歯のトラブルの代表といえば、虫歯や歯周病を思い浮かべるのではないでしょうか。その中でも虫歯が進行することで起きる歯髄炎は、歯のズキズキとした強い痛みの原因になっていることがあります。ここでは歯髄炎とはどのような状態なのかを見てみましょう。

目次

歯髄はどこにある?

歯髄とは、歯の中にある神経と血管でできた部分のことです。

歯の表層(エナメル質)から離れた奥の方にあるので、健康な歯であれば基本的に痛みを生じることはありません。

歯髄はどこにある? 歯の中にある神経と血管でできた部分のこと-図解

歯髄炎の原因で最も多いのは虫歯

歯髄炎の原因で最も多いのは虫歯です。また顔を強く打ち付けるなどの外傷や、歯ぎしりによる歯髄への刺激によって歯髄炎になることもあります

虫歯は次のような段階を経て進行します。

虫歯の進行の仕方

  • C1歯の表面にあるエナメル質だけが虫歯になっている状態。虫歯の部分だけを削り、穴を埋める治療を行います。
  • C2:エナメル質の奥にある象牙質にまで虫歯が進行しており、冷たいものが歯にしみます。虫歯の部分を削り、穴を埋める治療を行います。
  • C3:虫歯が歯髄にまで達して歯髄炎を起こしている状態。神経を残せる場合と残せない場合があります。
  • C4:歯の根だけが残り、歯髄が腐敗している状態。抜歯が必要なこともありますが、根管治療によって歯を残せる可能性もあります。

※詳しくは、「歯が痛い!?虫歯の進行度別にみる治療法と受診のめやす」をご参照ください。

虫歯がC3の段階にまで進行すると歯髄が炎症を起こし、冷たいものだけでなく熱いものがしみるようになります。何もしていないときでも歯が痛くなるようだと、歯髄炎はかなり進んでしまっていると考えられます。

さらにひどくなると、冷たさや熱さには反応しなくなります。歯髄の神経や細胞が死んでしまう(壊死)ためです。ただ歯をコツコツ叩いてみると痛みを感じます。最終的には歯の根の先に膿がたまり、その圧力のせいで激しい痛みを覚えます。

歯髄を残せる場合と残せない場合

歯髄炎は「神経を取る」治療の対象となります。しかし、全ての歯髄炎の治療で神経を取る必要があるわけではありません。歯髄炎には神経を残せるものと残せないものとがあります。

神経を残せないのは次のような場合です。

  • 神経のダメージが元に戻らないと判断される場合(不可逆性歯髄炎
  • 骨まで炎症が及んでしまっている場合
  • 痛みの持続時間が長い場合

神経にダメージを受けていても回復すると判断される場合は歯髄を残す治療を行います。また神経のダメージが回復しないと判断されると、神経を取らなくてはなりません。それでも極力、根管治療によってできる限り歯の保存を目指していきます。

反対に長時間持続する、または何もしなくても痛むような痛みがなく、神経のダメージが回復すると判断される場合(可逆性歯髄炎)は神経を残せる可能性が高くなります。

歯髄を残す治療では虫歯になった部分を削り、接着性の高い材料で削った面を封鎖する、または痛みを鎮める薬剤を詰めて歯髄を保護します。痛みが生じないようなら、詰め物や被せものを入れて治療は完了です。

まとめ

歯髄炎は、虫歯が歯髄にまで達したときに引き起こされることが多い症状です。虫歯の中でもかなり進行している段階で、歯の神経を抜かなければならない場合もあります。状況によっては神経を残せるものもありますが、まずは日ごろから口腔ケアをしっかりと行い、虫歯に対しては早い段階から治療することが求められます。