HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンをご存じでしょうか。
子宮頸がんワクチンとも呼ばれ、この予防接種を受けることで将来、子宮頸がんになるリスクを減らす効果があるとされています。

この記事ではHPVとは何なのか、ワクチンの効果や安全性についてご説明します。

目次

HPV(ヒトパピローマウイルス)とは

HPVは皮膚や粘膜に感染するウイルスで、性行為などによって感染します。
HPVに感染する割合は、性行為を行う女性の50~80%と報告されており、予防しなければ多くの方が一生に一度は感染するウイルスといわれています(厚生労働省より)。

HPVに感染しても、90%以上の場合で、ウイルスは自然に消滅します。ただし、この自然なウイルスの排泄が起こらない10%弱の方では、持続感染となり、やがて子宮頸がんの原因となります。

子宮頸がんとは

子宮頸がんは、子宮の頚部(膣と子宮の境目)に生じるがんです。年間約10,000人が発症し、3,000人が亡くなっています(厚生労働省より)。がんは一般的には高齢な方ほど生じやすい病気ではあるものの、子宮頸がんは若い女性にも発症します。

初期症状はほとんどありませんが、性器からの出血がみられることがあります。生理以外のとき、特に性行為などの物理的な接触によって生じることが知られています。

HPVワクチンの効果

HPVワクチンはHPV感染の予防により、子宮頸がんの発症を防ぐためのワクチンです。

HPVには100以上の種類がありますが、このうち子宮頸がんと関連があるのは1618です。HPVワクチンはこれらの型に対して予防効果を示し、HPV感染による子宮頸部の異形成(がんになる手前の病変)を90%以上予防したと報告されています(厚生労働省より)。

このことから、HPVワクチンで期待される効果として、子宮頸がんによる死亡者数の減少(年間-約2,000人)、子宮頸がん患者数の減少(年間-約7,000人)などが考えられています(日本医師会より)。

接種回数・時期

本邦のHPVワクチンにはサーバリックスガーダシルの2種類の薬剤がありますが、いずれも接種回数は3です。以下に標準的なスケジュールを示します。

サーバリックス:中学1年生になる年度に初回接種を行い、その1ヶ月後に2回目、6ヶ月後に3回目の接種を行う。

ガーダシル:中学1年生になる年度に初回接種を行い、その2ヶ月後に2回目、6ヶ月後に3回目の接種を行う。

HPVワクチンの副反応にはどんなものがある?

HPVの主な副反応としては、接種部位の痛み・腫れ、関節痛、頭痛、蕁麻疹、めまい、しびれ発熱などが報告されています。

ワクチンとの関連性が立証されていないも含めると、接種後に生じた重大な副反応として、稀にアナフィラキシー、ギランバレー症候群、急性散在性脳脊髄炎 (ADEM)が生じる可能性があるとされています。

HPVワクチンの安全性は大丈夫なの?

HPVワクチンは日本でも定期接種として定められていますが、現在では積極的な接種が差し控えられています。
理由は、以前HPVワクチンを受けた方に複合性局所疼痛症候群(CRPS)運動障害がみられた報告があり、そういった体調不良とワクチンに関係があるのか、あるとすれば副反応の頻度などの調査をするため、安全性を考えて差し控えた経緯があります。

複合性局所疼痛症候群 (CRPS)は骨折等の外傷をきっかけに、慢性的に痛みが生じるようになる原因不明の病気です。
ですが調査の結果、ワクチンとの因果関係は認められませんでした。

2014年10月現在、HPVワクチンの予防接種は58ヶ国で実施されており(日本医師会より)、WHOも「HPVワクチンの安全性に関しては系統的に調査されており、同ワクチンの現在の推奨を変えるような問題は見つかっていない」という声明を出し、日本の政策を批判しています。

少なくとも現在、子宮頸がんの予防より優先すべきワクチンの危険性については根拠が見つかっていないと考えて良いでしょう。

まとめ

HPVワクチンはメディアを通して副反応が強調されて報道されてしまったこともあり、不安を感じている方もいらっしゃるかと思います。

ですが少子化が進んでいる日本では、HPVによって若い女性が子宮を失うこと、ましてや命を失うことは避けなければいけない問題です。
正しい知識をもとに、1人1人が考えて行動をとることが大切です。