子宮頸がんの原因となる、ヒトパピローマウイルス。実は、他の病気の原因にもなりうるってご存じでしたか?いったいどんなウイルスなのか、どうやって予防すればいいのかをご説明いたします。

目次

ヒトパピローマウイルスとは?

球状の形をしたDNAウイルスの一種で、性交渉によって女性の子宮頸部や男性の陰茎に感染します。現在100以上の「型」があることがわかっています。

この型によって、ハイリスクグループ(がんになりやすいもの)とそうでないものに分けられます。ハイリスクグループは、16型、18型、31型、33型…と現時点では15種類あることが判明しています。日本では子宮頸がんのほとんどがヒトパピローマウイルス感染によるものです。うち60~70%が16型と18型によるものであり、特に20~30代で多いことがわかっています(HUMAN+より)。

感染するとどうなる?

ヒトパピローマウイルスはほとんどの成人女性が一生のうちに一度は感染すると言われています。感染しても、90%は2年以内に自然に治癒します日本産科婦人科学会より)。しかし残りの10%は体内に残り、子宮頸部の細胞を徐々にがんの前段階である異形成という状態に変化させていきます。異形成には軽度・中等度・高度の3種類がありますが、このうち高度異形成まで進んだものは、いわば「がんの一歩手前」ですから、治療をします。

主な治療方法としては、レーザーでその部分だけを焼く「子宮頸部レーザー蒸散術」と、子宮頸部を1~1.5cm切り取る「子宮頸部円錐切除術」があります。
レーザー蒸散術のほうがお手軽ではありますが、再発のリスクがやや高いです。
円錐切除術は麻酔をかけて数日入院をする場合がありますが、最近は無麻酔で日帰りで行える施設もあります。
また、レーザー蒸散術と異なり摘出したものを顕微鏡で見ることで「それ以上の病変がないか」を検査できます。

子宮頸がんまで進むと、手術で子宮を摘出したり、放射線療法を行ったりします。転移などがあれば抗がん剤による治療も行われます。

他の病気の原因にもなる

ヒトパピローマウイルスが原因となる病気は子宮頸がんだけではありません。

尖圭コンジローマ

外陰部や陰茎に3mm程度のとさか状のイボのようなものがたくさんできます。痛みはありませんが、妊娠すると大きくなる傾向があります。クリーム状の塗り薬などで治療するか、手術で切除することもあります。6型、11型が主な原因です。

咽頭乳頭腫

尖圭コンジローマをもつ母体から生まれた赤ちゃんに、ヒトパピローマウイルスが産道感染することによってできる良性の腫瘍です。感染する可能性は高くありませんが、一度できると再発しやすく、何度も治療しているうちにその部分が硬くなり、呼吸障害の原因となることがあります。

感染を防ぐため、分娩時に尖圭コンジローマがある方は帝王切開をします。

このほか、口腔内のがんや男性の陰茎癌、尿路上皮癌についても、数多くの研究で関連が指摘されています。

予防するには?

コンドーム-写真

予防の第一歩は性交渉の際にコンドームを使用することです。コンドームを使用すれば他の性感染症も防ぐことができます。しかし、外陰部にもヒトパピローマウイルスが感染している場合は、コンドームを付けていても移る可能性があります。

そのため、ワクチンの接種は多くの国々で導入されています。特に子宮頸がんの原因になりやすいとされている16型、18型を対象とする製剤と、それら2つに加え尖圭コンジローマの原因となる6型、11型の4種を対象とする製剤があります。

日本では接種部位の慢性的な痛みなどの副反応があったため、いったん積極的な勧奨を控えています。しかし明確な因果関係がないことから、2015年8月に日本産婦人科学会は「子宮頸がん予防ワクチン接種の勧奨再開を求める声明」を出しており、WHOも日本の現状について非難しています。

ワクチンは予防のためのものであり、既にかかったウイルスには効果がありません。また、日本の子宮頸癌の30~40%は16型、18型以外のヒトパピローマウイルスを原因とすることから、定期的な子宮頸がん検診が推奨されています。1~2年に1度は子宮頸がん検診を受けましょう。一度検診を受けてみようと思った方は、ぜひレディースドックを予約してみてください(人間ドックのここカラダのページが開きます)。

まとめ

子宮頸がんは若い女性に増えています。もし子宮頸がんにかかってしまったら、子宮を摘出するなど体へ大きな負担がかかる治療を行わなければなりません。そうならないために、ヒトパピローマウイルスのことをよく知って、感染を予防する、検診を受けるといった対策が大切です。