT検査などの画像検査で脳の中に異常があるかないかを調べます。脳出血があれば、この画像検査ですぐに診断がつきます。
出血はだんだん広がり脳にダメージを与えます。早く病院へ行くことで、脳のダメージを最小限で抑えることができます。一人で家にいる時は、すぐに救急車を呼びましょう。
まとめ
脳出血は原因を取り除き予防することができます。最大の予防は常に血圧を気にして、適正な血圧値にコントロールすることです。日頃から血圧コントロールと、野菜や果物を沢山食べて健康的な生活を送ることがポイントです。