アスペルガー症候群やADHD、自閉症などの発達障害。以前よりもその知名度は上がり、名前だけは聞いたことがあるという人も多いと思います。しかし、「発達障害」と聞くとどうしても一括りに考えてしまい、それらの具体的な症状などの違いまでは知らない人も多いのではないでしょうか。

発達障害の中でも、タイプによってそれぞれに違った特徴があります。ここでは主にアスペルガー症候群とADHDに焦点を当てて説明していきたいと思います。

目次

発達障害にはいくつかの種類がある

発達障害は、脳の機能の一部に生まれつき何らかの問題があることによって生じます。コミュニケーションや対人関係を築くことが苦手という特徴があります。

発達障害はその性質によって、自閉症、アスペルガー症候群、ADHD、学習障害、チック障害などのタイプに分類されます。しかし、同じ人に複数のタイプの特徴が現れることもありますし、また同じタイプの人でもその生活環境や年齢、症状の程度などによって症状が違ってくる場合もあります。その症状は、非常に個人差が大きいといえるでしょう。

アスペルガー症候群(高機能広汎性発達障害)の特徴

子供の手と木の実-写真
アスペルガー症候群は、広汎性発達障害や自閉症スペクトラムなどと呼ばれるものの中の一つで、高機能広汎性発達障害とも呼ばれます。

広汎性発達障害にはアスペルガー症候群のほか、自閉症、レット症候群、小児期崩壊性障害などが含まれます。社会性、コミュニケーションに障害があり、またこだわり行動があるなどの特徴があります。

こだわり行動とは、「いつも同じ道を歩く」「必ず同じ手順で作業を行う」「行動の切り替えに時間がかかる」などの行動です。程度は人により様々で、軽度の場合はそれほど気になるものではありませんが、重度の場合は日常生活に支障をきたす場合もあります。

その中でもアスペルガー症候群は、社会性とコミュニケーションの障害はあるものの、知的な遅れや言葉の遅れがない場合のことをいいます。言葉の遅れなどもないため、幼児期にはなかなか分かりにくいのですが、成長とともに対人関係上の問題などがはっきりしてきます。

症状としては、以下のようなものがみられます。

  • 相手の気持ちを考えない
  • 友人関係を築くことができない
  • 暗黙のルールが分からない
  • 会話中の冗談や比喩、皮肉が理解できない
  • 行動がパターン化しており、融通がきかない
  • 興味や関心の対象が限定され、独特なものが多い
  • 表情や身振り、声の抑揚、姿勢などが独特である
  • 動作がぎこちない

幼少期の特徴

  • 集団で遊ぶことがなく、一人遊びを好む
  • 同じ遊びや行動を繰り返す傾向が強い
  • 他人にあまり関心がない

ADHD(注意欠陥多動性障害)の特徴

ADHDとは、注意欠陥多動性障害ともいわれます。その特徴は、以下の3つです。

  • 不注意(集中できない)
  • 多動・多弁(落ち着きがない)
  • 衝動的(思いついたら考える前に行動してしまう)

7歳頃までに症状が現れるケースが多いといわれます。その症状の程度やタイプによって、不注意優勢型、多動・衝動性優勢型、混合型に分類されます。

それぞれに代表的な症状は、以下のとおりです。

不注意

  • うっかりミスが多い
  • 遊びや課題、仕事などに集中し続けることが難しい
  • 話を聞いていないように見える
  • 最後までやり遂げることができない
  • 段取りや整理整頓が苦手、忘れ物をしたりものを失くしたりすることが多い

多動衝動性

  • 静かに座っていることが難しい
  • じっとしていられない
  • 喋りすぎる
  • 順番を待つのが苦手
  • 他人の会話などに割り込んでしまう

ADHDでは、薬物治療で効果が見られることがあります。ADHDの場合、脳内のドーパミンやノルアドレナリンという物質の働きが不足しているため、これらの物質の働きを改善する薬を服用することによって症状が改善する可能性があります。中枢神経を刺激し、脳内の神経伝達物質を調節する塩酸メチルフェニデート徐放剤のほか、中枢神経は刺激せずに症状の緩和を図るアトモキセチンなどを使用します。症状によっては、抗うつ剤や気分安定剤などを使用することもあります。

発達障害かもしれない、と思ったら

隙間からのぞく子供-写真
お子さんが発達障害かもしれないと思ったら、市町村の担当窓口保健センター発達障害者支援センター、小児科や児童精神科を掲げる医療機関などに相談するとよいでしょう。

早期に発達障害と診断されれば、早いうちから療育などの適切な教育・訓練を行ったり、家族や幼稚園・学校など周囲の人々への理解を求めたりすることができ、発達障害による困りごとをより少なくしていくことができます。

思春期以降に発達障害を疑った場合は、精神科を受診してみてください。現在までの経過の聞き取りや発達障害の質問票、知能検査などによって発達障害の診断が受けられます。発達障害によってうつ症状や不安症状がある場合には、抗うつ薬や抗不安薬を処方してもらったり、また対人関係上の問題への対処方法を身につける訓練を行ったりすることで日々の困りごとを少なくしていくことができます。

まとめ

アスペルガー症候群やADHDなどの発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違うために、幼いころから様々な困りごとが生まれます。しかし早いうちから発達障害と分かり、適切な対応や教育がされれば、社会に適応する能力を身に付けたり、元々持っている力を伸ばしたりすることができます。また、それによって生活していく上での困りごとを減らし、本人が持っている能力を生かした生活ができるようになります。

発達障害の様々な特徴について理解し、なるべく早い診断に繫げることが大切です。