日本では肺炎によって亡くなる方が増え、特に高齢者が多くかかっています。肺炎を起こす病原体は、細菌、ウイルス、真菌(カビ)などがありますが、肺炎を起こす細菌のうち最も多いものが肺炎球菌です。肺炎球菌は、肺炎・敗血症・髄膜炎などの重篤な感染症を引き起こします。今回は、肺炎球菌についてご紹介します。

目次

肺炎球菌とは?

肺炎球菌は細菌の一種で、表面に膜を持つ病原性の強いものと、膜を持たない病原性の弱いものがあります。集団生活が始まる前のほとんどの子どもが持っていて、約3~5%の高齢者の鼻やのどの奥に菌が常在していると考えられています。

病原性の強い肺炎球菌は、何かのきっかけで進展して、細菌性髄膜炎敗血症肺炎気管支炎中耳炎副鼻腔炎などの感染症を引き起こします。これらの感染症を発症するのは、母親からもらった抗体が減少した、免疫の未熟な乳幼児が多く、特に0歳児でのリスクが高いとされています

肺炎球菌感染症とは?

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肺炎球菌感染症とは、肺炎球菌によって起こる感染症です。肺炎球菌は、人の鼻や口から身体の中に入って粘膜に付き、そこで繁殖します。また、肺炎球菌を持っている人が咳をしたときの飛沫を吸い込むことによって、他の人にうつると考えられています。鼻や喉の粘膜についた肺炎球菌は、そのまま消滅することも多いですが、肺炎球菌感染症を発症する場合があります。

鼻や喉の粘膜にくっついている期間は、大人よりも子供の方が一般的に長いとされています。肺炎球菌感染症を発病するきっかけとして、インフルエンザをはじめとした風邪のウイルスの感染で、気管粘膜での損傷によりバリア機能が低下することなどが考えられています。

肺炎球菌が原因で起こる病気は?

肺炎球菌は、主に以下のような様々な病気を引き起こします。

細菌性髄膜炎

細菌性髄膜炎とは、脳を包んでいる髄膜に細菌が感染して、発熱、けいれん、意識障害などの症状を起こす病気です。細菌性髄膜炎の約10%が死亡し、約30%が後遺症を残すと言われています。毎年日本では1000人ほどが発症しており、そのうちの約200人に肺炎球菌が検出されておりましたが、近年ではワクチン接種により減少傾向です。

敗血症

敗血症の多くは特定の細菌感染によって発症して、感染に対する炎症反応が全身に起こります。悪寒から始まり、発熱、低血圧、錯乱などの症状が現れ、悪化すると肺、腎臓、肝臓などの臓器不全が起こる場合もあります。

肺炎

ウイルスや細菌などの病原体が肺に入って炎症を起こす病気です。風邪気管支炎をこじらせたときに多く発症します。主な症状は、発熱です。肺炎球菌に感染して炎症を起こしたときは、重症になりやすく、高熱が続き、呼吸困難を起こすこともあります。

気管支炎

鼻や喉についたウイルスや細菌が、気管支の粘膜で炎症を起こします。多くは風邪をこじらせたことが原因となって起こり、発熱激しい咳が続くことが特徴です。発熱、咳、鼻水などの風邪の症状から始まり、乾いた咳からの絡んだ湿った咳に変わります。重症化すると、呼吸困難を起こすこともあります。

中耳炎

耳が痛い女性

中耳炎は、鼓膜の奥にある中耳に細菌が入って炎症を起こす病気です。風邪が原因で発症することが多く、発熱、耳の痛み、耳だれの症状があります。

副鼻腔炎

副鼻腔は鼻の中に繋がる粘膜に覆われた空洞です。ウイルスや細菌などが身体の中に入り、鼻の粘膜に炎症が起きると、副鼻腔の粘膜にまで広がり副鼻腔炎を起こします。鼻がつまる、粘着質の色のついた鼻水が出るなどの症状が起こります。

まとめ

肺炎球菌は、細菌の一種で病原性の強いものと弱いものがあり、強いものが身体の中に入ると重篤な感染症(細菌性髄膜炎・敗血症・肺炎)を引き起こします。肺炎球菌が原因となって起こる感染症は、他には気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎などが挙げられます。