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現代人にとって、スマートフォンやパソコンは、生活を営む上で欠かせない存在と言っても過言ではありません。正しく使えば情報収集や連絡の手段として非常に便利なこれらの機器ですが、度を越した使用は「依存」を招くことを知っているでしょうか。

WHO(世界保健機関)が発行する「国際疾病分類(ICD)」第11版に、「ゲーム障害」という病名が追加されることになりました。このゲーム障害は、特にインターネット・ゲームに依存した状態を指すものです。

いしゃまちでは、日本で初めてインターネット依存専門外来(TIARを設けた久里浜医療センターの院長・樋口進先生に、「ネット依存」「ゲーム依存」についてお話を伺いました。本記事では、その症状や実態をお伝えします。

治療・予防についてはネット依存・ゲーム依存から我が子を守るために。鍵は『仲間』と『時間管理』をご覧ください。

お話を伺った先生の紹介

ネット依存とゲーム依存は、ほぼ同じもの

実は、「インターネット依存(ネット依存)」という病名はありません。今年(2018年)出版される国際疾病分類の第11版に入る「ゲーム障害」自体は、ネット依存と完全に同一のものではありません。ただ、当院の専門外来を訪れる患者さんのほとんどが依存しているのはオンラインゲームです。ですから外来で診る限り、ネット依存とゲーム依存はほぼ同じものといえます。

「依存」はそもそも、ある行動の行き過ぎとそれに起因する問題がセットになった状況を指します。ネット依存の場合、インターネットの過剰使用とそれに伴う問題ということになりますね。

ゲーム障害の現在の定義は、下記の3つです。

  1. ゲームがコントロールできない
  2. ゲームが生活の中心になっている
  3. ゲームの過剰使用による問題が起きているにも関わらずゲームをやめない、あるいはさらにエスカレートさせる

これらによって生じる問題が非常に重症であるときが、ゲーム障害となります。

例えば、電車の中でスマホゲームをしている人たちがいます。ですが、ネット依存の患者さんの多くは、「ネットのしすぎ」「SNSのやりすぎ」とは質的に違う問題を抱えています。ゲームのしすぎで学校に行けなくなる、場合によっては退学になる、親に注意されて激昂して殴り掛かる、などの問題が生じているのです。

「依存」というのは、自らは「(ネットを)やりたい」と思っている状態です。周囲の人がそれを問題と捉えるので、患者さん本人は頭では分かっていてもそれを隠そうとしたり、否定しようとしたりします。通常の病気であれば自分から病院を受診しますが、依存の場合、自ら受診するケースは極めて稀です。

ネット依存は未成年者に多い

当院に来る患者さんうち、7割は未成年者です。

どうして未成年が多いのか、明確な答えは出ていません。しかし、ゲームのように動きが激しく、常にアップデートされるようなものを好むのは、若年者でないと難しいのかもしれません。

また、ゲームは若い方々の間で流行しやすいですよね。学校に行くと、話題の中心になるのはゲームで、自分のランクについての話を毎日するわけです。そういう環境や年齢、特性などが、ゲームやネットに走らせる原因になっているのではないかと思います。

昨今、スマホでできるゲームが増えており、その質も上がってきています。我々のようにガラケーからスマホに乗り換えた世代ではなく、はじめからスマホを使っている世代にとって、特にスマホの文化は生活の中にしっかり入り込んでいるように思います。

スマホのように依存性のあるものは一般的に、使用時期が早ければ早いほど、依存のリスクが高くなります。アルコールであれば飲み出す時期が早い方が将来的に依存になりやすいですし、小さいときにご両親が家でパチンコの話ばかりしている家庭で育った場合、その子は将来パチンコ依存になりやすいことが分かっています。

お酒は早いと言ってもせいぜい14、5歳ですが、スマホの場合は0歳からと、年齢の桁が違うのです。これらが将来どう影響するかというデータはまだ明確ではありませんが、極めて特殊な環境になっていると思います。

 

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