注意欠陥多動障害のことをADHD(attention deficit hyperactivity disorder)と呼びます。最近マスコミなどでもよく取り上げられるのでご存知の方も多いはずです。ADHDは発達障害の一種なので、主に子供が抱える障害と思っている方が多いと思いますが、実は今、大人のADHDが注目されています。この記事では、子供のADHDだけでなく大人のADHDの特徴をご紹介します。
ADHDの原因は何?
ADHDの原因は今のところ解明されていませんが、先天性の脳の障害、脳機能の発達異常、心理・社会的な影響という見方が強いようです。また親の養育環境を問題視する傾向がありますが、こうした意見には根拠がなく、ADHDのお子さんを持つ親御さんを不用意に傷つけることになりかねません。
まだまだ不明のことが多いADHDのメカニズムですが、研究は以前からされています。2016年に入り大阪大学の研究チームが、マウス実験により発達障害の発症と特定の遺伝子の関わりを証明するメカニズムを解明したことが報告されています(神経発達障害群の染色体重複による発症の機序を解明)。
そのほか、ADHDは、人口の1~6%に見られるといわれており、決して珍しくありません。子供のころにADHDと診断された人のうちの3分の1~3分の2は成人してもADHDの症状が残っていたという報告があります。また、ADHDと診断された子どもの成長過程を見ると、症状が軽減しつつも継続するケースが多いようです。
ADHDの診断と特徴とは
ADHDは発達障害に含まれていますが、知的障害や自閉症は伴いません。つまり、知能の発達には問題が無く、社会性やコミュニケーションの方法に問題が生じるものの、能力がないわけではないということです。
ADHDには、特有の3つの特徴がありますが、知的障害や自閉症、学習障害とADHDの症状は非常に似通っています。ですから、ADHDの診断は、心療内科医や精神科医などの専門家によって行われます。診断基準として用いられているのは、アメリカ精神医学会の掲げるDSM-Ⅳで、ADHDを3つの型に分類しています。
ADHDの3つの特徴
- 不注意
- 多動性
- 衝動性
ADHDの診断基準(DSM-Ⅳ)
このDSM-Ⅳの特徴は、ADHDで見られる「不注意」「多動性」「衝動性」などの行動を診断基準にしていることです。これらの行動が7歳までに特徴的に見られ、学校や家庭、社会の色々な場面で明らかに不適応を示していることが、診断のポイントになります。
ただし2013年に発表されたDSM-5では、診断年齢を7歳から12歳に引き上げています。また、自閉症スペクトラムとの合併も指摘されています。自閉症スペクトラムは、社会性やコミュニケーションに障害があり、行動や興味の面でこだわりを示すという特徴があります。
ADHDの3つの型
不注意優勢型
不注意が行動の特徴に現れ、多動は伴わないのが特徴のタイプ。気が散りやすい、集中力が続かない、物忘れが多い、内気などが見られ、いじめを受けたり不登校になるケースがある。
多動衝動性優勢型
落ち着きがなく多動で、衝動的な行動が目立つタイプ。
混合型
不注意と多動性・衝動性が混合しているタイプ。ADHDの典型的な型とも言える。感情のコントロールができず、友人関係を築くのが困難。思春期に非行に走るケースもある。
ADHDの症状は大人と子供では異なる

ADHDに見られる3つの特徴の現れ方は、大人と子供で違いがあります。子供の場合、親や学校の先生による指摘がきっかけになりますが、大人の場合は仕事や人間関係、家庭や金銭トラブルなどで悩みを抱え、自分が他の人と少し違っているのではないかと自分で気が付いて診断を受けるケースが多いようです。
子どものADHDでよくある症状
- 授業中、じっと座っていられない
- 周りの状況を気にせず、よく喋る
- 並んで順番を待つことができない
- 自分のしたいことを他の人を遮ってやってしまう
- 集中力が無く、何かを最後までやり遂げることができない
- 好きなことには周囲を忘れて集中する
- 人の話を聞かない・聞いていないように見える
- 何かを組織的に順序立てて行うことが難しい
- 忘れ物・遺失が多い
- 不注意でケガをすることが多い
- 気が散りやすく、興味が移りやすい
大人のADHDでよくある症状
- 動作に落ち着きがなく、そわそわしていることが多い
- 場をわきまえず、思ったことをすぐに口にする
- 衝動買いが多い
- 大事なことをうっかり忘れてしまう
- ものを無くすことが多い
- 遅刻が多い
- 仕事の段取りが悪い
- デスクやロッカーが乱雑、片づけられない
- 感情を押さえられず急に怒ることがある
- 簡単なミスを繰り返す
- マニュアル通りに動けない
まとめ
ADHDは、子供も大人も関わる障害です。クラスメートや会社の同僚の中にADHDを抱えている方がいるかもしれません。もしADHDと診断された場合には、適切な治療・サポートを受けることが大切です。ADHDは改善できる障害です。