貧血と聞くと、大人の女性に多いイメージがありませんか? そのイメージは間違ってはいませんが、子供でも貧血の子がいます。ここでは、あまり馴染みのない子供の貧血について述べたいと思います。どのような症状や原因があるのかについて解説します。

目次

貧血とは?

始めに、貧血とは血液中の赤血球が少なくなっている状態です。

赤血球は体中の組織に酸素を運ぶ働きをしています。その赤血球の量が少なくなった場合には運搬される酸素の量が少なくなります。体は少なくなった赤血球(運搬される酸素)を数で補おうとして、心拍数が上がります。心拍数が上がると心臓に負担がかかります。

このように、貧血になった場合には、これらが原因となって様々な症状が出現します。

子供が貧血?原因は?

子供が貧血になるというイメージはありますか? 子供の貧血というイメージはあまりないと思いますが、少なくはありません。

貧血になる原因には、

  1. 赤血球が作られなくなる:生まれながらの血液の病気や、腎臓・甲状腺などの病気など
  2. 赤血球を作る材料がなくなる:鉄・ビタミンの減少など
  3. 赤血球が壊れやすい:遺伝的な病気や感染症に伴って起きるもの
  4. 作られた赤血球が失われる:多量の出血で起きるもの

などがあります。

ここでは、子供の貧血の最も多い原因である②に含まれる、鉄欠乏性貧血についてお話したいと思います。

鉄欠乏性貧血の原因

赤血球を作るのには鉄が必要です。また、酸素は赤血球内の鉄と結合して、体中の組織へ運搬されます。

様々な原因で子供は鉄欠乏性貧血になります。原因は時期で異なるため、時期別にお話します。

新生児期

赤ちゃんはお母さんから鉄をもらって生まれてきます。お母さんからもらう鉄には肝臓などに蓄えられている鉄もあります(貯蔵鉄)。貯蔵鉄は生後6ヶ月分くらいあると言われています。

この時期の貧血の原因としては、低出生体重児であることや、出産時にお母さんが貧血であること などがあります。

また、多くはありませんが、新生児メレナという病気もあります。これはビタミンKの不足により、出血しやすくなるものです。生後24時間~5日頃に、血を吐いたり、便に血液が混じったりします。現在ではこれを予防するために、ビタミンKのシロップを内服します。

乳幼児期

この時期の貧血の原因としては、食べる量が少ない、食べている食品中に含まれる鉄の量が少ない、好き嫌いがある、急激な発育などがあります。離乳食がうまく進まない場合にも貧血になります。

また、この時期は牛乳貧血と呼ばれるものもあります。牛乳貧血とは、1歳以下などで牛乳を開始したり、大量に摂取したりすることで起こります(1日600ml以上)。牛乳はそもそも含まれている鉄が少ない上に、多量に含まれているカルシウムなどによって、鉄の吸入が阻害されてしまいます。それに、沢山の牛乳を飲むことで食べる食事の量が少なくなることでも摂取する鉄の量が少なくなります。

加えて、重い感染症を繰り返したり、長引いたりすると、体に血があっても利用されずに貧血となります(慢性疾患による貧血)。

思春期

鉄は体の発達に必要な成分です。思春期には骨や筋肉が急激に成長し、多くの鉄分やカルシウムが必要になります。体重が1kg増えるごとに血液は70mlが必要となり、これには35mgもの鉄が必要となるのです。血液は、基本的には身体にストックされた鉄(貯蔵鉄)から作られますが、食事からもしっかりと鉄分を摂取する必要があります。通常の食事では必要量に達しないことも多いため、意識的に鉄を摂取することが大切です。

 

この時期にはスポーツ貧血と呼ばれる貧血になることもあります。これは下記のような原因で起こります。

  1. 心臓や肺の能力亢進・体格の改善によって体内を循環する血液の量が増える
  2. 赤血球が増加した結果赤血球が小型化する
  3. 激しい運動によって赤血球が破壊される

スポーツ貧血の場合、原因となっているスポーツのやり方やトレーニング方法を考えてみましょう。また、3つ目のケースでは足を強く踏み込むことで起こる刺激が原因となるため、靴下や緩衝材入りの靴を履くことが対策に繋がります。

生理が貧血の原因となることも

女子では生理によって血液が失われることや、偏食や過度のダイエットによる鉄の摂取不足も原因になることもあります。初潮のときなどは貧血が急激に進むこともあるので、保護者の方が様子を観察してあげてください。

どんな症状?

机に伏して眠る子供

偏食などが原因で起こる鉄欠乏性貧血は徐々に進んでいくため、症状が分かりにくいことが多いです。また、子供はなかなか自分では症状を訴えることできないこともあり、周囲の大人が気づくことが多いです。

顔色や手のひらの色が蒼白である、落ち着きがない、苛立ちがみられる、異食症(氷やゴミを食べようとする)といった症状がみられます。貧血がさらに進むと、興奮したり食欲がなくなったり、頻脈などの症状もみられることがあります。ただし、これらの症状だけでは判断できない場合もあるので、貧血を疑った場合には医療機関で採血検査を行います。

貧血が進んだり、長期間になったりすると、味覚障害、身長・体重の増加不良(発達障害)、集中力の低下、学習障害を引き起こす恐れもあります。

まとめ

ここでは子供の貧血、子供の貧血で多い鉄欠乏性貧血の原因と症状について解説しました。子供の貧血は気づきにくいものですが、何となく気になる症状がある場合には疑うことが大切です。