歳を重ねる中で、からだには様々な変化が現れてきます。加齢が原因となる眼の病気の一つに、加齢黄斑変性があります。発症に気付きにくい病気ですが、早期発見・早期治療を行うことで進行を遅らせ視力を維持することは可能です。今回は加齢黄斑変性について、原因や症状、治療や日常でできる予防法などをみていきましょう。

目次

「黄斑」ってどこ?

私たちは、眼から入ってきた光が水晶体で屈折されて網膜に当たり、電気信号として脳に伝えられることでものを見ることができます。網膜の中心部には光を感じる視細胞が密集していて、この部分を「黄斑」や「黄斑部」、その中心部を中心窩(ちゅうしんか)といいます。私たちはこの視細胞の多い黄斑にピントを合わせてものを見ています。

加齢黄斑変性は失明の原因として、緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性に続いて4位につけています。

加齢黄斑変性の原因

原因の一つに、その名の通り「加齢」が挙げられます。老化現象によって黄斑も働きが低下し、老廃物などを処理する力が衰えていきます。そうして処理しきれない老廃物が黄斑に沈着していくことで、網膜の細胞などに影響を与えて異常を引き起こすと考えられています。

また喫煙している人はしていない人に比べて、加齢黄斑変性の発症率が高いということも分かっています。また、日光をよく浴びている人や、肥満高血圧だったりする人も発症するリスクが高いとされています。

加齢黄斑変性のタイプは2種類

加齢黄班変性のメカニズム-図解
加齢黄斑変性は「萎縮型(いしゅくがた)」と「滲出型(しんしゅつがた)」の2つに分けられます。ほとんどは萎縮型ですが、萎縮型から滲出型に移行することもあります。

萎縮型

加齢によって網膜の細胞の働きが低下し、眼の中に老廃物が溜まりやすくなります。その結果、眼に栄養が行き届かなくなり、黄班部の中にある網膜色素上皮が少しずつ萎縮していくタイプです。病気の進行はゆっくりなのが特徴です。

滲出型

黄斑部分の血管から異常な血管(脈絡膜新生血管)が発生し黄斑部を障害していくタイプで、病気の進行は早いです。脈絡膜新生血管は破れやすく、血液中の成分が漏れやすいため、急激な視力低下や出血をきたしやすいです。

加齢黄斑変性の症状

加齢黄斑変性の症状として次のようなものが挙げられます。

  • 見えにくい(視力低下)
  • ものが歪んで見える(変視症)
  • 見ているものの中心が見えなかったり暗く見える(中心暗点)
  • 色の区別がわかりにくい(色覚異常)

また、自分が加齢黄斑変性かどうかセルフチェックできるアムスラーチャートという方法があります。下にある図で確認しましょう。この方法で次に挙げる見え方がしたときは、加齢黄斑変性の疑いがあるので早急に眼科を受診しましょう。

  • 黒い点の周りが歪んで見える
  • 黒い点の周りが欠けて見える
アムスラーチャート-図解

加齢黄斑変性の治療法

2種類ある加齢黄斑変性で、治療の対象となるのは滲出型です。滲出型は進行が早いため、早期発見・早期治療が肝心です。萎縮型の場合は現時点で有効な治療法はありませんが、滲出型に進行しないよう経過観察する必要があります。

加齢黄斑変性の原因となる脈絡膜新生血管は、体の中でできるVEGF(血管内皮増殖因子)というたんぱく質により、発生や成長が促されているといわれています。そこでこのVEGFの働きを抑える薬を硝子体内に直接注射する治療法があります。その名を抗血管新生療法または抗VEGF阻害剤硝子体注入といい、加齢黄斑変性の治療法の中では一般的です。

この他、光に反応する光感受性物質を注射して行う光線力学的療法(PDT)、絡膜新生血管が黄斑の中心部(中心窩)にない場合に限って新生血管をレーザーで焼き切るレーザー光凝固術があります。どの手術を選択するのか、医師とよく相談して決めましょう。

ちなみに、治療しても加齢黄斑変性を発症する前の状態まで完全に戻ることはありません。

日常でできる予防法

日常の生活を意識して気をつけることで加齢黄斑変性を予防することにも繋がります。日常で意識したい4つのポイントをご紹介します。

タバコは控えめに

喫煙は加齢黄斑変性の危険因子の一つとされています。喫煙をする人は禁煙する、またはタバコを控えめにしましょう。

太陽光から目を守る

太陽光は網膜に影響を与えるため、加齢黄斑変性になりやすくなります。サングラス帽子などを利用して日光から眼を守るようにしましょう。また、パソコンなど画面を長時間見つめることも良くないので、注意します。

バランスのとれた食事を心がける

緑黄色野菜などは黄斑を守ってくれる色素ルテイン抗酸化ビタミンが多く含まれています。バランスのよい食事を心がけることで、加齢黄斑変性だけでなく、生活習慣病の予防にも繋がります。

サプリメントを取り入れる

臨床試験などで有効性が認められたサプリメントもあります。ビタミンCやビタミンE、亜鉛、βカロチン、ルテインなどは加齢黄斑変性の発症を少なくすることが分かっています。まだ発症していない人も、既に発症してしまった人もサプリメントは有効だと考えられています。

まとめ

一度加齢黄班変性になってしまった場合、完治だけでなく元の状態に近づけることも難しい病気です。他方、日常でできる予防法は加齢黄班変性の予防だけでなく、他の生活習慣病予防にも繋がります。少しずつ取り入れることで加齢による病気・症状を予防すること、定期的な検診により早期発見を心がけることが大切です。