眼科で必ず行う検査に視力検査がありますが、視力検査では視野の異常はわからないため「視野検査」というものを行う必要があります。視野検査は、眼科の検査の中でも重要な検査です。視野検査とはどのような検査なのでしょうか?眼科での視野障害の治療法などと一緒にみていきましょう。なお、視野異常の分類については、「視野が欠けたり狭くなったり…これって何かの病気?」をご参照ください。

目次

視野の異常は放っておいても大丈夫?

「視野が狭くなった」などの視野異常を感じたときは、なるべく早いうちに眼科を受診することが大切です。

視力が低下した場合、原因が近視などの屈折異常であれば眼鏡やコンタクトで視力は矯正できます。しかし、視野異常の場合はそうはいきません。緑内障などで視野が狭くなっている場合、二度と元の視野に戻すことはできません。失われた視野は治療をしたからといって戻るものではないのです。

ところが、つい「忙しいから」と受診を怠ってしまう人もいるようです。視野異常を感じた時は早い段階で受診し、適切な治療を受けて視野を守っていく必要があります。

視野検査とは

視野の異常を調べる検査を「視野検査」といいます。視野検査には大きく分けて「静的視野検査」「動的視野検査」の2種類があります。

静的視野検査

静的視野検査は視野の中でも中心30度の部分を詳しく調べることができます。一点を固定して見てもらい、周りに明るさの違う光を点滅させて、見えているか見えていないかを調べていきます。コンピュータ制御でおこなっており、代表的なものにハンフリー視野計があります。

動的視野検査

動的視野検査は視野全体を調べることができます。見えない所から視標を動かしていき、見えた所で線をつないでいくことで視野の全体像がわかります。明るさを変えて同じことを何度か繰り返し、視野を把握していく検査です。代表的なものにゴールドマン視野計があります。

 

静的視野検査は、中心部分の視野の細かな初期変化も調べることができます。一方、動的視野検査はどんな形の視野をしているのか、見えていない部分(暗点)がどの辺りにあるのかなど、全体的な視野を見ることができるというのが特徴といえるでしょう。

誰にでも必ず見えていない部分がある!?

男性の横顔

実は人間にはマリオット盲点といって、必ず見えない部分があります。

角膜から入ってきた光は網膜の視細胞で感知され視神経を通り、最終的にはひとつの束となって脳へと送られています。この眼球から脳へと続く出口部分のことを「視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)」といいます。視神経乳頭は視細胞がなく光を感じることができないため、視神経乳頭に集まった光の情報は脳へと伝わらず、視野検査では「見えない部分」(暗点)としてあらわれます。この暗点はマリオット盲点と呼ばれています。視神経乳頭は脊椎動物には必ず存在するため、脊椎動物には必ずマリオット盲点があり、生理的盲点とも呼ばれています。

眼科で行う検査

視野の異常が疑われる場合は、必ず上記の視野検査を行います。

視野が狭くなる代表的な病気に「緑内障」がありますが、この緑内障の視野変化は周りから狭くなるのではなく、マリオット盲点部分から見えない部分がどんどんと広がっていきます。もともと見えないマリオット盲点が大きく拡大していくイメージと思ってもらえればよいでしょう。そのため緑内障が疑われる場合は、視野の中心30度を詳細に調べることができる静的視野検査を初めに行います。

逆に視野狭窄が進行した場合や、脳梗塞などが原因の場合は、動的視野検査で視野全体を把握する必要があります。

また、網膜の状態を調べるために眼底検査も必ず行います。眼底の状態をみることで病気の診断や予測がある程度できるため、視野検査の結果や眼底の状態をみてその後の治療方針も決まるのです。

眼科での治療法

眼科医の診察を受け視野検査を行い、視野狭窄や暗点など視野に異常が見つかった場合は、視野障害をもたらしている病気の治療を行う必要があります。

例えば緑内障が視野障害の原因であれば、眼圧を下げる点眼薬の使用など緑内障の治療を行います。ただし、緑内障の治療は失われた視野を元に戻すものではありません。これ以上視野障害を進行させないために行うものです。

また、視野検査の結果、両目の片側の視野が見えない「同名半盲」や、両目の耳側の視野が見えない「両耳側半盲」があらわれた場合は、脳の病気が原因となっている可能性が高いので、至急脳神経外科を受診する必要があります。

このように視野異常の原因は様々です。原因となっている病気の治療を行うことが、視野に対する治療法といえるでしょう。

視野の異常に気付くには?日常生活での対処法

「視野がおかしい」と早く気付くことができるように、日常で行っておきたい対処法をご紹介します。

自分の視野を確かめる

両目で見ていると視野の異常には気付きにくいため、たまに片目ずつ視野の確認をしましょう。左目を閉じて左手の人差し指を右目の前に置きます。そのまま真っ直ぐ前を見たまま指を動かしどの辺りまで見えるかを確かめます。反対の目も同じように行い、左右で見える範囲に違いがないかなどを確認してみましょう。

眼球の硬さ(眼圧)の確認

目を閉じまぶたの上から目を圧迫しないようにそっと眼球を触ります。どの程度の硬さが普通なのかはわかりにくいと思いますが、日頃からこれを繰り返していると眼圧が上がった時にいつもとは違い硬く感じるようになります。

年に1度は眼科を受診する

上記のふたつの方法は、目の失明の原因とも言われている緑内障の早期発見のための簡単なセルフチェックとして効果的な方法ですが、指に合わせて目を動かしてしまっては正しくチェックできないので注意しましょう。また、眼球の硬さを調べるときは目の押さえ過ぎにも気をつける必要があるので、慣れるまでは難しく感じるかもしれません。

一番確実な方法はやはり眼科で目の検診を受けることです。緑内障は40才を過ぎるとなりやすいといわれています(日本眼科学会 緑内障より)。そのため、特に目に問題を感じていなくても年に1度は緑内障等がないか定期検診を受けるようにしましょう。

まとめ

視野の異常はいつあらわれるかはわかりません。また、両目でものをみている私達は初期の視野異常には気付かないことがほとんどです。しかし、視野の異常を放っておくと、最悪の場合失明という可能性もあるため、早期発見がとても重要なのです。視野についての正しい知識をもち、定期的に目の検診を受けることが自分の大切な目を守ることに繋がっていくということを覚えておきましょう。