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高齢・多産の女性は子宮脱になる可能性があります。子宮脱は子宮がもともとある位置より下がってしまう疾患で、様々な障害が出てくることがあります。この疾患の症状を把握し治療法を理解することで、子宮脱の早期発見・早期治療や治療法の選択の理解が可能です。

子宮脱の症状については「出産経験者に多く見られる子宮脱…3つの原因と、ステージ別の症状とは」をご参照ください。

子宮脱は産婦人科を受診しよう

子宮脱は産婦人科を受診して検査を行います

問診

産婦人科の一般的な診察の流れとしてはまず問診を行い、産婦人科系の他の疾患の症状の訴えなどが見られないか確認します。主に確認する内容は月経歴現在困っている症状の有無です。

※月経歴とは、以下のような情報です。

  • 初経・閉経をむかえた年齢
  • 最終月経(前回の生理が始まった日)
  • 月経周期
  • 月経の持続期間
  • 経血量
  • 不正出血の有無
  • 月経困難症状(いわゆる生理痛)の有無

視診内診

この問診の後に視診内診(双合診)を行います。双合診は医師が膣内に指を挿入し、同時に反対の手を腹壁上に当てる検査で、膣の状態や外陰部の異常を確認します。出産時と同じ体位での診察となりますが、痛みはほとんどありません。

その他の精密検査

上記に加え、必要に応じてMRIやCTによる画像検査を行うことがあります特にどこかの靭帯にダメージを負っている場合や、腫瘍などの他の疾患が原因となっている場合などに行いますが、それ以外のケースではあまり行われません。

また、尿失禁や排尿困難といった症状がある場合、尿量・残尿測定検査(尿の勢いや残尿を調べる検査)や尿流動態検査(下部尿路機能障害の部位・程度などを調べる検査)という精密検査を行うことがあります。

子宮脱の治療法

手術室

子宮脱の治療方法は、どれだけ子宮が下がってきているのかによって変わってきます

子宮脱があったとしても膣から外に飛び出ておらず、症状も特にないのであれば治療を行うことはありません。長期間にわたり放置してしまうと症状が重くなることがあるので、定期的な診察が必要にはなります。しかし基本的には、生活改善を行い、予防に努めることで症状の悪化を防ぎます

反対に、子宮が降りてきてしまうことで様々な不快な症状が出てくる場合には治療の検討が必要です。具体的には、以下のような治療を行います。

骨盤底筋トレーニング

まず、頻繁に行われるのは骨盤を支える骨盤底筋という筋肉の筋トレです。これにより軽度の尿漏れや子宮下垂を改善することができるのですが、脱出してしまった内臓を元に戻すほどの効果は期待できません。

ペッサリーを用いた治療

骨盤底筋のトレーニングに加えて行うのが、器具を用いた治療です。ペッサリーという器具を膣から挿入し、子宮を下から支えるので、子宮脱の程度によって医師と相談しながら治療を決めていきます。ペッサリーはシリコンでできた円形の器具で、膣の状態や子宮の状態に応じて適切なペッサリーを挿入します。適切な大きさのペッサリーを用いれば、異物感もほとんどありません。

ペッサリーは長時間入れっぱなしになるため、病院で膣の内部の消毒やペッサリーの入れ替えを行う必要があるので注意が必要です。また、女性ホルモンが不足してくると膣内のペッサリーが当たっている部分から出血することがあるので、予防的に女性ホルモンを膣内に投与することがあります。

手術治療

ペッサリーや骨盤底筋のトレーニングなどでも改善が見られない場合には、手術を行います。手術療法は治療効果が高いので、子宮脱の治療として現在も頻繁に行われています。

経膣式の手術

手術自体はお腹を開けて行う手術ではなく、膣からアプローチする経膣式の手術が一般的で、子宮を支える靭帯を膣の方から修復します。高齢で出産を行わない場合には、子宮を摘出する手術を行ったり、膣を閉鎖する手術を行ったりすることがあります。

メッシュ手術

現在主流なのが、メッシュ手術という網の目状の膜を使った手術です。子宮と膀胱の間や子宮と直腸の間にメッシュを設置することで、メッシュが膣の一部として子宮を支え、強固な支えとして子宮を下から支えるようになるのです。

メッシュを用いた手術は術後の痛みが少なく、体への負担も小さい手術として人気があります。子宮を無理に摘出せず、温存が可能な手術として、女性にとってのニーズを満たす術式といえます。

子宮脱の再発予防法

子宮脱の再発を防ぐためには肥満を防ぐ・便秘の改善や重いものを持たないようにするなど、生活の改善が必要です。お腹に圧力が加わると、どうしても子宮が下がってきやすくなってしまうため、気をつけてください。特に、手術を受けてから2ヶ月程度は、3kgよりも重いものを持つことは避けた方が良いでしょう。

さらに、骨盤周りの筋肉の訓練もおすすめです。かかとを上げながら、肛門を10回程度反復して締める骨盤底筋体操が有効です。

まとめ

子宮脱は産後の女性にとって非常に深刻な疾患です。この疾患があることで生活に支障をきたし、多くの女性の生活の質の低下を招きます。症状を把握し、予防法を理解することで早期発見・早期治療を目指すようにすることが何よりも大切です。早い時期に見つかった子宮脱はより体の負担が少ない状態で治療が可能です。

手術を回避できるだけでなく、生活に大きな影響を残さずに治療もできるので、日頃から自分の体の状態に気を配りしっかりと健康の維持を行いましょう。