かつて自閉症には、「おとなしく殻にこもって他人とのコミュニケーションを上手く取れない子供」というイメージがありました。また親の愛情不足や過保護など、育て方に問題がある心の病とも思われていました。しかし現在、自閉症は脳の発達が通常と異なるために起こる障害であることが分かってきました。そのような自閉症について、原因や症状を詳しく解説します。

目次

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自閉症の原因

自閉症は脳の機能的な発達の障害により起こる病気ですが、いまだ詳しい原因は分かっていません。自閉症は約500人に1人、症状が軽い人まで含めると、約100人に1〜2人の割合といわれており、性別では男性に多く、女性の数倍の発生頻度です(厚生労働省e-ヘルスネットを参照)。

また、自閉症者の近親者に自閉症が発症しやすいことが知られており、何らかの遺伝的要因があるといわれていますが、その遺伝子の特定など、はっきりしたことは分かっていません。胎内環境や周産期のトラブル、栄養不足、アレルギー、腸内環境の乱れなども関係している可能性が示唆されています。

自閉症に関する間違った認識

初期の研究者が自閉症の原因として、母親の冷淡な養育態度(「冷蔵庫マザー」と称されたもの)を挙げ、長くこの説が信じられてきました。しかし、自閉症は、親の愛情不足や過保護、厳格化などの育て方が原因ではありません

自閉症の症状

子供とくまのぬいぐるみ

自閉症は、脳の機能的な発達の問題によって起こる障害で、発達障害の一種に分類されます。その症状としては以下のようなものがあり、通常3歳までに何らかの症状が見られます。ただ、症状の現れ方は一様ではなく、人によって異なるため、これらの特徴が当てはまらない場合もあります。

1.社会性に関する障害(対人関係の困難さ)

表情が乏しい、目を合わせようとしない、相手の気持ちを読み取りにくい、場の状況や雰囲気が掴みにくい(怒られているのに笑っている)など

2.言葉やコミュニケーションの障害

言葉の発達が遅れている、言葉が出ない、言葉は出ても意味を理解できておらず同じ言葉を繰り返す、長文の会話ができないなど

3.活動や興味が限局的

絶えず手をひらひらさせる、身体を揺らすなどの反復行動、あるものや形、習慣への著しいこだわりなど

自閉症スペクトラムとは

自閉症には知的障害を合併している人もいれば、ほとんど知的障害の傾向がない人、またはIQ(知能指数)が非常に高い人までさまざまです。どこからどこまでが自閉症で、どこからが知的障害なのか明確に区別することは難しく、連続した一連の障害は自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder:ASD)という概念で捉えられるようになりました。

*スペクトラムとは「連続した」の意味

この自閉症スペクトラムの概念とともに、知的障害を伴わないタイプの自閉症(アスペルガー症候群、高機能自閉症)が広く知られるようになりました。

自閉症に合併しやすい障害

自閉症にはてんかんを合併する例も多くあります。てんかんは脳の神経細胞が異常に興奮し、けいれんや硬直、失神を起こす疾患ですが、なぜ自閉症に合併して起こるのかは、はっきり分かってはいません

また、発達障害の一種である注意欠如・多動性障害(ADHD)学習障害を併発する場合もあります。

もしかして自閉症かも?

グループで会話

親は自分の子供が他の子と比べて「発達が遅いのでは?」と思うことがあると思います。

大人の行動を真似て同じ動作をしたり(模倣)、言葉が話せないうちは自分の欲求を指さすことで示したりするのは、子供の発達兆候のひとつです。さらに成長すると人形やぬいぐるみを使ったごっこ遊びが盛んになり、それを通じて色々な関係性を学んでいきます。

こうした発達を示す行動が見られず、言葉や表情、コミュニケーションなどに気になるところがあれば、まずは専門家に相談してみましょう。自閉症に関する相談は、専門医のいる小児神経科のほか、保健所、児童相談所、保健所、児童相談所、療育センター、教育相談所、教育相談所が該当します。

また、大人になって「もしかすると自分は自閉症かも?」と思う人もいます。

自閉症が成長とともに治ることや、大人になってから自閉症になることはありませんが、幼少期には気づかずに成長し、「周りとコミュニケーションが取れない」「空気は読めない言動で浮いてしまう」などの生きづらさを感じている方などが、実は自閉症だったというケースもあります。

大人の自閉症に対しては専門の医療機関は少ないですが、まずは心療内科精神科で相談してみましょう。

まとめ

自閉症とは、脳の機能的な発達の問題によって起こる障害で、社会性やコミュニケーションにおいて様々な症状が現れます。障害が起こる原因ははっきり分かっていませんが、近年自閉症スペクトラムという広い概念で障害を捉えるようになり、子供だけでなく、大人の自閉症も認知されるようになりました。このような自閉症に対する治療に関しては、記事「1人で悩まないで!自閉症の治療法とは」をご参照ください。