胸の痛みを訴えて病院を受診する人の中には、命に関わる重大な病気を抱えていることがあります。本稿では、胸の痛みを感じる症状のひとつである「肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)」について見ていきたいと思います。

目次

肋間神経痛とは?

神経痛のうち、肋間神経のある領域に痛みが生じるものを肋間神経痛と呼んでいます。肋間神経痛では、肋骨に沿って激しい痛みが生じます。とても激しい痛みであることが多く、また、痛む箇所も胸であることから、命に関わる病気なのではと不安になり、病院を受診される方が多くいらっしゃるようです。

どこか悪いの?肋間神経痛の原因

原因は様々ですが、加齢や普段の生活習慣での悪い姿勢や運動不足により肋間神経が圧迫されて起こる場合、帯状疱疹や変形性脊椎症・変性側弯症といった脊椎の疾患が原因となる場合、ストレスなどの心理的な要因が原因となる場合が、主なものとして知られています。

このうち、病院で肋間神経痛の診断を受けた方の多くは、はっきりとした検査異常が認められず、ストレスなどが原因の肋間神経痛であると診断を受けることが多いようです。このような説明を受けた場合は、取り除くべき原因が不明確なのに激しい痛みが続くため、症状を抱える人はさらに不安を感じストレス状態に陥ります。そして、痛みによりストレスを感じることで痛みが増幅するという悪循環が起きてしまうのです。

こんなに痛いのに、本当にどこも悪くないの?

医師

身体にはどこにも悪いところはないのに痛むということがあるのでしょうか。これだけ強い痛みが確かにあるのに、どこが悪いのか確認できないのはなぜなのでしょうか。

実は、「痛み」にはいくつかの種類があります。それが起こるメカニズムにより大きく3種類に分類されているので、ひとつずつ見ていきましょう。

侵害受容性疼痛(しんがいじゅようせいとうつう)

どこかが傷ついたり破れたりしたことが刺激となり感じる痛みです。一般的に痛いといった場合、「どこかが出血しているのではないか」「悪いところがあるのではないか」と考えるのではないでしょうか。これが、「侵害受容性疼痛」と呼ばれるものです。

神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)

痛みを伝達する神経自体の傷みが原因となり感じる痛みです。神経障害性疼痛の場合、痛みの原因と思われていた怪我や病気が治ったあとにも痛みが続いたり(原因が取り除かれても痛みが続く)、あるいは、明らかな怪我や病気といった原因がなかったり(外から確認できる痛みの原因がない)といったことがあります。

非器質性疼痛(ひきしつせいとうつう)

精神的なストレス、うつ症状、不安感などの心理的な要因による痛みです。心理的な要因により脳が痛みを感じるため、仕事や勉強などに集中している間は痛みをあまり感じない場合があります。

このように、痛みにはそのメカニズムにより種類があり、必ずしもどこかが悪くなったりすることだけが痛みの原因になっているとは言い切れません。

そして、肋間神経痛はその名前の通り、「神経障害性疼痛」に分類されています。つまり、なんらかの原因により神経自体が傷んでいる状態です。そのため、検査では身体に異常は見つからないものの、激しい痛みを感じるのです。

まとめ

肋間神経痛は、「こういうときに痛くなることが多い」ということは知られてはいるものの、その発生のメカニズムについては解明されておらず、外から確認できる痛みの原因が分からないことがとても多い症状です。

強い痛みを感じると不安になってしまうかもしれませんが、上で述べたように、人が感じる痛みには原因となる怪我や病気がないこともあります。そのため、肋間神経痛と診断された場合には、命に関わる重大な病気ではなかったことにまずは安心してもよいのかもしれません。