がんの治療に用いられる、抗がん剤。その名前や存在は知っていても、具体的にどんな薬なのかを知っている人はそれほど多くないと思います。

日本で使われている抗がん剤はたくさんあり、薬の作用の仕方や由来などで複数のグループに分けられます。内服したり、静脈注射したりと、使い方も様々です。今回は抗がん剤の種類や作用の仕方についてご紹介します。

目次

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抗がん剤とは?

がん細胞には無限に増殖する・隣り合う組織を侵していく(浸潤)・体内のあらゆる組織に広がる(転移)という特徴があります。抗がん剤の目的は、その特徴を抑えるということです。

抗がん剤は、がんが細胞分裂する過程に影響を与えて細胞の増殖を妨げたり、細胞の成長に必要な物質を作らせないようにする・あるいは過剰に作らせてがん細胞の増殖を抑え、死滅させたりします。全身に転移したがんを抑えたい時や、はじめから全身的に発病するがん(白血病など)の治療に用います。

抗がん剤はがん細胞だけではなく、正常な細胞にもダメージを与えてしまう場合があります。そのため、効果と副作用のバランスとQOL(生活の質)の改善を考慮しながら使用することが非常に重要です。

また、1種類の抗がん剤だけでなく数種類の抗がん剤を組み合わせて使う「多剤併用療法」により効果を強くして副作用を弱めるというような、QOLを高める工夫がされることもあります。

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抗がん剤の種類は?

ここからは、いくつかの種類の抗がん剤を紹介します。

1.アルキル化剤

最も歴史がある薬です。

がん細胞のDNA構造を変化させることで、がん細胞の分裂・増殖を防止します。

例:シクロホスファミド、イホスファミド、メルファランなど

2.代謝拮抗剤

がん細胞が増殖するために必要な物質と似た構造をしているため、がん細胞の中に入りやすいという特徴があります。DNAの合成を止めて、がん細胞の分裂・防止を防ぎます。

例:シタラビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシルなど

3.抗がん性抗生物質

ある種のカビから作られる物質です。DNAやRNA(遺伝物質の一種)の合成を止めて、がん細胞の分裂・増殖を防止します。

例:塩酸ブレオマイシン、塩酸イダルビシン、マイトマイシンCなど

4.植物アルカロイド

天然に存在している植物を原料としています。がん細胞の分裂を止めて、増殖を防止します。

例:エトポシド、パクリタキセル、塩酸イリノテカン

5.ホルモン療法剤(内分泌療法)

がんの中には乳がんのように、ホルモンがあると増殖しやすくなるタイプがあります。

そのため、原因となるホルモンをがん細胞に与えないようブロックすることでがん細胞の増殖をおさえることができます。

この方法は内分泌療法と呼ばれます。他の抗がん剤による治療より効果は弱いもののQOLが高く、治療を長期間継続できるので、乳がんの術後補助療法などに用いられています。

例:アナストロゾール、クエン酸タモキシフェン、フルタミドなど

6.その他

白金錯体:がん細胞内のDNAと結合し、がん細胞の分裂・増殖を防止します。

L-アスパラギナーゼ:がん細胞が増殖するのに必要なL-アスパラギンを分解します。

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抗がん剤の副作用とその対策とは?

体力が低下していたり感染症にかかっていたりすると、抗がん剤の副作用が起こりやすくなります。

抗がん剤が原因で起こる可能性がある副作用について、対策と予防法をご紹介します。

1.感染症

抗がん剤による治療を開始して数日後~2週間後すると白血球が少なくなり、正常に回復するまで3~4週間かかることがあります。

白血球が少なくなると抵抗力が低下して、細菌やウイルスに感染しやすくなります。感染を予防するために、帰宅したら手洗い・うがいをよく行いましょう。

2.貧血

貧血は赤血球が十分に作られないことで起こり、手足の先が冷たく感じたりしびれたりすることがあります。

貧血が原因で足元がふらつくことがあるので、動作をゆっくり行うようにしましょう。

通常の貧血と違い、鉄分やタンパク質の多い食べ物を食べたからといって直接の貧血改善にはつながりません。特定の栄養分を意識するのではなく、バランスの良い食事を心がけてください。また、シャツを1枚多く着るなどして保温すると血流が良くなります。

3.出血

抗がん剤による治療を開始して1~2週間経つと、出血した時に止血する働きのある血小板が少なくなり、正常に回復するまで3~4週間かかることがあります。

血小板が少ないと軽く触れただけで内出血したり、少しのことで出血しやすくなります。

転倒や打撲に注意し、靴下などのゴムで締め付けないようにするなど、できるだけ怪我をしないように気をつけましょう。

4.吐き気

吐き気は薬の影響のほか精神的な影響も受けやすく、病気に対する不安などでも症状が強くなることがあります。

吐き気の予防には、効果の高い吐き気止めが開発されています。

5.口内炎

治療終了後2週間くらいまでは口内炎が起こる可能性があります。

悪化させないためには、口の中を清潔にすることが重要です。毎食後に柔らかい歯ブラシで歯磨きをしたり、うがいをしたりするようにしましょう。

6.脱毛

抗がん剤は細胞分裂の活発なものに影響を与えます。

ある種の抗がん剤では、髪の毛の根本にある毛母細胞に影響を与えて、脱毛が起こることがあります。

脱毛しても、治療が終われば3~6か月で髪はまた生えてきます(ただし、髪質が変化することがあります)。精神的負担の可能性を考慮し、担当医とよく相談し納得したうえで治療を受けましょう。

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まとめ

抗がん剤は効果的な治療法ですが、薬の種類や体質により副作用が出る可能性があります。担当医とよく相談し、メリットとデメリットを考慮して納得したうえで治療することが大切です。