敗血症は細菌、ウイルス、カビが引き起こす感染症をきっかけに起こり、重症化すると臓器障害にまで至ります。重症化した場合は命にかかわる疾患であり、救命のためには集中治療室での治療が必要です。敗血症については、「敗血症~高齢者が注意すべき全身性の感染症、その症状とは」でまとめておりますのでこちらをご参照ください。ここでは、敗血症に対してどのような治療が行われるのかを確認し、しばしば変更される敗血症の定義についてみておきましょう。

目次

敗血症の予防

敗血症は細菌、ウイルス、カビなどが体内に侵入し、感染症を引き起こすことで生じます。敗血症の予防は細菌、ウイルス、カビなどを体内に入れないようにすること、そして、免疫力を低下させないようにすることが大切です。基本的なことではありますが、下記を習慣にすることが感染症、さらには敗血症の予防につながります。

  • 手を洗う
  • マスクを着用する
  • 虫刺されを避ける
  • 適度な運動を習慣にする
  • バランスの良い食事を心がける
  • 予防接種を受ける(肺炎球菌、インフルエンザ、破傷風など)

敗血症の治療

2枚のマスク-写真
敗血症の治療では、まず感染症の治療を行います。真菌が原因の場合は抗真菌薬、ウイルスが原因の場合は抗ウイルス薬を投与します。

臓器に障害が生じたり、敗血症性ショックといわれる重篤な状態になったりしたときは、集中治療室で専門的な治療を受けます。そこでは、血圧の低下を防ぐために昇圧薬を投与したり、輸血を行ったり、人工透析の機器を用いて急性血液浄化法を行ったりします。集中治療室での治療は数週間から数カ月続くこともあります。

敗血症の死亡率って…?

敗血症に関して、日本における大規模な疫学的な調査はありませんが、死亡者数は増加傾向にあります。2002年における敗血症による死亡者数は6,083人でしたが、2012年には1万1,474人と増加しています。

臓器不全を伴う敗血症は生命の危険を伴うことが知られていますが、障害の起きた臓器の数が多いほど死亡率が高く、米国の研究によれば、1臓器で21.2%、2臓器で44.3%、3臓器で64.5%、4臓器で76.2%の死亡率とされています(敗血症の概念、疫学、診断、治療より)。

敗血症の3つの新定義新判断基準

敗血症の定義はしばしば変更されてきましたが、2016年、15年ぶりに定義が改定され、診断基準にも大幅な変更がありました。ポイントは次の3つです。

重症例を取り出す

旧定義では、臓器障害を伴わないものまで敗血症に含められていましたが、新定義では臓器障害を伴わないケースが除かれる定義に改められました。敗血症は重症化した場合の死亡率が高く、迅速な対応が求められる症状です。死亡率が高く、緊急の治療が必要な状態を早期に割り出す必要があるためです。

診断基準の明確化

前回の2001年の旧診断基準では診断基準の項目数が多くなったものの、各項目が具体的にどのような状態を指すのかという点が曖昧なままにされていました。新基準では、臓器障害がどの程度生命をおびやかすかどうかを数値化する基準などを取り入れることで、この曖昧さを回避する試みがなされています。

説明不足の補完

敗血症性ショックの定義が、「敗血症の部分集合であり、実質的に死亡率を上昇させる重度の循環・細胞・代謝の異常を呈するもの」と改められました。旧定義では、循環不全という要件に注力されている点で、説明不足が指摘されていました。新定義では、「細胞・代謝の異常」の項目を追加することで旧定義の説明不足を補完しました。

現在のところ、新定義・新診断基準により、医療現場がどのように変化するかは未知数ですが、改定によってより素早く的確な処置が行われることが期待されます。

まとめ

新定義に従うと、今後は、これまで重症例と考えられていた臓器不全を伴う敗血症のみが厳密な意味での敗血症と見なされることになります。敗血症は感染症という身近な疾患をきっかけとするものの、一度発症すると、医療機関における専門的な治療にゆだねるほかありません。

患者自身でできることはほとんどありませんが、感染をきっかけに生死に関わる疾患に発展する可能性があることを知っておくのは重要です。特に高齢の方、家族に高齢者がいる方は細菌、ウイルス、カビなどが体内に侵入しないように心がけましょう。