敗血症は身近な感染症をきっかけに生命の危機にまで発展する疾患です。特に高齢者は敗血症を発症しやすく、また、死亡率も高くなっています。ここでは原因や症状など、敗血症の基本事項を確認しておきましょう。

目次

敗血症の原因

細菌、ウイルス、カビといった微生物が体内に侵入して感染症が引き起こされると、体の免疫機能が働いてこうした微生物を排除しようとします。例えば風邪を引いたときに熱が出たり、のどが腫れたりするのは免疫が活発に機能しているためです。

免疫反応のひとつに、全身の炎症反応があります。炎症反応は微生物に対抗するためのものですが、これが強すぎると自分自身の体にダメージを与えます。敗血症は、強すぎる炎症反応によって心臓や肺、腎臓などの臓器が障害を受ける疾患です。重症の敗血症は生死に関わり、集中治療室での治療が行われます。

敗血症は「高齢者の疾患」ともいわれています。敗血症患者の約60%は65歳以上、さらに、敗血症が原因で死亡する人の80%が65歳以上といわれています。敗血症が高齢者に多く、重症化しやすいのは、免疫機能の低下と関係があると考えられています(東海大学医学部より)。

敗血症性ショックとは

点滴バッグ-写真
敗血症のなかでも特に重篤な症状を「敗血症性ショック」といいます。敗血症が重症化しやすいのは、免疫機能が低下した高齢者の場合のほか、皮膚が細菌の侵入を防げなくなるほどの重い火傷が原因となることがあります。

加えて、腸閉塞がひどくなったり、手術時の合併症で大腸が破裂したり傷ついたりすると、本来無菌状態の腹腔内に大量の菌を含む便が出ることがあります。これにより激しい感染症や腹膜炎が起きて敗血症性ショックになり、時に重篤な状態になることがあります。

感染が起きると体内では炎症が生じます。炎症はもともと異物や死んだ自分の細胞を排除する反応ですが、強すぎる炎症はショック状態を引き起こします。体の中にある炎症を引き起こす成分にDAMPs(damage-associated molecular patterns)と呼ばれるものがあります。DAMPsは健康な状態では細胞内に隠れていますが、細胞がストレスにさらされたり傷害されたりすると放出され、敗血症性ショックを引き起こすと考えられます。敗血症性ショックは多くの輸液を必要とし、また、昇圧薬によって臓器への血流を増やすことが重要です。

敗血症が疑われる症状

敗血症は感染症から始まります。感染が起きると微生物が作る毒素や免疫反応によってさまざまな症状が現れます。次にあげるのは敗血症が疑われる代表的な症状です。

  • 38℃以上の発熱
  • 36℃以下の低体温
  • 脈が速い(毎分90回以上)
  • 呼吸が早い(毎分20回以上)
  • 意識の状態が悪い
  • 全身がむくむ
  • 普段よりも血圧が低い
  • 手足が異常に冷たい

この内、2つ以上に該当する場合は注意が必要です。

まとめ

敗血症は微生物の体内への侵入をきっかけとして発生する疾患です。敗血症を防ぐためには、感染の原因となる微生物を体に入れないことが大切です。免疫力の低下、傷の化膿、肺炎、下痢などは細菌が急激に増えやすい状況なので特に注意が必要です。敗血症が疑われる症状に気づいたら、直ちに医療機関を受診しましょう。