球技の最中にボールが眼に当たってしまった、取っ組み合いの喧嘩で眼の周囲に相手の腕が当たってしまった。眼やその周囲をぶつけてしまう「眼球打撲」は、どれだけ注意していても起こりうるものです。
眼をぶつけた後、違和感が残る場合は何らかのトラブルが生じているかもしれません。どんな病変が起こりうるか、また眼科を受診する際には眼科医に何を伝えるべきか解説します。
こんな症状が見られたら、すぐに受診
眼球は、骨に囲まれたくぼみの中に収まっています。大切な感覚器官ですから、ちょっとした衝撃では損傷を受けないように守られてはいますが、眼球自体は決して頑丈な組織ではありません。
特に下記のような異常がみられた場合、すぐに症状がおさまったとしても必ず眼科を受診してください。ときには時間が経ってから、後述するような病変が生じることもあるのです。
- かすんで見える
- 充血
- 痛みがある
- 出血している
- ものが二重に見える
- 飛蚊症(視界に黒い虫やゴミのようなものが見える)
- 視力が落ちた
- 眼を動かしにくい
眼球打撲で起こりうる病変って?
眼やその周囲をぶつけたとき、下記のような合併症が起こることがあります。
眼瞼裂傷
まぶたの切り傷である眼瞼裂傷は、出血を伴う例が多くみられます。
1~2週間ほどで自然に良くなる例もありますが、傷の程度によっては縫合が必要となることがあります。治療しても変形が残った場合、まぶたを閉じるときに支障が生じる場合もあるので、眼科医に相談の上で治療を受けてください。
角膜びらん
ボールが眼を直撃したときなどに起こりうる病変です。黒目を覆う膜である角膜に傷がついた状態で、強い痛みを伴うことがあります。
出血はせず、視力低下などの後遺症が残ることも多くありません。しかし、角膜びらんを繰り返す状態(再発性角膜びらん)になる患者さんがいます。
前房出血
ぶつけた衝撃により、角膜と虹彩の間(前房)に起こる出血を前房出血といいます。まぶしさ(軽症例)や視力の低下(重症例)など、程度によって様々な症状が見られます。
治療を受ければ快方に向かいますが、受傷後2~7日ほど後に再度出血することもあります。
網膜振盪症
眼を強くぶつけたことで、網膜が一時的にむくんだ状態が網膜振盪症です。1~2週間程度で自然治癒することが多いですが、打撲の程度によっては視力の低下や視野障害をきたす場合があります。
網膜剥離
強い衝撃により、網膜が裂けたり、眼球の壁からはがれてしまったりすることがあります。視界に光が走ったり、黒い虫やゴミのようなものが見えたり(飛蚊症)といった症状が起こります。
網膜剥離は、速やかに眼科で治療を受ける必要があります。はがれた網膜を、手術やレーザーなどで戻す治療が行われます。
外傷性白内障
白内障は、ものを見るときにピントを合わせる役割を担う水晶体が白く濁る病気です。多くは老化が原因で生じますが、怪我によっても起こることがあります。
白内障では、かすんで見えたり、眩しく感じたりといった症状が生じます。濁った水晶体をもとに戻すことはできないため、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入する手術を行います。
急性緑内障
緑内障は、眼圧(眼の中の圧力)が上昇することで視神経が障害され、視野が狭くなってしまう病気です。通常はじわじわと症状が進行しますが、眼の外傷により眼球内で出血が起きた場合、眼圧が急上昇することで急性緑内障を発症することがあります。
急性緑内障では、目の痛みや充血のほか、吐き気や頭痛などを生じることもあります。ときには失明に至ることもあるので、できるだけ早く眼科を受診してください。
眼窩壁骨折
眼窩(がんか)とは、眼球のおさまっている骨のくぼみのことです。この骨の壁部分(下側や内側)は薄い骨でできているため、眼やまぶたに衝撃を受けると骨折することがあります。
眼が落ち窪んだり、ものが二重に見えたり、吐き気を生じたりといった症状がみられます。程度が軽い場合は経過観察となりますが、症状がひどい場合は手術を行います。
眼科を受診するとき、医師に伝えてほしい5つのこと
眼球打撲の合併症には、失明につながりかねないような重篤なものがあります。そのため、少しでも気になる症状がある場合は眼科を受診し、医師の診察を受けてください。
その際、眼科医に下記のようなことを伝えると、より正確な診断につながります。
- ぶつけた際の状況(できるだけ詳しく)
- ぶつけたのは何時ごろか
- 眼鏡やコンタクトレンズを使っているか
- どのような応急処置を行ったか
- どんな自覚症状があるか
さいごに
眼やまぶたをぶつけたときに起こりうる症状や合併症を解説しました。まぶたが少し腫れた程度であれば、しばらく経てば自然に快方に向かうでしょう。しかし、中にはすぐに適切な治療を行わなければ失明に至る合併症もあります。
眼をぶつけた後、見え方の異常や充血・痛みなどの症状を自覚した場合、できるだけ早く眼科を受診してください。適切な受診と治療が、あなたの視機能を守ることにつながるのです。